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セルジオ越後の越後録 by セルジオ越後

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Jリーグは“本物”でない人まで出るチャンスがある。レベルを上げるためへの柔軟性が必要
by セルジオ越後

 2009年のJリーグが7日に開幕した。いいスタートを切ったチームがいる一方で、ACLの試合も挟んでいいスタートを切れなかったチームもいるね。日本から4チームがACLに出場するというのは今シーズンが初めて。スケジュール的に厳しくなったクラブが増えた中、昨年王者の鹿島が新潟に負けたり、昨年2位の川崎Fが神戸に負けたりと波乱の多いスタートとなった。
 好スタートを切ったチームを見てみると、外国人選手の補強が上手くいったチームが多かったようだ。レアンドロ(前神戸)を獲得したG大阪、大宮から入ったペドロ・ジュニオールが活躍している新潟、そして開幕戦2ゴールを決めたダヴィ(前札幌)の名古屋もそう。今後も外国人補強が当たったかどうかだけで順位が大きく変わる可能性がある。逆に言うと日本人選手でインパクトを残しているような選手が見当たらないし、全体的に日本人のレベルが落ちている印象を受けた。

 開幕戦ではJ2からJ1に上がってきた広島が横浜FMから4点、山形が磐田から6点を取って勝ったけど、これはJ2とJ1の力の差がそれほど開いていないことを示したと思う。下位と上位との差が詰まって、Jリーグは大きな団子になった感じがするね。ただ、これは下にいたチームのレベルが上がってきたという訳ではない。世界的な経済不況によって、上位にいたチームがお金をかけた補強をすることができず、戦力がカットされてきたから。それによって似たような力のチームが増えてしまったのではないかと思う。

 開幕前にあれだけ話題となっていた10代の選手も目立たなくなった。鹿島の大迫(勇也)君はACLでゴールを決めたけど、リーグ戦では大迫君も浦和の原口(元気)君もスポーツ新聞の記事の割合は一気に減ってしまった。開幕前に期待された変化、新鮮さは今のところないと思う。10代の選手がJリーグで活躍したっていうニュースは小野(伸二)以来見ていないんじゃないかな。何年もの間、10代の選手の成績が上がっていないんだ。同時に外国人頼みとなったJリーグ、そして日本のサッカーのレベルも上がっていないと感じてしまう。

 ボクは日本人選手のレベルを引き上げるために、Jリーグの外国人出場枠を撤廃すべきだと思う。レベルの高い外国人選手と国内選手とが競争することでリーグや国内選手のレベルが上がるということはヨーロッパが証明しているよ。昨年のEURO2008で優勝したスペインはイタリア、オランダ、ポルトガルなどEU(欧州連合)に加盟している国の選手に関しては無制限でリーグ戦に出場することができる。加えて、ブラジルやアルゼンチンなどの南米やアフリカなどそれ以外の国籍の選手も3人までが同時に試合に出ることができる。バルセロナもR・マドリーもレギュラーの半数以上は外国籍の選手だ。そういう厳しい環境でレギュラー争いを日常からしているから、ヨーロッパタイトルを取ることができるまでスペイン選手のレベルは引き上げられたのだとボクは思うよ。

 それに対して日本は“本物”じゃない人までJリーグの試合に出場するチャンスができてしまっている。J2のクラブが昨年から3チーム増えて今やJリーグは36ものクラブがある。これだけチームがあれば、実力がなくても試合に出られてしまう。でも外国人枠を撤廃すれば、日本代表でも試合に出られないような選手が増えてくるんじゃないかな。チームによっては8人、9人もの外国人を抱えるチームも出て来るだろう。お金がないチームは日本人選手だけでもいいと思うけど、ボクは試合に出る11人がもっと争うところがあってもいいと思う。
 何年もいい選手が出てきていない今、強い国のマネをするなどの柔軟性がないとレベルアップしていくことはできないよ。日本人が欧州トップリーグに移籍してもあまり試合に出られていないのだから、それなら国内リーグのレベルを上げて、そこで力をつければいい。ワールドカップで世界4位になるのなら、世界と近づくためのことをやらないと何も変わらないよ。

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