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Jを目指せ! by 木次成夫

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262回 JFL前期17節 長野パルセイロ対MIOびわこ草津
by 木次成夫

JFLは前期17節(6月25日、26日)を終えました。上位は相変わらず混戦です。

1位:琉球(勝ち点21)
2位:ホンダロック(19)
3位:SAGAWA SHIGA(19)
4位:カマタマーレ讃岐(19)=Jリーグ準加盟
5位:V・ファーレン長崎(18)=Jリーグ準加盟
6位:松本山雅(18)=Jリーグ準加盟
7位:Honda(18)
8位:長野パルセイロ(17)
9位:ツエーゲン金沢(16)
10位:町田ゼルビア(16)=Jリーグ準加盟
11位:MIOびわこ草津(13)
12位:佐川印刷(12)
13位:栃木ウーヴァ(11)
14位:横河武蔵野(10)
15位:ブラウブリッツ秋田(9)
16位:アルテ高崎(9)
17位:ジェフリザーブズ(1)
18位:ソニー仙台(0)

印象的なのは、『フルタイム労働の企業チーム』ホンダロックが大健闘していること。元Jリーガーなど相対的に優れた選手を揃えるか、それともチーム熟成を重視するか? 『JFLレベルで勝てる』チーム作りという観点で興味深い途中経過になりました。

●6月26日 JFL前期17節
長野パルセイロ 4-1 MIOびわこ草津 

[得点経過]
18分 1-0(長野:FW藤田信、27歳=加入4年目、前フェルヴォローザ石川・白山←ジャパンサッカーカレッジ←西京高)
31分 1-1(MIO:MF半田武嗣、26歳=今季加入、前・町田ゼルビア←国士館大)
46分 2-1(長野:FW藤田信)
79分 3-1(長野:FW冨岡大吾、25歳=今季加入、前・横河武蔵野←日体大)
90+4分 4-1(長野:MF向慎一、26歳=今季加入、前・東京V←栃木SC←法政大学)

[試合総括]
前期16節終了時点でパルセイロは10位で、MIOは11位。序盤はMIOペースでした。ボランチ泰賢二(29歳=今季加入、前。FC琉球←水戸←名古屋)の的確な“ボールさばき”をベースに、持ち前の攻撃的サッカーを展開。対するパルセイロは、ゲームメーカーの土橋宏由樹(33歳=加入4年目、前・松本山雅←甲府)が怪我で欠場したとはいえ、まるで別のチームかと思うほど、リズムを作れず。両チームの出来が対象的ゆえ、改めて、経験豊富なベテランの重要性を実感したほどです。

しかし、後半は流れが一転。46分にセットプレーがらみでパルセイロが得点を決めた後は、ほぼパルセイロのペース。シュート本数、パルセイロ=20本(前半7本、後半13本)、MIO=7本(前半4本、後半3本)。パルセイロが宇野沢祐次(28歳、元・柏)、向慎一らの「個の力」で上回った面もありますが、MIOも脆すぎました。

パルセイロの選手が『午前中だけ仕事』なのに対して、MIO選手の多くは『午前から夕方まで仕事』。コンディションに差が出ても致し方ない面はありますが……。

≪前MIO浦島貴大の面目躍如≫
パルセイロの勝利に貢献した1人が、今季MIOから移籍したMF浦島貴大(23歳)。MIO所属の4シーズンは主力だったものの、パルセイロ移籍後は、この試合が初のベンチ入り。後半開始時に交代出場し、持ち前のハードマークとハードワーク、そして攻撃センスも披露しました。古巣のMIOのことは「すごく意識しました」(浦島)とか――。

[人気低迷するMIOの現状]
今季でJFL昇格4シーズン目。08年=14位、09年=8位、10年=12位。地域リーグ所属時代同様に平日の練習は夜間で、ほとんどの選手はプレー報酬0円。チーム状況を考慮すると、大健闘と言えます。また、就任3年目の和田治雄監督が志向する「見ている人を楽しませる攻撃的サッカー」は魅力的です。“やりくり上手”という観点ではJFL随一だと思います。ただ、残念ながら、観客数は低迷気味。例えば、

前期10節(5月8日)、対カマタマーレ讃岐(2-1で勝利)=1219人
前期12節(5月22日)、対ジェフリザーブズ(1-0で勝利)=233人
前期16節(6月19日)、対横河武蔵野(4-1で勝利)=263人

MIOは近畿地方の『Jリーグを目指すクラブ』では最高位に位置しています。近畿大、阪南大、関西大、びわこ成蹊スポーツ大など近隣の大卒選手が多いのが特徴です。ただ、プレー報酬あるいは仕事の斡旋などの面で、「MIOよりも条件が良いクラブもあるので、選手獲得は決して簡単では、ありません」(MIO関係者)。

今回の長野は言うまでもなく、栃木、高崎など関東地方へ遠征はクラブ所有のバスでの往復です。アルテ高崎などにも言えることですが、アマチュア選手の真面目さには、頭が下がります。言い方を変えると、それこそ「サッカーのチカラ」と思うほどです。なぜ、そんな若者の頑張りを地域レベルで評価してあげられないのか? 残念で、なりません。

≪元U-18日本代表、園田清次のリスタート≫
前回に触れた金沢亮(ジェフリザーブズ)同様、2006年にU-18日本代表に選出された選手です。ポジションは左SB。熊本県のルーテル学院高校卒5年目。東京Vを皮切りに、V・ファーレン長崎(期限付き移籍)→徳島ヴォルティス・セカンド→ツエーゲン金沢→MIO。

昨季前にツエーゲン退団後は、「一度は引退しました。でも、南アフリカW杯を見たのが刺激になって」(園田)、一念発起。練習生を経て、今季、MIOに加入。開幕前に負傷したものの、復調中です。山雅戦では後半25分に途中出場して左MFとしてプレー。積極的なドリブル突破で何回かチャンスを演出しました。情熱的すぎる(要は、キレやすい)性格が問題と言われてきましたが、潜在能力の高さは、この試合を見ても、明らかでした。

[信州ダービーに向けて]
次節(後期1節、7月3日)、パルセイロはホームで松本山雅との『信州ダービー』です。前期8節、山雅ホームの『信州ダービー』は観衆数11663人(山雅が2-1で勝利)。しかし、パルセイロのホーム、南長野運動公園球技場の収容人数は約4000人。
前売りチケットは、大方の予想通り早々に完売。試合は地元民放TV局が生中継し、解説は川渕三郎氏(日本サッカー協会名誉会長)。さらには、長野市内と松本市内(アルウィン)でPV(パブリックビューイング)が開催されます。どうせなら、南長野運動公園内でPVをした方が臨場感も高まるのに、とは思いますが……。

JFL随一の人気を誇る山雅が刺激になっているのでしょうが、パルセイロの人気も高まってきました。例えば、前期15節(6月12日、対横河武蔵野、0-2で敗北)の観客数は2167人。この日のMIO戦は1949人。『スタメシ』も数店舗が出店するなど、地域リーグ時代とは隔世の感があります。

[写真]MIOのMF園田清次(右)とパルセイロ右SB野澤健一の攻防

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