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Jを目指せ! by 木次成夫

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275回 地域決勝展望その1 デッツォーラ島根
by 木次成夫

現在、Jリーグ・クラブは全47都道府県のうち、28都道府県にあります。Jクラブは無いもののJFLクラブを有するのは、8府県。そして、他11県(青森、岩手、福島、福井、三重、奈良、和歌山、高知、島根、山口、鹿児島)すべてに、地域リーグ・クラブがあります。

J1(18チーム)+J2(22チームまで拡大予定)+JFL(18チーム)=58。つまり、「全都道府県にJクラブ」は不可能ですが、「全都道府県に“JFL以上”」は可能です。また、JFL昇格は1シーズン最多3チームですから、最短で4年、2015年には『他11県』すべてが、JFLを経験することができます。

ちなみに、『他11県』それぞれのトップ・クラブ(今季リーグ最高位)は以下の通り――。

青森:ヴァンラーレ八戸(東北2部1位)
岩手:グルージャ盛岡(東北1部2位)
福島:福島ユナイテッド(東北1部1位)
福井:サウルコス福井(北信越1部4位)
三重:鈴鹿ランポーレ(東海1部2位)
奈良:奈良クラブ(関西1部1位)
和歌山:アルテリーヴォ和歌山(関西2部2位)
島根:デッツォーラ島根(中国1位)
山口:レノファ山口(中国2位)
高知:黒潮FC(四国2位)
鹿児島:FC KAGOSHIMA(九州2位)

いうまでもなく、目先の問題として気になるのは、来る全国地域リーグ決勝大会(一次ラウンド=11月18日~20日)。『地味な県の地味なチーム』ゆえに注目しているのが、デッツォーラ島根(以下、デッツォと略)です。今季は中国リーグ2連覇を目指したレノファ山口に勝ち点差7(レノファには2戦2勝)をつけて、初優勝を達成しました。

●10月10日 天皇杯2回戦
ジェフ千葉 1-0 デッツォーラ島根

[得点経過]
67分 1-0(得点:藤本修司)
*青木孝太がドリブル・シュート→GKセーブ→こぼれ球を藤本がシュート→GKセーブ→こぼれ球を再び藤本がシュート

≪デッツォ・スタメン≫
GK林一章(35歳、前CENTRO DE FUTEBOL EDU)
DF下村尚文(20歳=加入2年目、前・三菱水島FC)
DF渥美高二(33歳、前・静岡FC)
DF望月陽介(25歳=今季加入、前・鈴鹿ランポーレ)
DF佐藤啓太(27歳=今季加入、前・サウルコス福井)
MF幸野屋敏行(23歳=今季加入、前V・ファーレン長崎)
MF田栗史康(28歳、前・吉備国際工華)
MF田平謙(22歳=加入2年目、前・三菱水島FC、島根県出身)
FW隅田航(23歳=今季加入、前V・ファーレン長崎←京都←京都ユース)
FW空山浩輝(24歳=加入2年目、前・鈴鹿ランポーレ←日本文理大学)
FW平田翔太(24歳=加入2年目、前V・ファーレン長崎←三菱重工長崎←日本文理大学)

天皇杯出場は2年連続7回目。1回戦は『愛媛FCしらなみ』(四国リーグ1位)に延長の末、5-2(得点:平田X3、空山X2)で勝利しました。


[試合総括]
ジェフがサブ・メインだったとはいえ、デッツォは大健闘しました。守備重視の『ベタ引き』策ではなく、互角の戦いを挑んだ末の惜敗。ベテランCB渥美を中心にした守備陣は安
定感があり、中盤は勤勉、そして攻撃陣は果敢かつスピーディ。チーム完成度の高さは、寄せ集めのアマチュア・チームとは思えないほどでした。

≪シュート本数≫
ジェフ12本(前半4本、後半8本)
デッツォ5本(前半3本=平田X2+隅田、後半2本=平田+隅田)

最も印象的だったのは、小柄なFWトリオです。今季リーグではチームの60得点のうち、この3人で43得点(平田=20得点、空山=13得点、隅田=10得点)を記録しています。リーグ得点王の平田(171)は主に左サイドから積極的にドリブルで仕掛け、隅田(写真右側、170)は右サイドを基点に幅広く前線をカバー。そして、リーグ1位の12アシストを記録した空山(167)はスペースを作ることも、使うことも巧み――。

ちなみに隅田、08年はVファーレンのJFL昇格へ貢献し、翌09年はJFL28試合に出場した実績があります。しかし、その後、自主的に退団。『期待の成長株』から一転、昨季はサッカーの第一線から離れていました。

加入2年目の空山&平山コンビを“より活かす”という観点でも、隅田の加入効果は絶大です。左右のバランスが好転して、相手のマークが分散。攻撃のバリエーションが増加。前線で“溜め”が作れるため、チーム全体の安定感、流動性も向上しました。

[地域決勝に向けて]
07年にファジアーノ岡山に次ぐリーグ2位で地域決勝初出場を果たした際は、一次ラウンド3戦全敗(最下位)。守備の要、渥美が負傷欠場したこともあり、MIOびわこ草津(1位)に1-9、松本山雅(2位)に0-4、徳島ヴォルティス・セカンド(3位)に0-6という散々な結果でした。

残念ながら、ジェフ戦で空山が足を骨折したため、今回もベストの布陣で臨めません。とはいえ、平田と隅田のコンビだけでも十分に驚異的。その上、全社(全国社会人選手権)では、光明も――。

1回戦(15日):ノルブリッツ北海道に2-2(PK4-2)で勝利(得点:隅田、清水俊典=25歳=前・三菱水島FC)

2回戦(16日):藤枝MYFCに1-2で敗退(得点:清水)

「(空山の代役としては)清水が戻ってきて、得点も決めてくれました。(地域決勝では)アッと言わせるようなサッカーをしたいと思います」(クラブ代表の若三康弘氏)。

ちなみに、『戻って来た』とは、負傷から回復したのではなく、「選手登録はしていたのですが、チームを離れていたんです」(若三氏)。

苦肉の策と、遣り繰り上手は紙一重ということでしょうか。若三氏がゼロからチームを作り、2001年に島根県浜田地区リーグ2部からスタートして11年目。地道なボトムアップの『夢の途中』という点もデッツォの魅力です。

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