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Jを目指せ! by 木次成夫

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277回 地域決勝展望その3 福島ユナイテッド
by 木次成夫

10月30日、福島市で開催された『2011復興支援福島県チャレンジリーグ交流戦』、福島ユナイテッド(以下、福島Uと略)対シャイネン福島。東北リーグ1部初優勝を達成した福島Uにとっては、今季初の福島市内での公式戦でした。大震災の影響などでホーム開催のリーグ戦6試合のうち5試合は県外、他1試合は県内ながらも喜多方市で開催。そして、天皇杯予選は郡山市開催だったからです。

会場は昨季7節(6月6日)のグルージャ盛岡戦でクラブ史上最多3171人が集った『あづま陸上競技場』。その試合では多数の飲食業者が出店していたのですが、この日は出店ナシ。観衆は“せいぜい”300~400人。地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)に向けたセレモニーもナシ。いわば、『聖地への凱旋』ゆえ、地元の盛り上がりに期待していたのですが……。

●10月30日 
福島ユナイテッド 10-0 シャイネン福島 

[得点]
OG(31分)、伊藤卓也(36分、50分、82分)、久野純弥(38分、50分)、時崎塁(72分、75分、78分)、小林大騎(90分)

[試合総括]
シャイネン福島は今季東北2部昇格を果たしたものの、震災の影響などでリーグ戦出場を辞退したチームです。結果的に福島Uは大勝したものの、前半は3得点(うち1得点はオウンゴール)。シャイネンの組織的に安定した守備に対して、攻めあぐむシーンも散見しました。後半は『個の強さ』を見せつけたとはいえ、『サッカーの質』はイマイチ。大差になると展開が大雑把に“なりがち”とはいえ、パスワークなどチーム完成度でも格の違いを見せてほしかったというのが、率直な感想です。


≪福島U・スタメン≫
GK:時崎悠(32歳、前・水戸)
右SB:柳原裕(27歳、前・ガンジュ岩手)
CB:青柳雅信(26歳、前ガイナーレ鳥取)
CB:吉渓亘(25歳、前・流通経済大学)
左SB:岡田亮太(23歳=今季加入、前・帝京大学)
右MF:伊藤卓也(24歳、前・専修大学)
ボランチ:清水純(26歳、前バンディオンセ加古川)
ボランチ:石堂和人(29歳=今季加入、前・町田ゼルビア)
左MF:金功青(25歳、前・流通経済大学)
FW:小林康剛(31歳、前ファジアーノ岡山)
FW:久野純弥(23歳、前・甲府)

福島Uは去る全社(全国社会人選手権)1回戦でFC刈谷に1-4で敗れましたが、GKで起用されたのは、本来はCBであり、コーチ兼任の時崎悠。この試合も同様でした。幸いにも、枠内へのシュートは0本ながら、ゴール方向に下がる際、目測を誤ってゴール・ポストにぶつかること1回。急造GKの限界を露呈してしまいました。

本職のGKは内藤友康(25歳、前・山形)も根本翔(23歳、前ソニー仙台)も調整中ということでしょうが、果たして、地域決勝一次ラウンド(11月18日~20日)に間に合うのか? 少なくとも、ピッチサイドでのトレーニングを見て、選手や関係者の会話を聞く限り、悲壮な雰囲気は感じられませんでした。ただ、クラブ公式HPなどで2人の状況が一切触れられていないことも気になり、後日(2日)、クラブ側に最新状況を問い合わせたところ、「間に合うとも、間に合わないとも申し上げられません」とのこと。

[地域決勝展望]
一次ラウンドの対戦相手は、試合順にSC相模原(JFA優遇措置)、ノルブリッツ北海道(北海道1位)、そして奈良クラブ(関西1部1位)。昨季の地域決勝を経験した選手が多いことと、大震災からの復興というモチベーションの高さは、福島Uの大きな武器です。その一方で懸念材料は相対的に選手層が薄いこと。例えば、守備の中心=青柳(加入4年目)、エース的存在=久野(加入2年目)、スーパーサブ=時崎塁(加入5年目=29歳、前ラスティング郡山)など、主力の1人が欠けるだけで戦力ダウン必至です。

『昨季+アルファ』という観点では、石堂のゲームメイク・センスがカギを握っていると思います。シャイネン戦は好パス“散発”程度ながら、左足から繰り出されるミドル(ロング)レンジのパスは相変わらず精度抜群。石堂ならではの『職人芸』。もちろん、理想は“散発”ではなく、ゼルビア時代のような“連発”ですが……。

初戦 の相手は『全社優勝』の相模原。負傷や警告など考慮すると、初戦で最強(と思われる)チームと対戦するのは幸いです。ちなみに、石堂が最も得意にしているのは、中盤後方やや左から右サイド前方を狙ったパス。そして、相模原の左SBはゼルビアでチームメイトだった中川勇人。一次ラウンド随一のマッチアップと評しても過言ではないでしょう。

[Jリーグへの道のり]
もし、JFL昇格を果たせば、Jリーグ準加盟申請が重要なテーマになります。しかし、『あづま』はメインスタンド以外が芝生席で、夜間照明設備ナシ。かといって、県内にJリーグ基準を満たした競技場は、ありません。地域復興が最優先の時期に大規模改修が容易とも思えません。

とすれば、まずはJFLに数年間所属して、地道に人気を高めていくことが現実的。そして、サッカーに興味がない多くの人たちが、近い将来「復興のシンボルになるかも」と考えるようになれば理想的。JFLも全国規模のリーグですから、少なくとも東北リーグよりは知名度アップに、つながるはずです。その一方で、来る地域決勝で昇格を逃せば……。

≪JFL後期13節終了時点の下位5チーム≫
14位:MIOびわこ草津(勝ち点25)
15位:横河武蔵野(23)
16位:アルテ高崎(22)
17位:ジェフリザーブズ(17)
18位:ソニー仙台(10)

福島Uにとって最悪のシナリオは、ソニー仙台と東北1部の覇権を争う事態になること。
社員メインのソニーに勝てるチームを作るのは、目先の地域決勝でJFL昇格を達成するよりも難しいかもしれないのですから。

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