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スペインで戦うフットサル選手・荒牧太郎の挑戦 by 荒牧太郎

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年に2回ある対戦の対策の立て方
by 荒牧太郎

 2013年に入って2012-13シーズンも後半戦に突入しました。すでに2試合を消化し、共に上位チームとの対戦で、接戦の末に負けてしまったわけですが、個人的に今までの敗戦と違ってずいぶん手応えを感じた敗戦になっています。

 その理由はいくつかあるのですが、そのうちもっとも大きなものの1つが『2回目の対戦である』ということです。当たり前の話ですが、スペインに来る前にスペインの試合を見ていたのはほぼすべてが1部リーグのものでした。つまり、2部のチームの情報はほとんどなく、名前は知っているチームはあってもどんなフットサルをするのか、どんな選手がいるのかなど全く情報がない中で試合をしなければならなかったわけです。

 僕は試合前の準備がものすごく大事だと思っていますし、試合の勝敗は細かなディテールで決まると思っています。なので、相手チームの情報は大切な準備の1つですし、試合の勝敗に大きく関わってくるのは間違いありません。

 例えば、相手の守備の仕方はどうなのか? 前から積極的にプレッシャーを掛けてくるのか? プレッシャーを掛けてくる場合、ゾーンディフェンス気味なのか、マンツーマン気味なのか、中心選手の特徴はどうなのか。フィジカルが強いのか、テクニックがあるのか? スピードがあるのか、利き足はどちらか、などなど。

 またフットサルの場合セットプレーがサッカー以上に得点チャンスとなるので、そのパターンや特徴も頭に入れておく必要があります。更にフットサル特有のパワープレーの守り方や攻め方。フットサルの魅力の1つであるパワープレーはGKをFPに変えてリスクを犯して攻撃するわけです。仕掛ける側はもちろん数的有利の状況で攻撃できますが、ゴールをがら空きにするわけですから守っている側にも、もちろんチャンスです。その対策は非常に大切です。

 こういった情報を試合前にビデオで分析して頭に入れてから試合に臨むわけですが、やはり映像で見るのと試合の中で、肌で感じる感覚というのは違いがあるものです。もちろん映像での情報が活きるのは間違いありませんが、実際に自分で感じた感覚に勝るものはありません。

 そういう意味で、2013年に入って後半戦を戦ってまだ2試合ですが、前半戦よりも後半戦は結果を出さなければいけないと強く感じています。

 スペインでプレーを始めて2シーズン目ですが、知らない選手もまだまだ多いですし、審判の笛やホームとアウェーの違いなども日本に比べると、かなりあります。「慣れ」というのは人間の持つ特殊な能力の1つだと思うんですが、より慣れた状況では自分の力が発揮しやすくなりますよね? 余計な緊張を生むこともないだろうし、相手の対応もうまく出来ると思います。そんな中でいかに駆け引きするのか、相手をいかに上回るのかが勝負になると思っています。

 スペインでは夏と冬に移籍マーケットが開くので、リーグ前半戦の結果を受けて、監督が代わるだけでなく、選手を補強したりもします。そういう場合は当然リスクも生じますよね。そのリーグで結果を残している選手であれば、最初からその「慣れ」があるわけですし、チーム内でのコンビネーションのみ微調整すれば良いと思いますが、監督が代わるとなると監督の考えをチームに浸透させなければなりませんし、海外からの移籍となると「慣れ」というものが全くないので、もしかするとまったく力を発揮できない可能性もあるわけです。

 僕は昨シーズン冬の移籍でカルタヘナに来ました。監督も代わりましたし、僕も含め新しい選手が5人もいました。チーム内の競争は激しかったですし、選手の質や練習の質も高かったです。降格争いをしていたのですが、この戦力であれば残留できると思っていたのですが、接戦をなかなかものに出来ない試合が多く、それは先程書いたようにディテールが詰められなかったのかなと思います。

 個人としてもスペインのフットサルに対する経験や慣れのなさを感じましたし、時間がかかるというのも身をもって感じました。それでも活躍してしまうのが、スペインで活躍するスター選手だと思うのですが…。

 このようにシーズンの前半戦と後半戦では対策の立て方選手の戦い方に「慣れ」が加わる為、より洗練された戦い、ディテールで勝敗が決まるような戦いが増えるのは間違いないです。更にプレーオフまで進めば、相手の情報はもちろん自分達の情報も筒抜けです。そういう意味で本当の実力はプレーオフで勝ち上がるチームに備わっているのが分かると思います。よりそのチームの底力やどこまでディテールにこだわって力を積み重ねて来られたのかなど、そういうものが問われる戦いになるわけですね。

 日本のFリーグでも今シーズンからプレーオフが始まります。プレーオフ争いは最終節までもつれていますし、プレーオフに入ってからもしびれるような戦いの連続になると思います。僕個人としてはスペインで戦っていることで、「慣れ」の部分をどこまで伸ばして行けるのかが大事だと思っています。「慣れ」とは選手としての引き出し、選択肢とも言い換えることが出来ると思っています。例えば外国人に対する免疫や身体能力が違う相手との戦いや様々な戦術に対する力です。こちらスペインではまだリーグの後半戦が始まったばかり! 毎試合、非常に重要な試合になるのは間違いありません。少しでも自分の力を発揮してチームの勝利に貢献できるように頑張ります!

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