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スペインで戦うフットサル選手・荒牧太郎の挑戦 by 荒牧太郎

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スペインと日本のチームに対する考え方
by 荒牧太郎

 日本では全日本フットサル選手権が終わり、2012-13シーズンが終わりましたね。今回の全日本選手権も大変盛り上がったようで、全日本に関するニュースをたくさん読みました。

 一番話題になったのはFリーグ絶対王者の名古屋オーシャンズと地域リーグ王者のフウガすみだとの戦いではないでしょうか。4年ぶりに決勝戦で顔を合わせた両チーム。見ることが出来なかったので、内容に関しては全く分かりませんが、とても素晴らしい試合内容だったと多くの人が書いているのを見ました。

 4年前といえば、僕もフウガの選手としてピッチに立ち名古屋オーシャンズと戦う機会がありました。当時から選手も環境も大きく変わっていると思いますが、僕が所属する前から、そして今でも変わらないのは、中心となってチームを支える選手やスタッフと異常なまでの団結力ではないでしょうか。当時も、そしておそらく今でも、選手一人ひとりがどんな状況でもチームの為に全力でプレーする姿勢は、全く変わっていないと思います。そして、その姿勢こそがフウガの最大の強さであり魅力であると思います。

 ここスペインでは、正直言うとそこまでの団結を感じたことはありません。そもそもチームに対する考え方や自分の在り方が日本とスペインでは大きく違うと思います。

 漫画スラムダンクの安西先生の有名な名言「お前の為にチームがあるんじゃない。チームの為にお前がいるんだ」は、もしかするとスペインでは通用しないかもしれません。スペインでは極端に言えば「今年1年は契約があるから全力で自分の最大限のプレーをするよ」という感じです。クラブと契約した選手が集まり、優勝や勝利という目的の為にそれぞれが持った力を発揮し合う。より良い契約を獲得したり、自分の満足のいく居心地の良いクラブを求めることが優先されているのかもしれません。当然プロですから、自分を少しでも評価してくれる、1円でも高く給料をくれるチームでプレーする。そういう傾向がとても強いです。

 そういう考え方だからこそ、選手一人ひとりのプレーに対する決断力や責任が違うのかもしれません。責任を持って自分の仕事を全うする。そういう感覚なのかもしれません。もちろん中にはずっと1つのクラブに留まり、結果を出して、そのクラブの象徴的な存在になる選手もいます。ただ、それはすごく限られた人のみで、多くの選手は移籍を頻繁に繰り返しますし、それでどんどん自分の価値を高めていくという考え方だと思います。

 だからこそ、スペイン人がもしフウガを見たら、あの団結力や忠誠心に驚くと思います。それはもちろんポジティブな印象として映ると思います。フウガがすごいのは僕が在籍していた当時もそうでしたが、ピッチに立っている選手だけが一生懸命戦っている、ピッチに立っている選手だけが団結しているわけではないという点です。出場時間が短い選手も、メンバー外の選手も、コーチングスタッフや運営スタッフ含め、全員がピッチで戦う選手と同じ姿勢であるということです。これは日本でも稀なことだと思います。スペインだったら監督と合わない、出場時間が短いなら移籍するよというのがノーマルの考えです。

 フットサルだけではなくサッカーでもそうですが、日本のこの様なチームに対する考え方、団結力や忠誠心は間違いなく日本独自の武器だと思います。それだけで試合に勝つことは出来ませんが、それがなければ戦うことすら出来ないと思います。日本が外国のチームと戦う時に何が一番の強みで、何が観る人を釘付けにするのか、今回の全日本選手権で多くの人が気付いたのではないでしょうか。

 僕も、あらためてそのことに気付かされた一人です。プレーしている国は日本ではありませんが、僕自身もプレーする時に「チームの勝利の為に何が出来るのか」を常に考えながらプレーしようと思います。

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