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「ボールは丸い」~慶大ソッカー部マネージャー戦記 by 呉田幸子

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マネージャーに荷物を持たすな
by 呉田幸子

 リーグ戦は第13節を終えましたが、私達慶應義塾大学は後半戦から未だ勝ち点を奪えない状況にあります。応援して下さる方に申し訳ない気持ちで、苦言を呈されることも増え、なかなかペンも進まないな…と辛い日々ですが、どんなときも何事にも前向きにやっていく他ありません。

 さて、前回のコラムで、大学サッカーの行方について偉そうに書いてしまいましたが、「人間育成の場」と言われる大学体育会、大学サッカーの現場で具体的にどんなことが行われているか書きたいと思います。

「マネージャーに荷物を持たすな」
 この言葉を、部活の中で何度も聞いたことがあります。遠征や行事などでマネージャーが重い荷物を運んでいると、選手からその言葉が聞こえてきます。最初は驚いたというか、普通は違和感があるフレーズだと思います。

 この言葉には、自立しろ、裏方に感謝しろ、常に気を配れなどいろんな意味が含まれています。
 自分でできることは自分でやるべきで、(グラウンド外で運営事務の仕事を担っているため、)マネージャーに荷物を持たせるのは良くない。という考えです。

 人間育成のための取り組みが部活動の各所に隠されていると思います。
 私は、自分の立場での責務を全うするのはもちろん大事ですが、その他に、ピッチの外でどのように部が成り立っているか、OBやご父兄のサポートがいかに大切かというような、ピッチからは見えない部分を選手に伝えることが自分の使命だと思ってやってきました。

 OBからの差し入れを頂いたときも、この方はどういうOBで今日はどういう経緯で来てくださって差し入れを下さったかを詳しく説明したり、年に何度かある懇親会では選手を連れて挨拶まわりをするようにしています。

 試合の日には、出場停止や怪我でベンチ外になった選手に、受付を担当させています。どんな人がどんな風に応援に来て下さるのか、ピッチの中にいてはわからない側面を見て、コミュニケーションをとり、直接感謝を述べることは重要なことと考えます。

 部員ブログを始めたのも、選手の生の声を届けるだけでなく、そういった意図があります。テーマは何でもよいので、自分が考えていることを文字にして不特定多数に対して発信するという機会はよい勉強となります。他大学でも積極的に部員に文章を書かせているチームがあります。

 もう一点紹介すると、部費の請求書も保護者に宛てるのではなく部員にしっかり手渡ししています。何年か前からそうしたのだそうですが、自分がいくら使って部活動をしているのかを確認させ、金銭的な意識を植え付け感謝を再確認させるシステムだそうです。

「1人の人間として成長すること。」が大学4年間のテーマであるというのはいろんなところで聞きます。大学サッカーはまさにそのテーマを実行しようとしているのです。

 部員一人ひとりがしっかりと自立した集団になることが目標の1つであり、それを指導するといったら偉そうですが、マネージャーとしてそれをサポートできる存在になりたいと思います。

 以上のような取り組みも、勝利という結果が見えないと、実を結ばないように見えます。自分達のやってきたことを信じて、次こそは目に見える結果を掴みたいと思います。

 ちなみに次の相手は明治大学。部員1人ひとりが自覚を持って行動しているリスペクトすべき相手だと思っています。
応援宜しくお願いします!

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