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W杯予選激闘通信「戦士たちの思い」

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「本当、いい人ですよねぇ」
 5月25日埼玉での練習で、スコットランドから合流したばかりの中村俊輔とともに別メニューを行ったのち、内田篤人はそう言って、嬉しそうに笑った。実は、俊輔合流前に、「試合に出たら同じ右サイドだね」と聞いたところ、「うわぁ~緊張するから、そういうこと言わないで」と恐縮していた内田だったのだ。
「俊輔さんね、僕のこと知っていてくれたんです。“ウッチー”って呼んでもらえて嬉しかった。トラップをやっているとき、目の前に邪魔なボールがあったんだけど、普通なら、“邪魔だ”って蹴りだすでしょ? でも俊輔さんは、そのボールを使い、トラップをした。その想像力というかアイディアはすごいなぁ」と目を細める。
 4月9日ACLの北京国安戦で、右第3腰つい横突起を骨折。全治1カ月と言われ、5月中旬には試合復帰も果たしたが、「骨折した箇所は問題はないんだけど、周囲の筋肉が“まだ待ってぇ~”って感じで、痛み出した」と、休養が必要という状態。
 5月21日にベトナムでのACLへ出場できたが、次の試合復帰は不透明で、代表辞退も考えていた。しかし指揮官から「“ワールドカップ予選に間に合えばいい”と言ってもらえた」と代表へ帯同しながら、リハビリを行っていた。
 5月29日からはチーム練習にも合流している。
「代表はリハビリではなく、調子のいい選手がいるところだと思っていた。岡田監督がいさせてくれた。足を引っ張りたくない」と試合復帰も見据え、オマーンへと旅立った。
 「僕は人見知り人」と話す内田。代表ではユース代表でのチームメイトだった安田理大とは気心が知れていたが、その安田が離脱し、オフタイムをどう過ごしているかと、鹿島担当の記者が心配することもあった。
「昨日ね、井川(祐輔)さんと(鈴木)啓太さんと3人でモンスターハンターを始めたんですよ!」と声を弾ませた。
 PSPの人気ゲームソフトである『モンスターハンター』は、プレーヤー同士が協力し合って、モンスターを倒していくゲーム。内田は最近、このゲームにはまっていて、「最近嬉しかったのは、モンスターハンターで、クシャルダオラを倒したこと。そいつは、メチャ、強いけん。風使いの龍なんだけどね、倒れて起き上がるときにバンってなっちゃうの。爆弾とか使って倒したの」と話すほどだ。そのゲームが先輩とのコミュニケーションに役立ったのだから、内田も嬉しかったに違いない。

 6月2日のオマーン戦で長友佑都が負傷し、6月7日の試合出場が微妙だとも言われている。そうなると駒野友一を左サイドへ起用し、内田が右サイドで先発することも考えられる。俊輔との競演が実現することになる。緊張すると話していたが、実際はそういうことはないだろう。以前、自身の武器について聞いたとき、「結構、いつも気持ちに余裕がある。初めて代表でデビューしたときも緊張感よりも“どうすれば勝てるか”ってことしか考えていなかった」と話していた。
 意外と強心臓の持ち主だ。
 多くの新人選手は、1年目は、ノビノビとプレーできる。しかし相手が研究を重ねた2年目に「今までのようにプレーできない」と壁にぶつかる。内田にもそういう時期があった。しかし、「1対1で抜けなくなったから、周りの選手を使おうって思った」とプレーを切り替え、そのシーズン、リーグ優勝に貢献している。
 酷暑の中での1戦となる6月7日のオマーン戦。アウエーらしい厳しい環境が日本代表を待ち受けるだろう。
 そんなゲームでの出場が叶ったとき、内田はどんなプレーを披露できるのだろうか? 未知数が大きいだけに、楽しみだ。そして、その経験が、彼をまた成長させるに違いない。

※本企画は不定期更新予定です(W杯3次予選期間中続きます)。感想をこちらまでお寄せください。

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