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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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スター選手のプレーを習得する指導法「クーバー・コーチング」
by 長谷川望

 世界には様々な育成の指導法があります。ウィール・クーバー氏は世界的に評価されている指導法を開発した人物です。オランダ人のクーバー氏は現役プレーヤーを引退した後、指導者としてその才能を開花させました。1970年代当時、フェイエノールト(オランダ)の指揮をしていたクーバー氏は、技術者が少なく守備的なサッカーを見ていて面白みを感じなくなっていました。そこで、「どうしたら人々がサッカーに魅力を感じるようになるか」を考えます。そこで、その頃スーパープレーで脚光を浴びていた選手たち、ヨハン・クライフ氏らスター選手の技術的なプレーに注目しました。

「こんなプレーが出来たらきっと楽しんだろうなぁ」と、プロ選手をみて思う時があります。まさにそんな気持ちを指導法に結びつけたのがクーバー氏でした。一般の人もクライフ選手などのようなスーパープレーが出来るようになれば、サッカーをもっと楽しんでもらえると考えた結果、スター選手のテクニックを細分化して、一般の人でも習得出来るようにしたのです。これがクーバー氏がつくった「クーバー・コーチング」と呼ばれている指導法の原点です。

「クーバー・コーチング」はイングランド・プレミアリーグと契約し、プレミアリーグにある育成アカデミーのコーチ陣にも指導するなど、今や日本を含めた世界30ヵ国以上で活動しており、数々のクラブが賛同して取り入れている指導法です。

 日本でも「クーバー・コーチング・サッカースクール」で、その哲学が生きています。神奈川県横浜市にあるジョイナス校の中西健コーチにお話を伺いました。

「最近であればC・ロナウドがよくやるフェイントを細分化して、ステップごとに分けて出来るようにします。スター選手のテクニックを細分化して教えるのはカリキュラムの一部だが、『クーバー・コーチング』の歴史的背景からも我々が一番こだわっている」と、時代に合わせた選手たちのプレーに注目し、練習メニューをアップデートしています。

 子供の頃、何か好きなものを真似て遊んでいたように、このような取り組みは子供たちのモチベーション向上に繋がっています。「スター選手のプレーだと説明すると、子供の食いつきも良いので、一生懸命取り組むことが出来ます。習得することで更にモチベーションが上がる」。1970年当時、クーバー氏が思い描いたサッカーに対する楽しさは、好きな選手のあんなプレーが出来た! という気持ちと共に、40年以上たった今でも「クーバー・コーチング」という指導法で世界中に広まっています。育成段階において、楽しんでやるという事が上達する近道だとクーバー氏から学んだような気がします。

◆著者プロフィール◆
長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪でなでしこジャパンや女子レスリング金メダリストの伊調馨らを取材。フジテレビ「とくダネ!」に出演するなど現在スポーツライターとして活躍中。
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