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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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震災後チームが得た強さ
by 長谷川望

 前回のコラムでご紹介した全日本少年サッカー大会の福島県代表に輝いた福島ユナイテッドFC U-12。クラブ初の快挙を遂げたこのチームには、メンタルの強さがあるという事を取り上げました。それは特別なメンタルトレーニングではなく選手、スタッフの方々が初めて経験したことから得た「想い」が背景にありました。

 福島県は2011年3月11日に発生した東日本大震災よって大きな被害を受けた県の一つです。未だに福島原発の事故により目に見えない不安と戦っています。福島県出身の私にとっても他人事とは思えない状況です。

 現在の福島ユナイテッドFC U-12の選手たちは、福島原発事故による線量の関係で外での練習を自粛し、体育館で練習を行っていた子供たちです。選手たちの「外でサッカーをやりたい」という気持ちが実現したのは、震災から1年半後。ようやく外で練習を始められるようになりました。

 しかし得たものもありました。「苦しい状況の時に支援していただいたチームさんがたくさんあったので、感謝の気持ちが子供たちと私たちスタッフに強く残っている。だからこそチームとして負けられないという気持ちに繋がっている」と中村洵監督が言うように、感謝という気持ちを全員が持つ事によって得たのはチームの一体感です。

 その強さは試合にも結果として表れています。全日本少年サッカー大会県予選初優勝。準決勝と決勝のPK戦は、福島県代表の座が懸かる大きなプレッシャーがあるなか、それを感じさせない選手たち一人一人の一蹴りで勝利を収めました。そんな状況で監督、コーチはメンタルの強さを実感したと言います。清野通仁コーチは「色々な方に支援していただいて、今まで私たちも子供たちもそのような経験をした事がなかった。それだけに支援した下さった方々の想いを背負いながら全員がプレーした」と試合で見せたメンタルの強さの裏側を説明して下さいました。

 1年半もの間、体育館で練習をしなければならないという苦境を経験したチームだからこそ得た「支えてくれた方々への感謝」という共通の想い。それは選手たちの「負けられない」という強いメンタルを培いました。このメンタルは福島ユナイテッドFC U-12のみのストロングポイントとして今後生かされていくでしょう。選手たちに将来の目標を聞くと「ユナイテッド福島FCのトップチームに入って活躍したい」という言葉がたくさん返ってきました。その言葉からは逆境にも負けないサッカーへ対する熱い想いを感じました。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪でなでしこジャパンや女子レスリング金メダリストの伊調馨らを取材。フジテレビ「とくダネ!」に出演するなど現在スポーツライターとして活躍中。
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