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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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ドルトムントが取り入れているライフキネティックトレーニング
by 長谷川望

 香川真司選手が3シーズンぶりに復帰したドルトムントは、ドイツクラブのなかでも強豪クラブへと躍進を遂げたクラブです。攻守の切り替え、プレッシャーなどプレーの「早さ」が魅力です。ドルトムントの台頭からも、早いプレーは現代サッカーには欠かせない要因になっていると感じます。

 早いプレーには、それに伴う判断力が必要となってきます。ドルトムントでは速い判断力とそれを実行できる身体能力を身に付けるために、頭と身体を同時に使う「ライフキネティック」と呼ばれているトレーニングをジュニア世代から取り入れています。

 BVBエボニックサッカースクールコーチのMarkus Pasdziorさんは「ドルトムントでは2008年くらいから取り入れている。ドイツでも普及し始め、様々なクラブが取り入れてきている。早い判断を養う為にライフキネティックを導入したのがドルトムントの成功の一つの要因」と、ライフキネティックの重要性を話して下さいました。

 ドルトムントを成功に導いたライフキネティックには、どのような狙いがあるのでしょうか。「技術だけではなく、頭のトレーニングをしていかないといけない。試合中はいろいろな状況を視覚的に捉える。それを脳が感知し、どういう風に動かなければいけないかを身体に指令を出して私たちは動いている。その一連の流れをスムーズにするために行われている」。脳から働きかける事によって、判断力に伴う身体能力を鍛える事が出来るというライフキネティック。判断を身体で表現することで初めてピッチ上で速い判断力と評価されるので、判断と表現は切り離せない関係と言えます。このような関係性からもライフキネティックは判断力を養う為に効果的なトレーニングとなります。

 ライフキネティックトレーニングのために数えきれないほどの用具がドルトムントにはあると聞きました。例えば、様々な色のコーンがあり、指定された色のコーンへパスをする練習。これはどこに何色のコーンがあるのかを把握していなければいけません。

 クリアするごとにステップも上がっていきます。次は様々な色のコーンを数字や食べ物に置き換えて指示を出します。どの色のコーンが何に置き換えられているのか考えることによって、子供たちは頭を使いながら身体を動かします。このようなライフキネティックトレーニングをジュニア世代から取り入れ、周りを見て考えて得た情報を、身体で表現するまでをスムーズに行える身体能力を身に付けているドルトムント。

 コーンの他にも、様々な色のボールに様々な表情の顔が描かれているものなどもあるというのは驚きです。ドルトムントでは早いプレーに必要な能力を、育成段階から養っていくことが考えられており、トレーニングにも工夫が施してある事が分かりました。ドイツ国内でも広まっているライフキネティック、日本や世界各国に今後より普及されていくのではないでしょうか。


◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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