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POINT OF SOCCER by 長谷川望

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日本人初のカンボジアプレーヤーから学ぶサッカー事情
by 長谷川望

 人口6億人を超える東南アジアは、経済成長も著しく新たな市場として注目されています。Jリーグもタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシアといった東南アジアの国々とパートナーシップ協定を結んでいます。なかでもカンボジアは日本からの観光客も多く旅行先として人気な国。このカンボジアで日本人で初めてプロサッカー選手になった方をご存知でしょうか。

 太田敬人選手(27歳)。ビルドブライトユナイテッド(BBU)というクラブチームに所属し、カンボジアのトップリーグでプレーしているサッカー選手です。太田選手はプロサッカー選手の傍ら、グローバルフットボールアカデミーソリヤ(GFA Soriya)という団体でアカデミーを設立し、13歳から15歳の日本人を対象にしたサッカースクールを運営しています。他にもGFA Soriyaの活動の一環として、毎月孤児院への巡回指導やカンボジア全土の小学校での指導、育成年代の大会の企画、運営などカンボジアのサッカー普及活動をされています。

 日本ではあまり知られていないカンボジアサッカーにはどのような特徴があるのでしょうか。「Jリーグとの違いは練習グラウンドの芝の状態の悪さやクラブハウスがない事、洗濯も各自で行い、選手たちはバイクの2ケツ、3ケツで練習場に到着する。戦術、チームマネジメントという面では日本人選手に劣ると思う。ただ南国特有の身体能力、バネの強さ、思い切りの良さというのは日本人選手よりも優れた選手がいる。カンボジアの選手はコンディションの悪い芝で毎日プレーしているので、足腰が強い」。さらにカンボジア人選手の体格は、食べ物の違いにより成長が日本人と比べて遅いため「日本の高校生のような体格」だと言います。まだツボミの状態のカンボジアサッカー、技術や戦術の他に食育についても今後重要になってくるでしょう。

 太田選手は今年8月「ヤマハインターナショナルフレンドリーマッチ2014」というカンボジアとシンガポールのチーム、そして日本の岐阜県選抜U-14の計6チームが参加したカンボジア初の育成年代の国際大会を開きました。優勝したのはカンボジアの強豪プノンペン・クラウンU-15。「岐阜県選抜U-14とプノンペン・クラウンU-15の対戦は引き分けだった。岐阜県選抜U-14の方が、一学年下にも関わらず身長が頭一つ分抜けていた。体格差で誰もが岐阜県選抜が有利だと思っていたが、技術とスピードで優勝まで勝ち進むことが出来た」と太田選手は驚く反面、嬉しそうな声で大会を振り返りました。

プノンペン・クラウンはカンボジアの中でも数少ない育成に力を入れているクラブですが、カンボジア人選手のポテンシャルを物語った結果だと言えます。太田選手は「育成段階から力を入れていければ10年、20年後は日本を脅かす存在に成り得る」とはっきりとした口振りでカンボジアを始めとした東南アジアの国々の未来を見据えています。その土台となるカンボジアサッカーの活動をこれからも注目していきたいです。

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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