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ヤング魂 by 長谷川望

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[第8回]JFAアカデミー福島U-15「JFAが進めるエリート教育」
by 長谷川望

 日本サッカー協会が進めているエリートを養成するシステム・JFAアカデミー。中学1年生から高校3年生までの選ばれた選手たちがそこでサッカーに励んでいる。

 このエリートという言葉は、どのような意味なのか。この言葉には、困っている人がいたら先頭になって手を差し伸べるなどという道徳的な意味があり、それをここではエリートと呼んでいた。

 JFAアカデミー福島はその名前からも福島県で活動をしていたが、2011年の東日本大震災の影響で、現在は静岡県に活動拠点を移している。当時行き場を失っていたJFAアカデミー福島を、避難場所としてすぐさま受け入れてくれたのが静岡県にある「時之栖(ときのすみか)スポーツセンター」。JFAアカデミー福島のスタッフの方は、その感謝の気持ちを今でも語っていた。この日練習を行っていたのも時之栖裾野グラウンドだ。

どんなところ!?
 全寮制で日常生活からサポートをしているJFAアカデミー福島。今年は約350人もの応募があったといい、まだ子供っぽさが残る新中学一年生に対して「12歳や13歳で親元を離れることを決心したということは、それは凄いよ」と男子サブスクールマスターの中田康人氏は最初に話したそうだ。

 中田氏はアカデミーの特徴について続ける。「サッカーの練習、勉強、食育、休息。この4つの柱を大切にしている。育成の年代のなかで、休息はとても大切。睡眠時間をしっかりとれるように、中学生から高校生の6学年の子供たちが、基本的に22時30分には消灯で、起床が朝6時。またトレーニングもない、学校も休みの日をとるようにしている。そういうリフレッシュとなる面も考慮している」。

どんなサポートがあるの!?
 食事は栄養士が考えたメニューがバイキング形式で出されている。「選手たちの一日の運動量、エネルギー消費量からのエネルギー摂取量を計算している。約3000kcalオーバー」。バランス良く、自分に合った栄養素が分かるように教えているという。選手たちからは「家ではこんなに出ない」と好評なのだから、保護者にとっても良い便りだ。

 他にも、中学生は「くもん」、高校生は「東進ハイスクール」を取り入れた学習プログラム、週に一回の英会話レッスン、コミュニケーション能力を養うプログラムもある。特にコミュニケーション能力を養うことは、サッカーのプレーにも繋がる。「会話のなかで『はい』『いいえ』だけで終わってしまう時がある。そこに『なぜ』を入れるようにしている。プレーのなかでも『なぜ今のプレーを選択したのか』と聞くと、相手選手がこういう動きをしていたから、この選手と目が合ったからなど、サッカーの仕組みを頭のなかで理解できるようになる」。

力を入れているトレーニングは!?
「基本的にテクニックを重視している。2年前からスペインからコーチがきていて、彼らはよく細かいところでも『認知』という言葉を使う。ボールをどちらに出したらいいのかという時に、優先順位の高いところから狙うべき。ボールを失いたくないために、周りを見ないで横や後ろにパスしてしまう場面があるが、ボールを失わなかったから良い選手ではない。あとは勇気がいるので、指導者がミスしても大丈夫だと導いていきたい」。
 
 個を育て、その個をチームで活かすことをしっかりと考えられているJFAアカデミー福島。トレーニングは真剣そのもの。緊張感が感じられた。しかし練習が終わると、一気に普通の中学生、笑顔で仲間たちと話している様子を見ることが出来た。全員がプロ意識を高く持って毎日を一丸となって過ごしている。ここから未来のプロ選手が生まれるのが楽しみだ!!

◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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