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「ユース教授」安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」 by 安藤隆人

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“ユース教授”安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」第6回:朝岡隆蔵監督(市立船橋高)
by 安藤隆人

 名将列伝第6回は、高校サッカー界きっての名門校・市立船橋高を率いる朝岡隆蔵監督。かつて布啓一郎監督(現・ファジアーノ岡山コーチ)が率いて監督就任2年目で選手権初出場、4年目でインターハイ優勝を果たすと、翌年にはインターハイ2連覇と選手権準優勝。それ以降も市立船橋はインターハイ優勝2回、選手権優勝4回を果たし、全国の頂点に立ち続ける名門となった。その後、コーチだった石渡靖之監督がバトンを引き継いでからも、選手権準優勝1回、インターハイ優勝3回と輝かしい成績を収めてきた。そして、11年にかつて布監督の下、94年度の選手権で初優勝を遂げたメンバーのひとりであり、石渡監督の下でコーチを務めていた朝岡監督が、布監督、石渡監督に続く“3代目”として就任した。

 偉大な恩師達が引き継いできた『常勝・市船』の大きく、重い看板を背負い、強烈なプレッシャーもあった。だが、そのプレッシャーをはね除け、就任1年目で選手権優勝。そして、就任3年目のインターハイを制し、その伝統をしっかりと引き継いでいる。一昨年にはチームをプリンスリーグ関東からプレミアリーグEASTに引き上げ、プレミアリーグ初挑戦となった昨年度は残留。今季は第10節を終了して首位と勝ち点1差の4位と、好位置につけている。

 今年で監督就任5年目と節目の年を迎えている朝岡監督に、これまでの思い、そしてこれからについて直撃してみた。

―いきなり直球の質問をします。伝統の『イチフナ』を引き継ぐときは、相当なプレッシャーもあったと思います。正直、かなりしんどい思いが合ったのではないですか?
「・・・・・・最初はね、ありましたよ。今は落ち着いてきましたが、最初は本当に半端じゃなかった。『朝岡なんか知らない』って言う人もいる訳ですし、OBの中でも『大丈夫か?』という感情は、当然抱くと思うので・・・・・・。OBの方々は、僕自身がOBということもあって、比較的OBは好意的でしたが、やっぱり親御さんは、自分の息子を預けているのに、その代から(監督が)代わるのは、相当な不安があったともいます。だからこそ、そう言われないためにも、やはり結果を出して認めてもらうしかなかった部分もありましたね」

―その結果はすぐに出ました。就任1年目で選手権優勝。これでどう変わりましたか?
「雑音が一気になくなりました(笑)。それ以上に、自分自身に自信を持てるようになったので、それが一番大きいなと思います。考え方も100人いたら100人応援してくれる世界ではないけれど、思った以上の人たちが応援してくれている。ならば、そのような人たちの想いをちゃんと酌めればいいと思ったんです。プレッシャーを感じてこの現場に立たせてもらっている有り難さや、そういう立場を望んでいた自分もいました」

―監督就任1年目で選手権制覇。ですが、監督交代をしたあとの優勝というのは、サンフレッチェ広島の森保一監督がJリーグで優勝したときもそうですが、どうしても「前監督の遺産で勝った」と言われがちです。そうなると、そのあとの戦い、結果が重要になってくるのですが、一昨年度のインターハイで優勝するまではどうだったのですか?
「1年目で勝ったことは凄く嬉しかったですが、おっしゃる通り、本当にこの後が試されているなと感じていました。それで2年目は・・・・・・正直、失敗をしました。『2年目が勝負』だとか、『2年目のジンクス』だとか言われて、逆に意気込み過ぎてしまいました。それで結果が出ず、その反省をふまえて3年目は力を抜いたというか、力が抜けた。そしたら、たまたま巡り合わせで、石田雅俊、磐瀬剛(ともに京都)らと出会うことができて、自分の思い描くサッカーができて、インターハイも獲ることができました。選手権こそベスト8のところで京都橘に負けましたが、プレミアリーグには参入出来たので、3年目のところは自分の中で凄く大きかったです。この3年目で、劇的に自分を見る周りの目は変わったと感じています」

―それはどう変わったのでしょうか?
「サッカーの質を変えたことだと思います。これまで市船は堅守速攻とかフィジカルだけだなどと、良くも悪くも批判をされてきました。そこを払拭して、3年目でより攻撃的で、流動性のあるサッカーでインターハイを制し、『市船のサッカーが面白い』と感じてもらえるようになったし、選手達に『ここでサッカーがしたい』と選ばれるチームになり始めた。実際に(入部)希望者も増えたので。本当にいろんな風向きを変えることができた。謙虚な気持ちは忘れてはいけないけど、自信をしっかりと深めることが出来ました」

―今後の市船の展望を教えてください。
「やっぱりチャンピオンシップを獲りたい。プレミアリーグに居続けながらチャンスは伺いたいと思っています。それは今年かもしれないし、来年かもしれないけど、やっぱり公立高校として、部活動の代表として、日本のサッカーを支える組織として、インパクトを与えたいですね」

―少し意地悪な質問ですが、流通経済大柏も獲っていますしね。
「それは当然頭の片隅にはあります(笑)。そこで日本一を取りたい。総体も獲ったし、選手権も獲らせて頂いたので」

―高体連チームとして2校目のプレミア制覇。やっぱりここですよね!
「クラブユースと高体連が融合して日本の育成年代を支えていると思うし、僕らは高体連の良さを発信していきたい。クラブユースの良さと、高体連の良さをこのリーグで示していきたい。その上で勝つ!それが目標です」

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