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「ユース教授」安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」 by 安藤隆人

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“ユース教授”安藤隆人の「高校サッカー新名将列伝」第12回:砂金伸監督(習志野高)
by 安藤隆人

 名将列伝第12回は、習志野高サッカー部監督であり、09年度の日本高校選抜の監督でもあった砂金伸監督。かつて八千代高を指揮し、インターハイ3位、米倉恒貴(現G大阪)、山崎亮平(現新潟)を擁し、選手権ベスト4に輝くなど、激戦区・千葉を支える名将の一人。12年に八千代高から、これも千葉の名門・習志野高に転任。就任3年目の昨年には、インターハイ予選準々決勝で八千代を2-1、準決勝で流通経済大柏高を2-1で破り、チームを5年ぶりのインターハイに導いた。市立船橋、流通経済大柏という全国トップレベルの力を持つ、強烈な2チームがいる中で、常にこの2チームを脅かすチームを作り上げる砂金監督。今年の選手権予選も準決勝に進出し、流通経済大柏を延長戦まで苦しめた。千葉県内にある習志野高にお邪魔をし、名門を渡り歩く名将に直撃してみた。

―今日はよろしくお願いします!さっそく聞きたかったことから伺います!いきなり八千代から習志野への移動。正直僕もめちゃくちゃ驚きました。率直にどういう気持ちでしたか?
「よろしくお願いします!そうですね…、まず一つは凄くありがたいというか、この人事自体が過去の千葉県の公立の中では珍しいことなんです。名門校から名門校というのはなかなかないこと。その辞令を受けて、もう一回チャンスをもらったというか、本当にありがたいお話でした。逆に責務の重さを感じましたね。『これは結果を出さないといけないな』と」

―就任1年目のインターハイ予選でいきなり八千代と対戦しました。昨年まで自分が率いていたオレンジのユニフォームと戦ってみて、いかがでしたか?
「準々決勝で当たって、延長戦の末に0-1で負けたんです。凄く良いゲームをやっていて、ウチの方がチャンスが多くて、『これはいけるな!』と思っていたのですが、やられちゃいましたね。多分、八千代の選手達の方が意識をしていたと思います」

―八千代でやって来たことと、習志野でやっていること。変化はありますか?
「やっていることは変わりませんが、学校の雰囲気は違いますね。八千代とは全く学校のスタイルが違って、習志野は本物のスポーツ校なんです。サッカーだけでなく、野球では多くのプロ選手を出しているし、バレーボール、体操もそう。吹奏楽部も全国レベルで、部活に対する意識が八千代と違います。部活に対して凄く一生懸命な校風ですね」

―習志野と言えば、かつて本田裕一郎監督(現・流通経済大柏高サッカー部監督)が率いて、全国にその名を轟かせました。それ以降は市立船橋と流通経済大柏、八千代の前に、ちょっと押され気味の状況だと思います。
「やりがいは凄く有りますね。この環境は八千代と似ていて、市船と流通経済大柏という2つの強烈なチームがいる中で、そこと当たるまでは『勝って当たり前』の雰囲気が有ります。でも、そのプレッシャーを僕は楽しんでいます。むしろ大好きですね(笑)。八千代に赴任したときも、その前年に今泉監督で岩手インターハイ優勝(広島皆実高と両校優勝)した翌年で、その勢いを持って、就任1年目の岐阜インターハイで3位になった。でも、それ以降は苦しみました。なかなか自分のカラーが出せないし、結果も出ない。もがき苦しんでいる中で、米倉、山崎の代に出会って、就任7年目で選手権ベスト4を経験出来た。そういう経験が自分の中で大きなベースとなりましたね」

―習志野に赴任して、当時を思い出したんじゃないですか?
「そうですね。懐かしさや大変さ、いろんな想いがありましたね。就任1年目は、前任の水庫さんが国体監督をやっていたときに教えていた選手達がたくさん習志野に入って来ていて、3年生に凄く良い素材が揃っていた。凄く良い代だったんです。だからこそ、就任1年目は結果を出してあげられなくて、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」

―就任3年目の昨年、予選準決勝で流通経済大柏を破って、インターハイ出場を勝ち取りました。
「転勤した年に入って来た1年生が3年生になったときのインターハイなので、僕にとっても凄くタイミングが良かったと思う」

―千葉県における市立船橋、流通経済大柏の2強の存在はとんでもなく分厚い壁だと思います。砂金監督は八千代で、そして習志野でこの2つの壁に果敢にチャレンジし、風穴を空けて来た指導者だと思います。どのような手法でチームを作り上げていくのですか?
「正直、魔法のレシピなんてないし、特別な指導法、戦略も無い。ただ、日々のトレーニングのオーガナイズだけは、しっかりとプランニングと質にこだわっています。練習前にビデオを見せて、今日やることのイメージだけ植え付けて、そこからは個々が意図を理解しながら、オーガナイズされたトレーニングを集中してこなしていく。それは2001年の兵働昭弘(現大分)の代からずっとやっていて、今もやっています。この内容が上手くチームとリンクをしていくと、その代は良い力を発揮しますね。日々を環境が変わっても積み重ねていくことで、ベースになっていると思います」

―最後に砂金監督にとって、『高校サッカー』とは何ですか?
「子供達が成長していく過程に携われるのは、凄く大きいことだと思います。大好きなサッカーで彼らの将来の財産になるようなものを持たせて、次なるステージに向けて背中を押してあげられたら嬉しいなと思っています」

―米倉選手も代表に入りましたし、本当に夢のある仕事だと思います。
「そうですね。八千代も習志野も、昔と違って大量にプロを輩出するようなチームでは有りません。その中でプロになった選手が、試合に出るのも大変な世界で、A代表に入ることが出来たことは、望んでいたことだし、僕の目標の一つでもありましたから嬉しいですよね。プロになっていなくても、それぞれのカテゴリーで活躍してくれている選手が多い。指導者になってくれている生徒もいて、それが本当に幸せなことだと思っています」

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