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東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

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「東京五輪への推薦状」第17回:獰猛なる甲斐の虎・入間川景太は侵掠すること火の如く
by 川端暁彦

 1年生だった昨シーズンからシンプルに目を惹く選手だった。タフに戦えて、力強く、スピードもある。迂闊なプレーが顔を出すこともあったが、しかしポテンシャルの高さは明らか。絶対的な運動量を要求されるウイングバックというポジションにあって、真夏の群馬であっても強度を落とさずに奮戦する姿は印象的だった。2年生になった今季、ヴァンフォーレ甲府U-18のDF入間川景太はさらに大きな成長曲線を描きつつある。

 父親はスポーツ万能で野球、サッカー、バレーボールの経験者、母親はテニス選手というから、生まれ持ったものもあるのだろう。身体能力の高さは折り紙付きで、中学時代からの恩師である大柴克友監督は「走力、パワー、速さがあって、キックもあるポテンシャルはウチのチームで一番高い」と、その潜在能力の高さを認める。大柴監督はFWやトップ下だったという入間川にサイドバックという天職を与えた人物でもある。

 自身の売りを問われて真っ先に出てきたのは、「やっぱりドリブルです」の一言。スピードを生かして縦に抜き切ってのクロスという一連のプレーには自信を持っており、DFながら重要な攻撃のオプションとして機能している。今季は3バックの一角で主にプレーしているが、大柴監督からは「行けると思ったら、仲間を信じて前に行け。お前の特長を出せ」と言われているそうで、関東クラブユース選手権でも果敢な攻撃参加で対戦各チームを脅かしてみせた。チームが点の欲しい状況になると中盤のアウトサイド、そしてFWへとポジションを上げることもあるのは、その攻撃力に対する信頼があるからこそ。「ジャンプ力はあると思う」と語るように、空中戦での強さももう一つの武器である。

 キャラクターも面白い。「走って戦う姿勢を出せるし、とにかく負けん気の強いタイプ」と指揮官が語るように、旺盛な闘争心と競争心の強さはプロ向きの資質だろう。課題は気持ちの強さが裏目に出て「セルフコントロールが利かないときがまだある」(大柴監督)ことだが、そもそも牙が生えてないような選手よりはずっといい。長くプロで戦ってきた大柴監督から駆け引きの部分での薫陶を受けながら、さらに上を目指している。

「もう一度、ああいう“場”に戻りたい。あのとき一緒にやっていた選手たちが(年代別の)代表にいる。あいつらに負けたくない。代表に入って、そしてプロになる。それが今の目標なんです」

 これは中学時代にメンバー入りしていたU-15Jリーグ選抜について話を振ったときのコメントだが、当時を思い出してテンションが上がり、語気に力強さが出たのは何とも印象的だった。野心、闘争心、向上心にあふれた甲府の野獣系DFは、最後の最後で出場を決めた夏の全日本クラブユース(U-18)選手権での大暴れと、それを機にした代表入りを、虎視眈々と狙っている。

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