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ゲキつよっ!! by 北澤豪

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ゲキつよっ!!vol.4「若きサムライたちの進むべき道を照らせ」
by 北澤豪

 解説者の元サッカー日本代表・北澤豪氏による新コラム「ゲキつよっ!!」。日本代表からJリーグ、海外サッカー、育成年代、フットサル、障がい者サッカー……、幅広くフットボールに精通する北澤氏が、テレビでは語り切れない魅力を綴っていきます。

 インターハイ、リオデジャネイロ五輪も終わり、明日9月からはロシアW杯アジア最終予選がはじまろうとしている。日本サッカー界が勝負のときを迎える前に、8月を振り返ってみたいと思う。

 8月は学校が夏休みのため育成年代の大会やキャンプが目白押しだった。上旬には静岡県の時之栖グラウンドで「JFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12」が開催された。都道府県から選ばれた小学生年代が一同に介す場になった。1チーム16人の選手にコーチやスタッフを加えて、これが48チーム。今年で2年連続での開催となるが、全国で共通プログラムを行っている競技は、他のスポーツにおいても例をみないだろう。この取り組みで、ピラミッドの底辺は確実に広がる。

 大会を行うのではなく、日本サッカー協会と地域、つまり日本全体として「どこに向かって行くか」を認識する場だ。技術を伸ばすことが日本人が世界と戦ううえではカギを握るのは間違いないが、「ゴール」という目的を忘れてしまってはいけない。上手い選手はいても、1点にこだわる選手が少ないのが、現在の日本サッカー界全体に当てはまることのように思う。バランスが難しいが、理論にこだわりすぎないことも重要だろう。

 私が講演をする場があったのだが、みんな積極的で、頭を下げて話を聞いている選手はいなかった。「自分がやってきたことは間違いではなかったんだ」。そういう顔をしていた。それが選手の背中を押し、さらなる成長を促してくれることだろう。

 第3回全日本ユース(U-18)フットサル大会でも、特筆すべき出来事があった。

 宮城県仙台市を舞台に行われた同大会には、全国を勝ち上がった16チームが出場。そのうちフットサルのチームは4チームで、そのほかはサッカー部が名を連ね、野洲高、作陽高、聖和学園、帝京長岡高といった全国の常連校も参加していた。

 サッカーが強いチームがフットサルでも強いかといえば、そうとも限らない。サッカーとフットサルでは戦い方が異なるからだ。具体的に言うと、フットサルのチームは守り方が圧倒的に上手い。彼らは「ボールを奪った瞬間がチャンスになる」ということが体にしみついているため、わざと相手にボールを持たせてシュートを打たせることもいとわない。反撃のスイッチが入るのは、GKがキャッチしたタイミングだ。そこから一瞬でシュートまで持ち込むカウンター攻撃に、サッカー部のチームは何度もピンチを迎えていた。

 しかし、サッカー部のチームも、その特性で十分に戦えていた。それは、高校サッカーならではともいえる「諦めない」姿勢だ。日々の練習に裏づけされた終了間際のふんばりは、フットサルのチームには見ることができないものだった。

 奇しくも決勝戦は、帝京長岡高(新潟)とフットボウズ・フットサル U-18(東京)というサッカー部のチーム対フットサルのチームという組み合わせになった。試合は延長戦までもつれると、8-6の打ち合いに。これを制した帝京長岡高が初優勝を飾った。

 試合後、敗れたフットボウズの岡部直樹選手が試合後に私のところにやってきて泣きながらこう言った。「Fリーガーを目指します」。胸を打たれた。そんなことを言われたのは初めてのことだった。

 もう1人、気になったのが帝京長岡高の齋藤日向選手だ。優勝した帝京長岡高の中でも、抜群の存在感を発揮していた。彼には高校卒業後にサッカーとフットサル、どちらの道に進むべきかという選択肢が示されるだろう。

 Fリーグがプロとして進む道となり、また、選手の高いモチベーションの源となっていることに、改めて誇りと意義を感じさせてくれた夏だった。

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