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日本一のGKへ by 東口順昭

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vol.1「GKを始めたきっかけ、その醍醐味に気が付いたとき」
by 東口順昭

 はじめまして。ガンバ大阪の東口順昭です。今回、ゲキサカでコラムを始めることになりました。サッカーを始めた小学生時代からG大阪ジュニアユース時代、GKの魅力を再確認した高校・大学時代を経て、G大阪や日本代表で活動する現在まで。セーブの記憶やGK目線で見るサッカーについても書いていきます。よろしくお願いします。第1回目のテーマはGKを始めたきっかけと、その醍醐味について。

 シュートを止める瞬間っていうのは昔からGKの一番の醍醐味やと思う。相手チームの戦術が成功していたとしても、最後のシュートをGKが止めたらそれを崩せる。勝つか負けるか、ギリギリのところに立っているプレッシャーもあるけど、それがGKの醍醐味だし、大事なポジションやと思っている。

 サッカーを始めたのはJリーグが開幕した1993年、小学1年生のとき。周りの友達がサッカーを始めて、近所のチームに入ると言ったので「じゃあ俺も行くわ」と。「日吉台ウイングス」というチーム(小5からチーム名が変わり「FC OWLS INTER.HIRONO」)に入った。初めてGKをやったのは小学4年生。よくある話で、誰かがGKをしなきゃいけない状況でじゃんけんで負けたのがきっかけ。生まれて初めてGKをやった日になかなか出来が良くて、何本かシュートを止めてしまった(笑)。でも、当時俺はFWがしたかったから、「練習試合はFWをやらせてくれ」ってずっと言っていた(笑)。大事な試合ではいつも俺がGKだった。

 入りそうなシュートを止めたらFWが悔しがる。当時から、そういうのを見たら「あ、止めたんやな」とシンプルに嬉しい感覚はあった。それは今も同じで、GKの醍醐味やと思う。決定的なシュートを止めてスタジアムがどよめく瞬間はめっちゃ気持ちいい。スタジアムの雰囲気もそうやし、最後の砦として味方のピンチを救えるというのは一番のモチベーションになるんじゃないかな。

「GKが楽しい」と再確認したのは高校・大学時代。洛南高(京都)は全国の常連校ではなかったから「自分がやらな」っていう自我が芽生えた。「勝つためには自分がしっかりしなあかん」「俺がゴールを入れられなければ負けることはない」という意識が強くなった。高校2年から試合に出て、3年のときに選手権京都府予選の決勝まで進んだ。我ながらよう頑張ったなと思う。

 選手権予選の準決勝はPK戦で勝った。高校だからそんなに観客は入らないけど、その試合はそれなりにお客さんがいて、シュートを止めたときに大きな歓声が聞こえた。新潟経営大でも、3年のときに総理大臣杯で強豪の筑波大にPK戦で勝ったときは興奮した記憶が残っている。地方の大学が全国で1勝するのはなかなかないこと。「GKの力でこんだけ試合を変えられるんやな」って感じ始めたら、どんどん楽しくなっていった。

 とはいえ、GKは全てが受け身。絶対に“リアクション”やから我慢が多いし、1点でも入れられたら責められてしまうポジションでもある。ただ、失点しないとか、ビッグセーブで1点を救った時の価値は大きい。今の小学生はどうか分からないけど、俺らの時代はじゃんけんで負けた人がやるポジションやったから、それは変えていきたい。俺はずっとブッフォン(ユベントス)が好きなんやけど、海外ではGKはヒーローみたいな立ち位置。辛いだけのポジションじゃないっていうのはもっともっと周りに分かってほしい。

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