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東京五輪への推薦状 by 川端暁彦

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「東京五輪への推薦状」第48回:長崎総附の注目FWは一人にあらず。逸材シューター「九州の得点王」荒木駿太
by 川端暁彦

 プリンスリーグ九州の得点王争いにおいて、2位に4点差を付けた計14得点(15節終了時点)で独走している選手をご存知だろうか。昨年の得点王で清水加入も内定している神村学園高MF高橋大悟だろうか。それともU-18日本代表の長崎総合科学大附高FW安藤瑞季だろうか。いや、実際はどちらでもない。答えは、長崎総合科学大附高のFW荒木駿太である。

 昨年度から期待値はあった。繊細なタッチに加えて推進力を兼ね備え、何よりゴールの匂いを嗅げる選手として存在感は抜きん出ていた。夏に小嶺忠敏監督を直撃して「交代で出てきたあの子、ちょっと面白くないですか?」と聞いてみたところ、よくぞ聞いてくれたとばかりに彼の特徴を紹介してくれたのは何とも印象的だった。伝説級の名伯楽は、荒木の非凡な得点感覚とシューティングスキルを高く評価しつつ、その開花を待っていた。

 ただ、1試合を通じてのコンスタントなプレーという意味では弱みもあり、そのシーズンで荒木はスーパーサブ的な起用が中心となる。だが、それにもかかわらず、プリンスリーグ九州でPKなしの15得点をマークしてランク3位。シュート41本で15得点(決定率約36.6%)というのも地味ながら特筆すべき数字で、非凡なアタッカーであることは明らかだった。もっとも、当人はこの戦績にまったく満足していなかったようである。

「去年は最後に高橋選手に(得点王争いで)競り負けたのが悔しくて、だから今年は獲りたいという気持ちはあります」(荒木)

 今年は中心選手としての自覚もある。「去年は付いていくだけだったけど、今年は違うので」という意気込みはプレーにも反映されており、「もっと点を取れる選手になりたい」とクロスボールに飛び込んでいくプレーも磨きをかけてきた。もちろん得意のドリブルからのシュートやクロスも健在で、アシストランキングでも九州の3位(首位と1差)につける活躍ぶりだ。もちろん、頼れるチームメイトからの刺激もある。

「やっぱり、自分たちのチームに日本代表がいるという刺激は凄いです。瑞季は中学のときから知っているんですけど、高校になってからあんなに凄くなって『もっと頑張らなきゃ』と思わせてくれるし、瑞季からも『もっとやれよ』と言われるので本当に励みになります」(荒木)

 今年は体幹部のトレーニングにも精力的に取り組み、明らかにコンタクトプレーでの強さも増してきた。9月の最終週に強豪校が滋賀県に集まって行ったYASUカップでは激しい当たりにあいながらもボールを運んで持ち出すプレーも見せつつ、奪われたボールを強烈なプレスで回収するプレーも見せて、試合を視察していたJクラブのスカウトも唸らせた。イメージしているのは日本代表のあの男だ。

「原口元気さんです。前線からすごいプレスをかけてボールを奪いに行くし、そこからドリブルで仕掛けられる。日本代表の試合を観て『こういう人みたいになりたい』と思ったんです」(荒木)

 将来的には「大学で頑張って、プロになりたい」と夢を思い描く。それが決して大言壮語でないことは、リーグ戦で地道に残してきた数字が証明するとおり。あとは「大事なところでこそ決める、仲間から信頼される選手になりたい」。残りのリーグ戦、そして選手権予選と選手権で大暴れするイメージはできている。

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