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前半と後半で全く逆の展開になった一戦は、FW棚田遼の決勝弾で広島ユースが準々決勝へ!

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FW棚田遼(右端10番)の決勝弾に歓喜の輪ができる

[7.29 日本クラブユース選手権U-18大会ラウンド16 広島ユース 1-0 東京Vユース ロード宮城総合運動場陸上競技場]

 決勝トーナメント初戦。ベスト8進出をかけてサンフレッチェ広島ユース(中国1)と東京ヴェルディユース(関東10)が激突した一戦は、前半と後半で全く逆の展開になった。

 前半は東京Vユースがボール保持で上回り、広島ユースがブロックを敷きながら、果敢な球際でボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるという図式で展開された。

 東京VユースはFW根本鼓太郎(3年)とMF新鉄兵(2年)の2シャドーが、広島ユースのDFラインの間や、DFラインとボランチラインの間を自由に動いてボールを引き出すと、巧みなボールキープとテンポの良いパスで、ボールをスムーズに動かすが、広島ユースは回されながらも、GK波多野崇史(3年)のコーチングと中を固める守備で、ボックス内の侵入は許さなかった。

 前半16分、広島ユースは奪ったボールを左サイドハーフのMF越道草太(2年)がドリブルで突破しクロス。ファーサイドでDF畑野遼太(2年)がフリーでヘッドを放つが、これはバーの上を越えていった。

 広島ユースが質の高いショートカウンターでチャンスを作ると、今度は東京Vユースが決定機を作り出す。35分には右中央でボールを受けた右MF伊藤竜海(2年)が、オーバーラップしてきたDF青木瑠星(3年)に展開。グラウンダーのクロスに中央で根本がシュートを放つも、これは広島ユースCB豊田将大(3年)が体を張ってブロックした。

 前半はスコアレスで折り返したが、圧倒的な東京Vユースペースだった。だが、後半に入ると状況は一変する。

「相手の10番(根本)と20番(新)に自由にやらせすぎた。それを選手たちも感じていて、『後半はもっと前にプレスに行こう』という声が出ていたので、後半は積極的にやってくれると思った」と高田哲也監督が語ったように、後半は広島ユースが全体的にラインを押し上げて、中盤でのプレスの強度を高めたことで、ボール保持の時間が増えた。

 特にFW棚田遼(3年)とFW高柳英二郎(3年)の2トップが高い位置から積極果敢にプレスを仕掛けたことが、広島ユースのベクトルを前に向ける大きなきっかけとなった。東京Vユースの根本と新の自在な動きに対して、プレスバックに苦心していたMF西村岳(3年)とMF池田柚生(3年)のダブルボランチも、2トップに連動して前向きのプレーが増えたことで、攻撃の厚みはさらに増した。

 後半7分に棚田のパスを右サイドハーフのFW森夲空斗(3年)が落とすと、池田が強烈なシュート。これは枠を逸れたが、このシュートが号砲となり、広島ユースの猛攻が始まった。11分、高柳のポストプレーを受けた越道がカットインから左足シュート。12分には前線からのプレスで森夲がボールを奪って、池田にスルーパス。池田がペナルティーエリア内で決定的なシュートを放つが、これは東京VユースのDFが体を張ってブロック。

 チャンスを決めきれない広島ユースだったが、「プレミアなどでこういう焦れた展開は経験しているので、みんな冷静だった」(高田監督)。20分に東京Vユースのカウンターを浴びたが、新の強烈なミドルをGK波多野が横っ飛びでセーブするなど、一瞬の隙を突かせなかった。

 そしてついに広島ユースに待望の瞬間が訪れる。28分、左からのクロスは一度はクリアされるが、こぼれを畑野が拾って右サイドの豊田に展開すると、豊田のクロスを中央で棚田がヘッドで合わせてゴールに突き刺した。
 
 その後も広島ユースは攻撃の手を緩めず。追加点こそ挙げることができなかったが、1点を守り切るのではなく、最後まで攻め続けてタイムアップの時を迎えた。

「クラブユース選手権はあまり戦ったことのない相手とできる貴重な場所。今日も東京Vユースさんの技術レベルの高さを感じたし、前半は本当に苦しい展開だった。でも、その中で選手たちが考え、状況を打破して勝ちに繋げたことは、大きな価値がある一戦だったと思います」。

 この高田監督の言葉が、この試合の全てを表していた。東京Vユースらしさが全開だった前半をスコアレスで凌ぎ、後半はパススピードのギアをグッと上げて、ピッチを広く使ったダイナミックな広島ユースの、前への推進力の高いサッカーを表現する。今後に大きな弾みのつく勝利を手にした広島ユースの勢いはさらに加速する。

(取材・文 安藤隆人)
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