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[MOM3533]広島ユースFW棚田遼(3年)_試合を決めたのは“勝負の夏”に輝くビオラの背番号10

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FW棚田遼(10番)はチームを救う決勝ヘッド!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 日本クラブユース選手権U-18大会ラウンド16 広島ユース 1-0 東京Vユース ロード宮城総合運動場陸上競技場]

 試合を決めたのはビオラの背番号10・FW棚田遼(3年=サンフレッチェ広島ジュニアユース出身)だった。

 スコアレスで迎えた後半28分、棚田は左からのクロスに対してニアサイドに飛び込むが、相手DFにクリアされた。だが、このボールをDF畑野遼太(2年)が拾って、右サイドにオーバーラップをしてきたCB豊田将大(3年)に展開すると、自分のマークについていた東京ヴェルディユースのCB佐藤陽輝(2年)がボールウォッチャーになっているのが見えた。
 
「中に僕1人しかいなかったので、フリーになって豊田のクロスを合わせようと思った」と、バックステップを入れながら佐藤の背後のスペースに潜り込んだ。すると、豊田から山型のクロスが上がってきた。

「先にDFが飛ぶと思ったので、僕は自分のところまでボールが来ることを信じて、ギリギリまでタイミングを待って、頭でミートすることに集中しました」と、佐藤を越えてきたクロスを額にしっかりと当て、首を振って叩きつけるヘッドを放った。強烈な一撃はワンバウンドでゴール左隅に突き刺さった。

 このゴールだけではない。FW高柳英二郎(3年)とツートップを組んだ棚田は、前半はプレスバックに奔走するMF西村岳(3年)とMF池田柚生(3年)のダブルボランチを見て、なるべくボランチラインから離れず、セカンドボールを回収したり、東京VユースのアンカーのMF千葉広大(3年)にプレッシャーをかけるなど、守備面での献身性が目立った。

 その一方で攻撃の糸口を常に探り続けていた。「防戦一方では苦しいと思っていた。前半終了間際に僕ら2トップの一方が相手のCBにプレスに行ったときに、ボランチの池田が上がるスペースができて、相手のアンカーも引きつけることができたんです。セカンドも前向きに拾えて、僕と池田で攻撃の起点を作れると思ったんです」と語ったように、後半は高柳を1トップ気味にして、彼はトップ下のポジションを取ってセカンドボールを拾ったり、2列目から飛び出していく役割に徹した。

 高柳のポストプレーの質が高かったのもポジティブに働き、棚田がギャップで前向きにボールを受けられる回数が増え、そこに池田が絡んで2シャドーの形でボールを保持できたことで、東京VユースのDFラインを押し下げて、アンカーの千葉が前に行けない状態を作り上げた。

 これで試合の潮目は一気に変わった。後半は広島ユースが東京Vユースを圧倒し、後半だけで8本のシュートを浴びせ、彼のゴールで勝利を掴んだ。

「この夏が勝負だと思っています」。

 試合後、棚田は精悍な顔つきではっきりとこう答えた。これには理由がある。彼の夢はプロサッカー選手になることだが、トップ昇格できるかどうかはまだはっきりしておらず、この大会後に正式に決まるという状況に置かれている。だからこそ、この大会で躍動することで最後のアピールを誓っている。

「もし上がることができたら嬉しいですが、たとえ上がることができなくても、将来のことを本気で考えて全力を尽くすことは、自分にとって大きな財産になると思っています。ハードワークをして、決定的な仕事をこなせることもしっかりとアピールしたいし、それが今日の試合のようにチームの勝利に直結するように、これからも頑張っていきたいです」。

 その表情に不安という言葉は存在しないように感じた。自分のできることを精一杯やるのみと覚悟が決まっているからこそ、彼のプレーは躍動感があり、試合を全力で楽しんでいるように見える。どんな結果が待っているかは分からないが、彼の言う通り、今この時こそ彼の将来を明るく照らす、成長の日々を送っていることは間違いない。

(取材・文 安藤隆人)
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