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[MOM3539]浦和ユースGK川崎淳(3年)_ゴールに立ちはだかった『北陸の壁』が、PK戦で驚異の3本連続ストップ!

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浦和レッズユースの守護神、GK川崎淳は驚異の3本連続PKストップ!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.31 日本クラブユース選手権U-18大会準々決勝 浦和ユース 1-1(PK3-1) FC東京U-18 コーエィ前橋フットボールセンターC]

 193センチの長身が宙を舞うこと、3度。その度に突き上げた右腕は、天まで届くような雄々しさを感じさせた。「最後の所でやられてしまったのは悔しいですけど、その中でもみんな下を向かずにやれましたし、PK戦で活躍できて良かったです。『やった!』みたいな感じですね。ヒーローになった感じもちょっとはあります(笑)」。浦和レッズユースの守護神。GK川崎淳(3年=水橋FC U-15出身)が主役の座を、鮮やかにさらっていった。

「苦しい展開になるというのはわかっていたんですけど、しっかりチーム全体でゼロで抑えるというのが目標でした」と川崎も話した、準々決勝のFC東京U-18戦。高円宮杯プレミアリーグEASTでも対戦しており、その時は0-1で惜敗を喫した相手に、今回は好調を維持したまま真っ向から挑む。

 前半20分にFW伊澤壮平(3年)のゴールで、浦和ユースが先制。後半はやや押し込まれる展開の中で、CB茂木柊哉(3年)を中心に守備陣も何とか凌いでいたが、勝利が見え掛かっていた後半40分にまさかの失点を喫する。

「プレミアでもあったような形でやられてしまいましたね」と川崎。確かにプレミアリーグでも、横浜FCユース戦は1点リードの後半ATに同点PKを沈められると、柏レイソルU-18戦では、2―0と勝っていた終盤で立て続けにゴールを許し、ドロー決着。今回も嫌な思い出がフラッシュバックしたことは言うまでもない。

 だが、PK戦を迎えた守護神は冷静だった。1人目のキックは決められたものの、方向は合っていた。そして、2人目のキック。「1本目も読みが当たっていたので、相手もちょっと枠に入れてきたかったのか、甘いコースで方向が合っていたので止められました」。両手を伸ばして弾き出すと、チームメイトに向けて左手の人差し指を突き出す。

 3人目。「自分から見て左に来るかなと思っていたんですけど、真ん中に来て、ちゃんとボールを見ていたので、手を残すことができて止められました」。身体は左に流れながら、右手1本でボールを止め切り、今度は右手の人差し指を突き出しながら、力強いガッツポーズを決める。

 そして、4人目。「助走の角度で、『そのまままっすぐ入って蹴ってくるかな』というのがあったので、最後は手を伸ばしたら届いたという感じです。その前から『行けそうだな』というのはありました」。自らの右側に飛んできたキックへ、長身を伸ばして横っ飛びでセーブ。右手を高々と掲げた川崎は、すぐに駆け寄ってきたチームメイトの輪の中に飲み込まれていった。

 これで準決勝進出。プレミアリーグで1勝もできなかった時間があり、今大会も初戦で0-3の完敗を喫したことを考えれば、信じられないような躍進だ。「正直ここまで来られるとは思っていませんでした」と素直に明かした川崎も、「チームの中で変化が起きているのかなと思います。試合の前日に3年生が集まって、『みんな苦しい時に声を掛けよう』みたいなミーティングをしていますし、みんなチームで一丸となって、同じ方向を向いてやっているから、こういう結果が出ているのかなと思います」とチームの一体感を強調した。

 もともとは富山県の出身。中学年代は地元の水橋FC U-15でプレーしていたが、Jユースでのプレーを希望していたところ、指導者の縁もあって参加した練習会で内定をもらい、単身で浦和へ乗り込んできた。

 『北陸の壁』というキャッチフレーズは、クラブのレジェンドから命名されたという。「1年の時にある遠征で、選手の紹介みたいなのがあったんです。その時にユースのコーチだった平川(忠亮)さんが、1人1人に紹介コメントを付けていったんですけど、僕のそれが『北陸の壁』だったんです(笑)。結構気に入っていますね」。文字通り高い“壁”として、ゴールに鍵を掛けるこの男の活躍が、ここから先のチームの浮沈を左右することは間違いない。

「ここまで来たからには優勝を狙いたいですし、この流れや勢いを次の試合に持っていけたらなと思います。ゼロで抑えて勝ちたいです」。

 人呼んで『北陸の壁』。どれだけ攻められても、押し込まれても、浦和ユースの最後尾では、必ず堂々とそびえ立つ川崎が立ちはだかる。

(取材・文 土屋雅史)
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