憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(5/20)
川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。
妻からの鋭い指摘<上>
もう休んだら? 全然楽しそうじゃないし、そんな姿、見たくないんだけど──。
完全休養の勧めだった。
大学4年のときにサッカー部のマネージャーとなり、しばらくしてキャプテンと交際するようになり、やがてプロ選手になった彼と結婚して10年も経つというのに、加奈子は未だにサッカーのことがよくわからない。サッカーについて夫に質問することもないし、夫も「言ったところで、どうせわからないでしょ」と、家ではサッカーの話をしない。
だが、そんな彼女にも、自信を持って言えることがひとつある。
「旦那の試合を見るようになって、さすがに10年以上経ちますからね。彼の調子がいいのか悪いのか、これだけはわかるんです」
彼女の目に映った横浜F・マリノス戦での憲剛のプレーは――酷いものだった。
「しかもケガを押しての出場でしたから。外ではそういう姿を見せないんでしょうけど、家ではずっと“痛い、痛い”って苦しんでいたから、限界なんじゃないかなと思って。だから、“ちゃんと休んで治したほうがいいんじゃない?”って言ったんです」
だが、その提案は当初、受け入れられなかった。
「反論されました。“今、俺が休んだらチームがバラバラになるだろ”って。でも、すでに6試合勝ちなしでバラバラになりかけているし、憲剛までボロボロになったら、この先浮上できない。サポーターだって、“憲剛、どうしちゃったんだ?”って心配していると思うから、“ケガしているのでしっかり治します”って公言したほうが安心するんじゃないって」
サッカーに関して、これまで何ひとつ口を出したことのなかった妻の鋭い指摘は、夫の意地を溶かしていった。
「たしかに冷静に考えれば、自分がチームの足を引っ張っていたし、1週間のうち5日も休んで、前日から合流して試合に出るのは異常。一度しっかり休んで完治させるべきだなって」
検査の結果、左太もも内転筋は軽い肉離れを起こしており、内出血が認められた。
しばらく欠場することが決まった。
(つづく)
<書籍概要>
■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら
▼これまでの作品は、コチラ!!
○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>
○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>
○第2回 待望のストライカー、加入<下>
○第1回 待望のストライカー、加入<上>
妻からの鋭い指摘<上>
もう休んだら? 全然楽しそうじゃないし、そんな姿、見たくないんだけど──。
完全休養の勧めだった。
大学4年のときにサッカー部のマネージャーとなり、しばらくしてキャプテンと交際するようになり、やがてプロ選手になった彼と結婚して10年も経つというのに、加奈子は未だにサッカーのことがよくわからない。サッカーについて夫に質問することもないし、夫も「言ったところで、どうせわからないでしょ」と、家ではサッカーの話をしない。
だが、そんな彼女にも、自信を持って言えることがひとつある。
「旦那の試合を見るようになって、さすがに10年以上経ちますからね。彼の調子がいいのか悪いのか、これだけはわかるんです」
彼女の目に映った横浜F・マリノス戦での憲剛のプレーは――酷いものだった。
「しかもケガを押しての出場でしたから。外ではそういう姿を見せないんでしょうけど、家ではずっと“痛い、痛い”って苦しんでいたから、限界なんじゃないかなと思って。だから、“ちゃんと休んで治したほうがいいんじゃない?”って言ったんです」
だが、その提案は当初、受け入れられなかった。
「反論されました。“今、俺が休んだらチームがバラバラになるだろ”って。でも、すでに6試合勝ちなしでバラバラになりかけているし、憲剛までボロボロになったら、この先浮上できない。サポーターだって、“憲剛、どうしちゃったんだ?”って心配していると思うから、“ケガしているのでしっかり治します”って公言したほうが安心するんじゃないって」
サッカーに関して、これまで何ひとつ口を出したことのなかった妻の鋭い指摘は、夫の意地を溶かしていった。
「たしかに冷静に考えれば、自分がチームの足を引っ張っていたし、1週間のうち5日も休んで、前日から合流して試合に出るのは異常。一度しっかり休んで完治させるべきだなって」
検査の結果、左太もも内転筋は軽い肉離れを起こしており、内出血が認められた。
しばらく欠場することが決まった。
(つづく)
<書籍概要>
■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら
▼これまでの作品は、コチラ!!
○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>
○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>
○第2回 待望のストライカー、加入<下>
○第1回 待望のストライカー、加入<上>