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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(6/20)

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 川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。

妻からの鋭い指摘<下>

 休養を決意した横浜F・マリノス戦から20日後の5月3日、第9節の名古屋グランパス戦で中村はスタメンに復帰した。

 小林悠のヘディングゴールで先制したフロンターレは、後半に入って追いつかれたが、終了間際に新加入の山本真希の弾丸シュートで勝ち越しに成功し、リーグ2勝目を挙げた。

 チームにとってはもちろん、中村にとっても実に大きな勝利だった。

「自分がいない間にリーグ戦で初勝利したのに、自分が合流して勝てなかったら、って考えたら、すごくプレッシャーを感じた。本当にやれるのか、自分がチームに必要な選手なのかどうか、証明しなければいけないゲームだった」

 欠場前の中村は、サッカーをすることに苦痛を感じてしまうほど追いつめられていた。

 そこまで追いつめられたのは、サッカー選手になって初めてだった。

 日本代表で心を折られ、コンディションも整わなくて、心身ともに疲れ果てていた。

 何を目標にすればいいのかわからなくなり、やる気がみなぎってこなかった。

「サッカーをやっていて、あんなに辛い気持ちになったのは初めてかもしれない。録画した自分の試合映像も、全部消しました。こんなの、俺じゃないと思って」

 だが、3週間の休養が、中村にサッカーの楽しさを取り戻させていた。

 グランパス戦では何度もファウルを浴び、ピッチに這わされた。そのたびに中村はピッチを叩いて怒りを露にしたが、同時に愉悦を感じてもいた。

「ファウルされるっていうことは、相手にとって、それだけ危険な選手だと認識されているっていうこと。だから、“これだよ、これ。これこそサッカーの醍醐味だよな”って」

 この頃から、大久保嘉人がフォワードのポジションに固定されるようになり、中村がボランチに収まることで、チームに4-4-2のフォーメーションが定着した。

 ゴールに最も近いポジションで起用されるようになった大久保は、本領を発揮しつつあった。5月11日の第11節、古巣のヴィッセル神戸戦で2ゴールを奪うと、第13節のアルビレックス新潟戦でも2ゴールを決め、得点数を8に伸ばした。

 ようやく2013シーズンの形が定まり、中村の負傷も癒えると、フロンターレはそれまでの不振がウソのように5月の公式戦を5勝2分けの負けなしで駆け抜け、リーグ戦の順位を8位にまで押し上げた。

 J1リーグは5月23日の第13節が終わると、日本代表がワールドカップ予選とコンフェデレーションズカップに出場するため、約1ヵ月の中断期間に入った。

(つづく)


<書籍概要>

■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら

▼これまでの作品は、コチラ!!
○第5回 妻からの鋭い指摘<上>

○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>

○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>

○第2回 待望のストライカー、加入<下>

○第1回 待望のストライカー、加入<上>

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