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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(9/20)

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 川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。

めぐってきたチャンス<上>

 4日後の対戦相手は、初戦でメキシコを2-1で下したイタリアである。

 2戦目に臨むにあたり、メンバー変更は最小限に留められた。ブラジル戦にセンターフォワードとして出場した岡崎慎司が従来の右サイドハーフに戻り、清武弘嗣に代わって前田遼一が1トップのポジションに入った。

 万全の準備をしていた中村だったが、先発出場への期待は抱けずにいた。紅白戦ではずっとBチームに入り、イタリアのキーマン、アンドレア・ピルロの役割を演じさせられていたからだ。

 しかも、ブラジル戦では2点ビハインドの状況で、遠藤保仁に代わって守備的ミッドフィールダーの細貝萌が投入されていた。

「負けているのにハジ(細貝)が投入されるし、圭佑がいなくても真司がトップ下に入る。だったら、どうすれば、出られるのか……」

 そう思いながらも集中を切らさず、準備していたことが評価されたのか、イタリア戦でめぐってきた出場機会は、珍しいケースだった。

 前半21分、本田圭佑のPKで先制した日本は33分に香川真司のゴールでリードを2点に広げた。しかし、41分、後半5分、7分と立て続けに失点し、逆転されてしまう。

 それでも24分、岡崎が渾身のヘッドで同点ゴールを決めたが、41分に4失点目を許し、3-4のスコアで後半のアディショナルタイムに突入する――。

 中村が投入されたのは、そんな時間帯だった。

 1点ビハインドの残り2分で起用されるケースは、これまでにないものだった。しかも、長谷部誠に代わってボランチで――。

 やるべきことは、ひとつしかなかった。

「マイクが出ていたし、ボールに触れるチャンスは1回ぐらいしかないと思っていた」

 左サイドでボールを受けると、すぐさまゴール前で待つ身長194センチのハーフナー・マイクに向けてクロスを放り込んだ。

 だが、これはゴールキーパー、ジャンルイジ・ブッフォンのパンチングによってコーナーキックに逃れられてしまう。

 タイムアップの笛が鳴ったのは、その1分後のことだった。

「今日に関して言えば、そこまで大きな差はないと思うんです。それが大きな差っていう人もいるでしょうけど、日本が勝った可能性もあるわけで。みんな、手応えは感じていると思います。やれた分だけ、ショックが大きいです」

 2敗目を喫した日本のグループステージ敗退が決定した。だが、強豪国と真剣勝負をする機会に恵まれない日本にとっては、消化試合など存在しない。3日後のメキシコ戦も重要なゲームになりそうだった。

(つづく)


<書籍概要>

■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら

▼これまでの作品は、コチラ!!
○第8回 コンフェデレーションズカップ、開戦<下>

○第7回 コンフェデレーションズカップ、開戦<上>

○第6回 妻からの鋭い指摘<下>

○第5回 妻からの鋭い指摘<上>

○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>

○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>

○第2回 待望のストライカー、加入<下>

○第1回 待望のストライカー、加入<上>

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