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村松に飛びかかったGK権田「どれだけみんなが強い気持ちを持っているか」

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[7.11 キリンチャレンジ杯 U-23日本代表1-1U-23ニュージーランド代表 国立]

 ロスタイム、まさかの失点を喫したU-23日本代表は、3万1307人の観客が見守った試合を1-1で終えた。会場に微妙な雰囲気が流れる中、GK権田修一がMF村松大輔に掴みかかって行った。失点の場面、発端は村松のミスだった。パスの出し所を見つけられずに、手詰まりとなったところで相手にボールを奪われる。そこからカウンターを受けた日本は、同点に追いつかれてしまったのだ。権田が村松に勢いよく向かって行った場面では、叱責していたように見えた。だが、権田は村松のミスを責めていたわけではなかった。「ミスはあるものですから」と話す権田は、何を伝えていたのか。

「あの状況ではテレビでも大輔の表情を撮られています。今日は壮行試合という状況で、多くの人も入ってくれていました。それに選手も見ています。だから『こういうときの振る舞い、表情が大事だよ』と。ヘラヘラしているのが一番良くないと思いますが、あの時は『どうしよう』という顔をしていたから。あれで『権田、何をやっているんだよ』と言われた方が、『大輔が凹んでいたよな』と言われるより、僕は気が楽です。変な表情をしていたら、一番損するのはアイツなので。だから、別に喧嘩をしたわけではないですよ」

 もう一つ、今後の村松自身のパフォーマンスも気にかけていたという。週末のリーグ戦を終えて、このチームに戻ったとき、村松がこれまでと同じプレーができるように心がけてほしいと伝えていたという。

「(村松は)所属チームでもアンカーでプレーしていて、つなぎにも参加しない。このチームに次に来たとき、ボールを受けられるか。それとも隠れてしまうのか。僕もシリア戦のときにミスをした。でも、また戻って代表でプレーしました。そういう話もして、『今回も一度、代表は解散するけど、戻ってきたときのプレーが大事だよ』という話はしました。大輔はハングリーさもあるし、切り替えてくれると思います」

 誰もが『村松のミス』と分かる失点だった。だが、それを個人の責任で終わらせるか、それとも一人ひとりが課題と捉えるか。そこがロンドン五輪で結果を出せるか、出せないかの分かれ目になるだろうと権田は言う。

「『あれでミスったら、無理だよ』と思う選手がいて、そこで片付けてしまうのか。それとも、2点目が取れなかったことを悔やむのか。失点の場面でも、大輔はパスを出すところがなくて迷っていました。あの状況でサポートできなかったことを悔やんでいる選手がいるか。僕にしても、あのシーンで止めるのが僕の仕事なので。止められなかったことを考えないといけません。それ次第で、いくらでも変わってくると思います。いくらでも良くなってくる可能性もあるし、何も積み上げられない可能性もある。このチームがロンドンで何をしたいか、ロンドンでどこまで行きたいか。どれだけみんなが強い気持ちを持っているかだと思う」

 ロスタイムの失点で、国立は壮行ムードからは程遠い雰囲気になってしまった。それでも、権田は目前に控えている大舞台に臨むチームに、希望を見出せている。

「みんなと終わってから話した感じは、『大輔、なんで?』というよりも、『2点目を取れなかったオレらが悪い』という感じでした。だから、あまり心配はしていません。その気持ちの持ち方次第で、いくらでも変わってくるんじゃないかなと思うし、そういうスタンスで積み重ねていければ、どこまでも行けるんじゃないかなと思う」

 7月7日、七夕の短冊に『金メダル』という4文字を書いた守護神は力強く、そう話した。

(取材・文 河合拓)

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