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U-23日本代表DF酒井高徳インタビュー「メダルを取りにいかないといけない」

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 2011-12シーズン、ドイツでは数多くの日本人選手がプレーした。その中で最も評価を高めた選手の一人と言っていいのがU-23日本代表DF酒井高徳だ。今年1月にシュツットガルトに加入すると、瞬く間にチームのレギュラーに定着。左右両SBを遜色なくこなすスペシャリストは、前への推進力を武器とするチームに欠かせない存在となった。移籍後わずか半年で現地メディアから「酒井を帰化させてドイツ代表に入れろ!!」という声が挙がるまでに高まった評価。なぜ、酒井はそこまで活躍できたのか。そして、目前に迫ったロンドン五輪に向けての決意は? ゲキサカが酒井を直撃した。

―ドイツでのシーズンを振り返っていかがですか?
「本当に充実していましたし、自分の中で自信を持てた半年だったかなと思います」

―通じた部分や、逆に驚いた部分は?
「パス回しの部分でチームを落ち着かせることができましたし、日本特有のボール扱いの良さというか、キックの精度、ボールの持ち方。そういうところは非常に通用したと思います。逆に自分のウイークポイントである守備の部分では1対1でやられたり、危ないシーンをつくられたり、そういう課題は試合ごとに出てきましたし、自分でも感じたところですね」

―新潟はパスを回すスタイルではなかったように思えますが?
「新潟では前に(チョ・)ヨンチョルがいたので、サポートや追い越す動きが多かったので、自分が(ボールに)触る機会は少なかったですね。でも、自分の中ではポゼッションは好きだったんです。ボールをつなぐことに関しては非常に好きだったし、もう少しつなぎたい、もうちょっとパスを回したいという気持ちはありました。そのプレーを出せずにいた感じは正直あったので。でも、自分の力の出し方がチームのスタイルによって違うのは当然だと思います」

―シュツットガルトでは自分が描いていた形に近かったということですか?
「シュツットガルトに来て、すぐに感じたのは一人ひとりの力強さ。選手はすごいなと思いました。でも、ボールの失い方が良くなかったり、チームがバランス悪く攻めているなと、試合に出場していなかったときに感じていました。ボールをもう2、3回くらい回してから逆に展開した方がいいかなと思ったり、取ったボールをあまりにも前に前に単調に運び過ぎて、リズムもバランスも悪い印象が強かったので。岡崎(慎司)さんも『落ち着くところがない』と言っていたので、自分が出たらそういうプレーは意識したいなと思っていました。ポゼッションに関しては得意としていたというか、僕は右足も左足も使えますし、新潟にいたときから自信を持てていたので。実際、試合でもそこは通用しましたし、できるなと思いました。僕のところでボールが落ち着いているから、周りもどんどんボールを回してくれましたね。2、3試合目ぐらいで『チームで一番コンタクトが多いよ』と言われたので、あらためて自分のところで『ボールを収めたいな』『安定させて、より前に攻撃の力がかかるようにしたいな』と思いました」

―『コンタクト』とはボールに触る回数のことですか?
「そうです。向こうで取材を受けたとき、『チームで一番多い』と言われたんですよ。毎試合そういうデータが細かく出ているみたいです。だれが一番走っていて、だれが一番コンタクトが多いかとか」

―縦の意識が強いチームでSBが落ち着かせるというのは面白いですね。
「縦に行くのも良いとは思うんです。迫力がありますし、シュツットガルトが結果を出せたのも、縦に行けて点が取れるからだと思うんです。ただ、そういうときとそうではないときを、自分のところで使い分けられたらなと。自分のところでボールを奪ったなら、一番はカウンター。ゴールに近いところに出していくことを考えながらやれば、速い攻撃はスムーズになってきます。ただ、ボールが上手く回らないなっていうときに、どこでボールが落ち着くかとなれば、自分のところで落ち着かせたいと考えていました。僕の前に岡崎さんがいたことも心強かったと思います。最初から考えを共有できた唯一のところだったので。デビューしたときに、前が日本人で良かったなと感じましたね」

―ベンチで3試合見てからデビューしましたが、その3試合で問題点を感じ取ったんですね。
「極端な間延びとかがあったので。もう1本横パスを入れるとか、ボールを持てる選手がいるんだから、落ち着かせて、急がずに待っていればいいのになと思っていました。周りに聞いたら『これがドイツのサッカーだから』と言われたので、最初は『そうなのかな』と思っていたんです。でも、バイエルン戦をスタンドから見ていたのですが、やっぱりバイエルンには落ち着きがあったし、全体をうまく使っている。行くところ、行かないところ、リベリを見ていてもハッキリしていたので、『やっぱりそういうのは必要だよな』と思って見ていました。『強いチームはこうだよな』と思いましたね。日本でやっていたことも間違ってなかったとあらためて思いました」

―どこが監督に評価されて出場できたと思いますか?
「難しいですね。“これ”というのはなかったと思います。最初は左SB(モリナーロ)が3試合出場停止になって、僕を選択するしかなかったんだと思いますが、そこで期待に応えられたことが一番良かったと思います。これっていうプレーではなく、チームとしてやれたこと。チームが勝ってくれたことが自分にもプラスにもなりましたし、終盤になればなるほど、チームの中で自分がボールを落ち着かせたり、自分のいるサイドから攻撃できたことで自信にもなりました。でも、最初のころはチームがたくさん点を取ってくれて、勝ってくれたことが、今の自分につながっていると思うので、チームメイトや監督に感謝している気持ちが強いですね」

―試合に出てからの順応はすごかったですね。
「自分でもなぜかは分からないんですが(笑)。監督がミーティングでこういうサッカーをしたいと話したり、対戦相手によって求めるプレーを変えたりするので、そこは心がけました。監督がチーム全体に言っていることを常に頭に入れながらプレーしていたんです。『ここにスペースがあるから、ここを突け』と言われたら、そういうプレーを狙いましたし、左右にかかわらず『こういう選手がいるから、こういうプレーをしてほしい』と言われたら、それを意識して。だから、本当に簡単に言ってしまうと、監督に言われたことをやっているだけです(笑)。シンプルなことですが、それができる技術やキックの精度、判断力は、日本でやってきたことがすごく生きたなと思いました」

―日本人は言われたことをこなすのが得意です。それもドイツで多くの日本人が活躍できている要因になっていると思いますか?
「本当に大きいと思います。(香川)真司くんとかは、その中でいかに自分を出せるかというところで、これだけの結果を出したと思います。そういうところは見習いたいなと。いつまでも言われていることをやるだけではダメだと思いますし、シーズン終盤は『自分のやりたいことを出していきたい』と思っていました。それが結果にもつながりましたし、言われたことをやりつつ、いかに自分を出していくかを次のシーズンは意識したいなと思います」

―終盤は酒井選手が試合に出続けた一方、岡崎慎司選手がベンチにいたこともありました。
「慎司さんは、コンディションの部分でケガもあったので。本人もすごく悔しがっていましたね。でも、普通に考えたら一つのチームに日本人が2人いることはあまり考えられないこと。だから、慎司さんが出られなくなったときは『いないからこそ、どれだけ自分を出しながらプレーできるか』というのを意識していました。慎司さんがいてくれると、自分の考えているイメージを共有できる選手なので楽なんですよね。だから、いなかったときにチームが勝ったり、アシストして勝利につなげられたときは自信になりました。『いないときにどれだけできるかだよ』って岡崎さんにも言われていましたからね。『俺が助けられるのは分かっていることなんだから、お前の成長のためにも、俺がいつまでもここにいるとは限らないし、お前もこの先どこに行くか分からないわけだから、一人でどこまでできるかは大事なことだぞ』と。そうだよなと思いながらやっていましたし、そこで結果を出せたのは自分の成長や自信につながったと思います」

―香川選手の話がありましたが、来シーズン、プレミアリーグで活躍できると思いますか?
「できると思いますよ。でも、プレミアのスピード感は速いなと思いますし、個の威力も半端じゃないので。連係の部分は、香川くんが入ると面白そうだなと思いますし、香川くんがどこまでできるか、どれくらい通用するかは、サッカーをやっていない人でも楽しみだと思うので。僕も楽しみにしている一人ですし、プレッシャーをかけるわけではありませんが、香川くんの活躍次第で日本人がどこまで行けるかを示すことになると思います。そういう意味では同じブンデスリーガでプレーしていた日本人選手として頑張ってほしいなと思います」

―酒井選手はドイツ国内でラームに例えられていましたね?
「うれしかったですね。実際に参考にしているところもあるので。ボールの持ち方だったり、両足を使えるならではの(攻撃の)組み立て方は、非常に勉強させてもらっています。小柄ですし、体もそんなに強いわけではないのに守備でやられているイメージもそれほどないので、どういうところで対処、対応しているのかは見ていますね。体が弱いなりの1対1の仕方だったり、ポジショニングの取り方だったり、すごく勉強したいと思いながら見ています」

―『ドイツに帰化させよう』との報道もありましたが?
「本当にビックリしましたね。何の冗談を伝えているんだと思いましたし、向こうの反応はすごいなと。『帰化させよう』なんて、日本では簡単に言えないじゃないですか。自分が評価されたこと、自分の存在がドイツ中に知られたことも含め、うれしいな、認められたなという気持ちは持てたので、自信にもなりましたね」

―ハーフということで現地でも最初から注目されていたんですか?
「いや……。僕が来たこと、知っていたんですかね? シュツットガルトの人は『なんか日本人が来たぞ』ってなっていたと思いますが、最初はそんなになかったですね。そういう評価をしてもらえるプレーをできたことは良かったです」

―報道が出て、EUROに出る自分を想像したりは?
「いやいや(笑)。でも、ドイツ代表の試合を見ていて、もし帰化していたらここに出ていたかもしれないと思ったら、すごい大会に出られるんだなとは思いましたね。そうなっていたらすごいなと思って見ていました」

―EUROを見て『俺だったらマリオ・ゴメスにこういうパスを出せていた』とか?
「いやいや、そんなことは考えないですよ(笑)。でも、それだけすごいことを言ってもらえたんだなと、大会を見ていて思いましたね」

―将来的にビッグクラブへという思いはありますか?
「僕はそんなに『このリーグでやりたい』『このチームでやりたい』というのはないのですが、シュツットガルトは非常に自分に合っていると思います。先ほど『順応できた』と言っていただけましたが、自分のプレースタイルがチームに合っているから、自分の良いところを出せているんだと思います。自分に合ったチームでサッカーをしたいというのが、自分の一番の本音なので。すごいチームに行きたい、すごい選手になりたいという思いはサッカー選手としてありますが、一番自分の力が発揮できるチームでやりたいなという気持ちです」

―出場した試合が9勝3分2敗。素晴らしい結果です。
「僕が入ったから、という部分もあるかとは思いますが、FWのべダド・イビセビッチが入ったのもデカいと思います。彼も僕と近い時期に入団してきましたが、2人でコミュニケーションも取れたので。アシストした場面を振り返っても、こういうところを狙っているよというコミュニケーションが取れていたので、2人でチームにいい影響をもたらせたことは光栄に思いますし、自信にもなりました」

―何語でコミュニケーションを取っていたんですか?
「ドイツ語ですね。(シュツットガルトに)行くまでは、母と少し話せるぐらいでした。でも、聞くことに関しては最初からそんなに不自由はありませんでした。ミーティングも最初は通訳がいましたが、今はほとんど分かりますね。まだペラペラではないのですが、サッカー用語だったり、自分の伝えたいことだったりは、ある程度伝えられるようになったので不自由は感じません。『俺はこういうところを狙っている』とか『こういうプレーがしたい』とかは伝えていますし、イビセビッチにアシストした場面も、前の試合のときからそういうところにボールを入れるからと伝えていたので。向こうからも『クロスは相手の間に入れてくれ』とか『ワンタッチで入れてくれ』とか、『合わせなくていいから、アバウトでいいから上げてくれ』と言われました。そういうコミュニケーションが取れたのは強みかなと思います」

―ドイツ語は岡崎選手よりも自信を持っている部分ですよね?
「(岡崎は)頼っているんですよ、通訳がいますから(笑)。僕は自分でしゃべりたい。人を挟んで話すのは相手にも失礼だと思うし、自分としても情けないというか。ブラジル人が日本に来ても日本語を覚えていましたし、ヨンチョルも日本語ペラペラなので。僕も早くドイツ語を覚えるようにしないとと思いましたね」

―日本にいたときもブラジル人とよく話していたんですか?
「日本にいたときはブラジル人と話をしていましたし、ドイツに行ってもチームメイトとよく話をしていましたね。いろいろ話を聞きたいと思いますし、普段の会話をしたいなという気持ちが強いんです。そのためには語学が必要ですし、しゃべれるようになりたいと思っています。だから『これはなんて言うの?』とか『こういうときはなんて言うの?』とか、どんどん聞きますよ。そういうのがコミュニケーションにつながっているし、新しいことを学ぶことが僕は好きなんでしょうね」

―現在は期限付き移籍です。完全移籍に向けては?
「向こう次第ですね。早く完全移籍にしてくれれば、僕の気持ちも安らぎます(笑)。簡単に日本に帰りたくはないですし、もし万が一、シュツットガルトがダメになっても次を探してやりたいです。日本に帰るつもりはしばらくないです」

―スパイクにはどういうことを求めていますか?
「僕は軽さを重視しているので、『adizero F50』は軽くて、あまり履いた心地がしないのは素晴らしいですね。より裸足に近い感覚でいたい僕にとっては、足が動くと同時に負荷なくスパイクが一緒に動いてくれるので、ボールのインパクトのときに良い感触を与えてくれますね。シューズを履いてないくらいの感覚でボールタッチができています。軽いから疲労も軽減されますし、本当に自分の力になってくれています」

―クロスを上げるときは?
「足のちょっと先に当てるか、手前に当てるかでインパクトに違いを出したりするのですが、しっかりとインパクトを伝えてくれるので、狙いどおりのボールを出せます。クロスの精度はスパイクにかかわる部分も大きいと思うので、非常に助かっています」

―海外で多くの経験を積み、五輪代表にも呼ばれました。
「自分がやってきたことはこういうことなんだと、良い部分はみんなに伝えられればと思います。一方で、自分の課題は課題としてあるので、自分の中で直さないといけないし、チームのマイナスにならないようにしないといけません。トゥーロン国際大会では良いところも出せたし、悪いところも出てしまったので。今回のトゥーロンでトルコ、エジプト、オランダという今まで戦っていないアジア以外の国と対戦することで、個々が感じたこともあると思います。僕はトルコやオランダのような選手たちとドイツでやっているので、そんなに違和感なく試合はできました。でも、五分のボールだったり、ボールの持ち方、守備の対応でちょっとしたところでシュートまで持って行かれたりするのは感じたので。チームとして、すごく良い経験になったと思います」

―トゥーロンではサイドからやられるシーンもありました。
「しっかり直していきたい部分ですし、すごい力を入れている部分でもあります。オリンピックに向けても、ドイツでの来シーズンに向けてもやっていきたいところです。ただ、サイドを崩されているといっても、一概にSBのせいだけではないと思いますし、CBとのコンビネーション、ボランチ、サイドハーフもかかわってくる。そういうところで直せる修正点はいくつもあったと思います。試合後にビデオを見てもそういう部分はありましたし、感じたことを互いに言わないと直っていかないと思います。メンバーに選ばれたときは、そういうことはしっかり伝えて、チームとしてやることを決めてやらないといけないと思っています」

―ロンドン五輪、そしてドイツでの来シーズンに向けての意気込みを聞かせてください。
「ドイツに行って、いろんな自信をつけて帰ってきましたが、まずはそれを継続すること。そして結果を伸ばしていく。それはドイツでもやっていきたいですし、自分をもっと出して、よりチームの力になれるようにやっていきたいと思っています。五輪は、メダルを取りにいかないといけないと思います。簡単なことではないと思いますが、取れると信じて、チームとして一つになってやっていくしかない。そこはしっかりやって、メダルを取りたいと思います」

―オリンピックではシューズの外に刺繍はできないですが、中に文字を入れたりは?
「それ、いいっすね! 僕は家族もいますし、ドイツでも一人で戦っているわけではないので。いろんなことを背負ってやっているわけですから、そういう思いも込めて、家族の名前だったりをスパイクに刻んで戦っていきたいです」

(取材・文 河合拓)

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