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泣き崩れたキャプテン…宮間「ありがとうの一言しかない」

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[8.9 ロンドン五輪決勝 日本1-2アメリカ ロンドン]

 試合終了の瞬間、思わず天を見上げた。チームメイトと抱き合い、健闘を称えあったあと、MF宮間あやはピッチに倒れ込んだ。あふれる涙。仲間が引き起こそうとしても、なかなか立ち上がることはできなかった。最後にピッチで円陣を組む中でも嗚咽を漏らし、チームメイトに支えられた。

「試合に負ければ悔しいと思う」。短い言葉に、率直な思いがあった。「金メダルを取ること以外、考えたことはない」。試合前日には、そう語っていた。あと一歩のところで届かなかった夢。「自分たちができることはすべてやったと思うので、みんなで取った銀メダルだと思う」。結果に納得はしても、満足することはできなかった。

 今年2月、MF澤穂希の後任として新主将に指名された。昨年の女子W杯で世界一に輝いたチームのキャプテン。プレッシャーがなかったはずがない。本人はこの日も「特にないです」と否定したが、周囲はその責任感や重圧を感じ取っていた。

 試合後、号泣する宮間の肩を抱き、励まし続けたFW大儀見優季は「(宮間)あやはこの大会、いろんなものを背負いながら戦っていて、いろんな思いがあったと思う。プレーだったり言動を見ていて、そういう風に感じることは多々あった。本当はいつもどおりやってほしかったという思いもあったけど、そうなってしまうのがあやのいいところでもあるので」と言う。

 この日も、らしくないパスミスからピンチを招くシーンがあった。大会直前に左サイドから右サイドへポジションが変わり、慣れないサイドでのプレーを余儀なくされた影響もあるだろう。「彼女なりに左サイドの方がイメージしやすい部分もあったと思う。右サイドでちょっとしっくりこない中でもフォアザチームでやってくれたし、ピッチの外でもチームワークをコントロールしてくれた。彼女がピッチ内でもピッチ外でもよくやってくれた」。そう感謝する佐々木則夫監督は「彼女自身が僕よりも一番疲れたと思うし、僕自身感謝している」とねぎらった。

 それでも、準決勝・フランス戦(2-1)で2得点を演出したFKなど、正確無比な右足はチームを何度も救い、初めてファイナルまで導いた。日本女子サッカーが五輪で獲得した初のメダル。それがたとえ金ではなく、銀であったとしても、その輝きはかつてだれも手にすることができなかった宝物だ。

「ここまで来れたことに、スタッフはじめ自分の仲間に感謝している。ありがとうの一言しかないです」。繰り返すチームメイトへの感謝の言葉。キャプテンとしての重圧とも闘いながら成し遂げた五輪での銀メダルは、宮間自身もさらなる高みへ導くはずだ。金メダルへの挑戦はこれで終わりではない。泣き腫らした目で笑顔も見せた表彰式。夢の続きは、4年後のリオデジャネイロ五輪まで取っておく。

(取材・文 西山紘平)

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