beacon

先輩超え目指す「96JAPAN」、「横綱相撲で世界切符を獲る」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 13年U-17W杯アジア最終予選、AFC U-16選手権イラン2012に出場するU-16日本代表は、同大会へ向けた国内最終合宿である千葉県合宿最終日の29日、午前午後の2部練習を行い、合宿を打ち上げた。

 アジアを横綱相撲で突破する。94年生まれ以降の世代で結成された通称「94JAPAN」は11年U-17W杯で世界8強入り。今回アジアを戦う96年生まれ以降の世代「96JAPAN」の目標は「94JAPAN」超え、そして先輩たちが成し遂げることのできなかった「世界でファイナリストになる」ということだ。アジア最終予選では、3位で突破した「94JAPAN」以上の成績を残すこと。そして「運もあったし、どっちに転ぶか分からない試合もあった」(吉武監督)という2年前以上の内容で勝ち進むことで、より高い意識・実力を持って「世界で舞う」という目標に近づいていく。

 「94JAPAN」から引き続き「96JAPAN」の指揮を執る吉武博文監督は、アジア最終予選へ向けて「横綱相撲で世界切符を獲る。横綱というのは圧倒するというだけではなく、何があっても落ち着いて対処できるとか、相手の意表を突くことであってもドンと受け止められるということ。横綱は確率的には優勝すると思いますが、負けるときもある。でも負け方に風格がないといけないし、リスペクトされなければいけない」。サッカーではブラジルでも、スペインでも負けることがある。だが例えアジア予選で敗れることがあっても日本の強さを示すこと。ライバルたちを圧倒することができれば最高だろうが、決して余裕でアジアを突破できるとは考えていない。ただ「終わってみたら日本だったね、という風に内容を取りたい」と指揮官が語るように、相手がどんな戦術を取ってきても動じず、僅差でも相手を上回る横綱として白星を重ねるつもりだ。

 横綱という意識でピッチに立つチームは慌てることなく、選手たち自身で問題解決していく。この日は午前午後ともに11対11のゲーム練習を実施したが、声がよく出る印象だ。午前練習の前半は縦パスでディフェンスラインの背後へ抜けだしたFW北川航也(清水ユース)が鮮やかな左足シュートを決めると、後半には左SBとしてプレーしたコーチングスタッフのスルーパスからFW杉森考起(名古屋U15)の折り返しをMF伊藤克尚(広島ユース)がゴールへ押し込む。MF水谷拓磨(清水ユース)とFW青山景昌(名古屋U18)のパス交換など10本以上のパスを通して奪ったゴールに沸いたイレブン。どの点が良かったからゴールが生まれたのか全員がすかさず考える雰囲気と、良かったプレーを全員で讃える明るさがあった。

 判断力は特に重視されている部分だ。チームは「ネクスト」「ポケット」「広い方」といった「96語録」と呼ばれる10以上のメッセージを作成。11人全員がピッチ上で相手の動きを予測し、弱点、スペースを探し、次のプレーの判断を明確化した声でサポートする。今夏、柏U-18の日本クラブユース選手権初優勝に貢献しているDF中谷進之介は「(96語録は)分かりやすいし、みんなが使えるようになってきた。でもそれが試合で出ないと、いいプレーができていないのでもっと声を出していきたい。(加えてカレーパーティーやグループワーキングを実施するなど)チームで目指している方向、一体感はこの合宿で大分生み出すことができたと思う」。チームには吉武監督も「94の時の世界大会の雰囲気が前倒しできている」と認める雰囲気がすでに備わっている。

 午後のゲーム練習では1本目に中谷の展開から右サイドのFW小川紘生(浦和ユース)が中央へ折り返し、青山がゴールへ押し込む鮮やかなゴールが生まれ、2本目にはキックオフから相手の隙を逃さなかったMF三好康児(川崎F U-18)が無人のゴール目掛けてフィードを蹴りこみ、北川が押しこむビッグプレーもあった。果敢に中央から仕掛けたMF杉本太郎(帝京大可児高)が左足シュートをゴールへ突き刺すなど、本番まで1か月を切ったアジアでの真剣勝負へ向けてモチベーションも上々。青山は「アジアで優勝して世界に行けたらいい」と口にし、日本代表DF酒井高徳を兄に持つDF酒井高聖(新潟ユース)は「自分たちのやるべきことをやれば。94より上に行けるか分からないですけど、目標としては94より上、世界の頂点を目指して頑張っています」。

 チーム発足から計158名を招集した「96JAPAN」。その代表であるアジア最終予選メンバーが世界切符を獲得すれば、96年生まれ以降の選手全てに世界で戦うチャンスが出てくる。彼らの可能性を広げるためにも負ける訳にはいかない。96世代を代表するU-16日本代表が横綱相撲で世界切符を獲る。

(取材・文 吉田太郎)

TOP