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プロ入り後、初スタメンのF東京 DF丸山「鼻の下を伸ばすのは今日まで」

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[9.5 ナ杯準決勝第1戦 F東京2-1清水 味スタ]

 試合会場に向かうバスの中から、チームメイトにイジられていたという。今シーズン、明治大からFC東京に新加入したDF丸山祐市は、これまでリーグ戦の柏戦に途中出場し、17分にプレーしたのみだった。CBでプレーしていた高橋秀人が日本代表に招集されたこともあり、この試合に初めてスタメン出場することになった。「みんなからバスの中やアップ中に『緊張するなよ』とか、『コイツ緊張してるよ』ってイジられました。でも、それで、すんなり試合に入れました。良い緊張感を持って、楽しみながらできたので良かったです」と笑顔で語った。

 立ち上がり3バックの左に入ったが「マークをうまく捕まえきれなかった」とMF梶山陽平が語るように、立ち上がりは後手を踏む場面が目立った。前半23分にはオウンゴールから失点すると、即座にポポヴィッチ監督が動いた。「チームが寝ていた。カツを入れる意味でも選手交代をした」という指揮官は、DF椋原健太に代えて、MF田邉草民をピッチに送り出した。「布陣を4-2-3-1に変更するための選手交代だった」と説明する指揮官は、椋原と丸山のどちらかを変えるか考えた末に、丸山を残したと明かす。

「椋原は連戦で疲れがたまっていたこと、そして今日の丸山は、何かをやってくれそうだと思ったので残しました。また、もし丸山を代えていたら、初の先発で途中交代となり責任を感じてしまっていたかもしれません。そうなったら私たちは、長い期間、彼を失うかもしれなかった」

 丸山をピッチに残す選択は、当たった。後半35分、丸山は最終ラインの背後に走り込み、梶山からのパスを受けると、DFに倒されてPKを獲得する。「練習中からSBの選手の動きを見て学んでいました。SBに入ったときは3人目の動きを意識してやっていますし、梶山くんも良い所にパスを出してくれました。PKは誰でも取れたというか、他の選手だったら、もしかしたらそのままシュートとかアシストできていたかもしれない」と、謙虚に語った。

 初のフル出場を果たし、決勝点につながるPKを獲得した。だが、自己採点は「70点」と言う。「最後に足を吊ってしまいましたし、やっぱり守備の選手としては、最後まで守り切らないといけない。でも、足が動かないところがあったので、おまけで70点です」。

 それでも中学生の頃、自身もスタンドから応援していたという味の素スタジアムでプレーできたことで、新たな欲が出たという。

「味スタは最高ですね。これまでは上から応援していましたが、やっと応援してもらう立場になれました。もう一度、このスタジアムでやりたい、このピッチでプレーしたいという気持ちが芽生えたので、また明日からアピールしたいと思います」

 試合後の会見で、ポポヴィッチ監督はひとしきり丸山を褒めたあとに「ほめ過ぎてはいけない。まだ実質1試合しかプレーしていないのだから」とメディアに釘を刺したが、丸山が浮かれる心配はなさそうだ。「ポポさんは若手が浮かれることには敏感ですし、僕は大卒なのでその辺は分かっているので。鼻の下を伸ばすのは今日までにして、また明日からは天皇杯に向けて、アピールしていきたいと思います」と笑顔で語った。ナビスコ杯の準決勝も、まだ初戦が終わっただけ。ルーキーが心から喜べるタイミングは、まだまだこの先、何回も訪れるはずだ。

(取材・文 河合拓)

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