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F東京の猛攻を凌いだ横河武蔵野GK飯塚「明日は会議なので気が重い」

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[9.9 天皇杯2回戦 FC東京 0-1 横河武蔵野 味スタ]

 試合が終わってからも、まだ信じられない様子だった。天皇杯2回戦でJFLの横河武蔵野が前回王者のFC東京に1-0で勝利した。後半ロスタイムにMF岩田啓佑のゴールが決まった瞬間、GK飯塚渉は「何が起きたか分からなかった」と語る。この日、横河武蔵野のシュートは4本。依田博樹監督が「攻撃のイメージは持てなかった」と正直に明かすように、ボールを相手に保持され続け、3倍以上の13本のシュートを打たれていたのだから無理もないだろう。

 攻撃のイメージは持てなかった横河武蔵野だったが、守備に関しては手応えがあった。「天皇杯の1回戦に勝って、その次の練習からこの試合に向けてフォーメーションを変えて練習してきました」。しっかりと最終ラインの5人と中盤の4人でブロックを築き、F東京の攻撃に加速させるスペースを与えない。その上で局地的に数的優位が出来たらボールを奪いに行く守備は、前回王者を十分に苦しめた。

 だからこそ、ハーフタイムのロッカールームは平穏だったと飯塚は言う。「いつ打開されるか怖い面もありましたが、緊張せずに守れました。手応えをつかめたので、ハーフタイムも穏やかでしたね。みんな『疲れたな』とか『あと45分もあるのか』と言っていました」と振り返る。

 ただし、後半は前半以上に難しい展開を強いられた。F東京が後半開始と同時にMF梶山陽平、後半11分にはFWルーカスを投入してきたことで、攻撃に変化が生まれた。「ちょっと大変なことになってきたなと思いました」と、飯塚は吐露する。「外国人選手がいるだけでもビビるのに…。それでも動揺せずに、DFは思っていた以上に良く対応してくれました。シュートをしっかりとブロックしてくれたから、ほとんど来ませんでしたが、J1はシュートスピードや足の振り方、レベルが違いますね」

 サッカー選手として、上を目指すのであれば『プロ』という選択肢が出てくるだろう。横河電機で環境庁向けの営業をしている飯塚は、火曜、水曜、木曜、金曜の練習のうち2日しか出られないこともあるという。だが、「今はプロになることまで考えていない」と言う。「家庭もあり、子供も生まれました。それでもサッカーができる幸せを感じています。今はプロという考えはなく、アマチュアで頑張りたいなと。こうやってプロを倒すことを目標に、やっていきたいと思います」。

 明日になれば、横河電機の社員に戻る守護神は「明日は早速、会議なんですよ。気が重いです」と冗談を飛ばしつつし、「あくまで仕事がメインですからね」と笑顔を見せた。明日の会議に出ている人がこれを読んでいれば、ぜひ「おめでとう」と言葉をかけてほしい。前回王者を倒し、しっかりと全国に『横河』の名を広げるという、営業をしてきたのだから。

(取材・文 河合拓)

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