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鹿島DF岩政「救いはサポーターがブーイングしてくれたこと」

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[9.15 J1第25節 川崎F 2-2 鹿島 等々力]

 9勝6分10敗。25節の対戦で、2-2と引き分けた鹿島アントラーズ川崎フロンターレは、勝敗数が全く同じである。しかし、試合後のサポーターの反応は正反対だった。拍手と声援を送った川崎Fのサポーターに対し、鹿島のサポーターは選手たちにブーイングを浴びせた。理由は一つではないだろう。この試合で同点に追いついた川崎Fに対し、鹿島は同点に追いつかれた。連敗を2で止めた川崎Fに対し、鹿島は連勝できなかった。だが、そういった結果だけでなく、クラブのアイデンティティを示す反応だったように感じられた。選手の受け止め方はさまざまであり、どちらが正しいという問題でもない。その中で、鹿島のDF岩政大樹は、ブーイングをしたサポーターに感謝した。

 前半17分までにFW興梠慎三のゴールで2点をリードした鹿島だったが、前半19分にDF實藤友紀で1点を返されると、後半33分にもMF大島僚太のゴールで同点に追い付かれた。失点の仕方は酷似している。後方から攻撃参加した選手をつかまえることができず、ゴール前でフリーの状態をつくられた。トップスピードでPA内に侵入されれば、いくら日本代表DFといえども、できることは少ない。

「単純なワンツーでフリーな選手がDFラインまで入ってくることは基本的にはありえないと思いますし、それも1回、2回じゃない。相手選手がPA内にフリーで走ってくるシーンが前半だけで4、5回あった気がします。それはあまり良い現象ではない」

 違和感を覚えるのはピッチ内だけのことではないと岩政は言う。「一人ひとりの意識が変わらないと。順位表を見ても、チームの雰囲気が変わった感じはしなかった。今日も『引き分けでまあまあかな』とか『悔しいけどしょうがないかな』っていうムードがあった。その方が僕は悔しい。それぞれが、それぞれの持ち場で自分のやる仕事をやっていると思う。でも、これはピッチ上だけでなく、普段の生活、普段の練習の態度、チームのムード、フロント、環境もすべてを含めての話。何か空気がそう感じることがある」と語った。

 日本代表対イラク代表戦から一夜明けた12日には、イラク代表を率いるジーコ監督もクラブハウスを訪ね、「鹿島は常にトップに名を連ねるチーム。目指すものをしっかり持って頑張れ」とチームを激励した。この日、鹿島はその声に応えることはできなかったが、ジーコ氏、サポーターの厳しくも温かい想いを受け取った選手も、いる。

「今日の試合、救いはサポーターがブーイングをしてくれたこと。最後まで(鹿島は)ゴールをあきらめずに戦った。最後はいくつか良いシーンがあったけど、それでクラブが満足したら終わりなので、勝てなかったことで満足しなかったサポーターがブーイングしてくれたことには感謝していますし、応えて、奮起しないといけない」と、岩政は言葉に力を込めた。

(取材・文 河合拓)

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