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プロ初ゴールも町田MF幸野に笑顔なし「怖い選手になれなかった」

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[9.30 J2第36節 町田 1-3 大分 町田]

 口を突くのは、反省の弁ばかりだった。プロ初ゴールを記録したFC町田ゼルビアのMF幸野志有人は、「負けたんで。意味のないものまではいかないですけど、そういうものになってしまったかなと。それ以外は、何もできなかったんで」と、自分を責めた。

 この日の町田は、ポゼッションで大分を上回っていた。しかし、オズワルド・アルディレス監督が「悪い試合をしてしまった。ポゼッションは、相手のゴールに向かってこそ、初めてポゼッションだ」と、不満を口にしたように、チームが機能したとは言い難かった。実際に90分を通じてのシュート数は4本で、相手の15本を大きく下回った。J1昇格を目指す大分トリニータに、上手く守られていたと言い換えてもいいだろう。

 だが、その中で幸野の動きは目を引いた。ボールの出し入れはもちろん、豊富な運動量でパスコースをつくり続ける。最終ラインからボールを引き出したかと思えば、最前線に顔を出し、フィニッシュに絡もうとした。それでも、幸野は「相手にとって、怖い選手になることができなかった」と唇を噛む。「(パスを)受けても、失いはしませんでしたけど、前に行って効果的に裏に出したりとか、縦に付けるボールが少なかったと思うし、仕掛ける位置も低かった。受ける位置も低かったので、怖い選手にはなれなかった」。

 彼自身よりも、チームの動きが重かったことを象徴するのが、前半10分のプレーだ。自陣でパスを受けた幸野は、前線へドリブルを仕掛けて行く。相手のプレスをかわしながら、周囲のサポートを待ったが、パスコースは見つけられない。最終的に敵陣で選択した横パスは相手にカットされ、逆に速攻を受けることになった。それでも、周囲のフォローが少ない状況であれば、フォローをしやすくするプレーを、しなければいけなかった、と幸野は言う。「まずは自分だと思っているので。味方うんぬんよりは、自分の動き方やボールの持ち方で、味方が分かりやすいプレーをしなければいけないと思います」。

 前半32分のゴールも、チームを引っ張っていくという決意が生んだものだろう。「シュートを打てていなかったので。チームに勢い付ける意味でも、打っていこうと思っていた」と振り返る。DF津田和樹のパスがカットされ、こぼれたところを右足のアウトサイドで鮮やかに蹴り込んだ。「サイドに押し込んだときに、マイナスのスペースが空いていたので、そこに出してもらえれば、仕掛けたり、シュート打てたりはできると思いました。コースがあそこしかなかったので、アウトにかけたら上手くいった感じです」と振り返ったが、「その後、もう1点とか、もう2点とか取れなかったのが…。それくらいできる選手にならないといけないし、チームが負けたことが一番悔しいです」と、再び反省した。

 大分は昨シーズン、期限付き移籍で所属していたチームだ。古巣からゴールを挙げた幸野は、最後まで笑顔を見せなかった。「自分の感情より、チームが残留を争っている中だったので、あまり古巣だからと意識しないようにやりました。でも、負けてやっぱりすごく悔しい。それでも今はもう下を向いている暇はないので、次に向けてしっかり準備したい」。チームのことを何よりも考える19歳が、笑顔を見せるとき。それは町田が目標であるJ2残留を達成した時に、違いない。

(取材・文 河合拓)

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