beacon

FP仁部屋「4年後に向けた競争は、もう始まっている」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 FP仁部屋和弘(バサジィ大分)の能力の高さに、疑いの余地はない。ミゲル・ロドリゴ監督も「日本で最高の選手」と、大きな期待を寄せていた。しかし、フットサルW杯に出場する14人の最終リストの中に、彼の名前はなかった。19日に行われたメンバー発表の前夜、仁部屋は宿舎で選考から漏れたことを、指揮官から知らされていた。

 ミゲル監督にとっても、苦渋の決断だっただろう。「日本でもトップの選手なのに、まだその力を3分の2くらいしか出せていない。力を出せているときもあるが、出せていないこともある。波がある」と、仁部屋に伝えたという。実際に、W杯の予選を兼ねていたAFCフットサル選手権(アジア選手権)でも、FP稲葉洸太郎やFP小曽戸允哉ら、同タイプのアラの選手が活躍し、FP逸見勝利ラファエルが大会最優秀選手に輝く大ブレークを見せた中で、仁部屋は最後までコンディションを整えることができずに、能力を出し切れなかった。

 W杯では、アジア選手権の借りを返す。そう意気込んでいたが、再びコンディション調整に失敗してしまい、Fリーグでも、日本代表合宿でも、思うようなパフォーマンスを見せることはできなかった。その結果が、今回の落選につながったことを自身も痛感している。「コンディションが悪かったのでね…。個人的に精神的な部分かなと思いました。疲れるのが早すぎるかな、と。今回のように遠征が続くと、もう合宿に入る前に疲れ切っていたので。もっと人として大きくなる。ピッチ外でいかに成長していくかだと思います」。

 指揮官は、仁部屋に「4年後のW杯で中心として出る選手だから。新チームになったら、引っ張っていく存在なんだ」とも、声を掛けたという。「ピッチ内では、誰にも負けない自信がすごくあります」と言う仁部屋も、4年後に向けて気持ちを切り替えた。ミゲル監督から、合宿を離れるか、27日のウクライナ戦までチームに帯同するかと問われたが、仁部屋はチームに残ることを選んだ。

「(4年後に向けて)いかに精神力を鍛えるか。それはもう始まっていますからね。逆に言えば、(ピッチ外での精神力を)上げることができれば、ピッチ内では自信を持っているので、そこだけです」

 どこか飄々と話すが、悔しさは行動で示していく。明日のブラジル戦、出場機会があったらどんなプレーを見せたいか? そう聞くと仁部屋は「出ないんじゃないですかね?」と苦笑した後に「試合に出してもらったら、楽しむだけです」と続けた。失うもののない24歳は、一足早く4年後を見据えて走り始めている。

(取材・文 河合拓)

TOP