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あふれる情熱で大分を4年ぶりJ1へ導いた田坂監督「サッカーは最後まであきらめなくていいスポーツ」

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[11.23 J1昇格プレーオフ決勝 大分1-0千葉 国立]

 リーグ6位から来季J1切符をつかんだ大分トリニータの田坂和昭監督は「(大分は)客観的に見ても非常に内容が乏しかった。これでJ1で戦えるのかという試合だった」と、千葉に圧倒された事実を素直に認めつつ、けれども胸を張って言った。

「0-0で最後まで行ってロスタイムで決まる試合、劣勢でもセットプレー1本で決まる試合というのがある。近年はポゼッション率が高い方が勝つという傾向だが、J2は少し違う。サッカーは最後まであきらめなくていいスポーツ。必ず最後までチャンスはある。その気持ちが、大分がここまで来られた要因だと思う」

 あふれる情熱で大分をよみがえらせた。06年にS級ライセンスを取得してから清水で4年間コーチを務め、昨季から大分で指揮を執ることになったが、最初に感じたのは「選手が試合前から逃げている」ということだった。田坂監督就任の前年は、財政危機による選手流出などもあり、J2で15位という散々な成績に終わっていた。

「大分には他チームで試合に出られず、クビになったり、レンタルだったり、トライアウトで来た選手が多かったのだが、1年目は試合前に足が痛いと言い出したり、小さな子どもみたいに、試合前に突然おなかが痛いと言い出す選手もいるほどだった」

 彼らを変えたのは戦う姿勢を植え付ける指揮官の情熱的なコミュニケーション。就任1年目はシーズンを通じてプレーできた選手が少なく、12位にとどまったが、チームは徐々に戦える集団へと変貌を遂げていった。

 こうして迎えた2年目。チームは着実に力をつけ、様々な局面で苦しみながらもプレーオフ出場権を手にした。プレーオフでは2試合とも「勝たなければダメ」というレギュレーションの中で全力を尽くし、勝利を手にした。チームに決勝点が入ったのは、このまま引き分けなら千葉が昇格するというムードが漂い始めていた後半41分。最後まであきらめるなと言い続けてきたことが、形となって現れた瞬間だった。

「プレーオフは選手、指導者、J2にとって大きな大会であると感じさせてもらえた。ただ、J2で6位のチームがJ1に入るのはかなりの試練だと思う。もっとトレーニングをしないと」。41歳の熱い口調は最後まで途切れなかった。

(取材・文 矢内由美子)

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