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ふがいない前哨戦 強気のザック

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[5.30 キリンチャレンジ杯 日本0-2ブルガリア 豊田ス]

 皮肉な結果と言えるかもしれない。3-4-3でスタートした前半の45分間はシュート3本に終わり、無得点。攻撃的なオプションであるはずの3-4-3を試したのはこの日が5試合目で、計253分間プレーしているが、得点はわずかに1しかない。一方で、失点はこの日の前半3分に無回転FKで喫したのが初めてだった。

 アルベルト・ザッケローニ監督は「3バックにしても4バックにしても、今日は守備のところでいいところが見えたのかなと思う」と評価し、MF長谷部誠も「守備は悪くなかった」と指摘した。とはいえ、守備強化のためのオプションとして3-4-3に取り組んでいるわけではない。事実、DF栗原勇蔵は「守備的ではなく、攻撃的な3バック。点を取りに行くとき、リードされていて追いつきたいときに使うという話は監督もしている」と明かす。

 3トップの距離感や数的有利であるはずのサイド攻撃の有効性、さらにはボランチの押し上げによる前線のサポートなど、攻撃の課題は山積しているが、攻撃面においても3バックの重要性を指摘するのが栗原だ。これまで11年6月1日のキリン杯・ペルー戦(0-0)と11年11月15日のW杯アジア3次予選・北朝鮮戦(0-1)の2試合で3バックを経験している栗原だが、過去の2試合はいずれも3バックの右。この日は初めて中央を守り、右にDF吉田麻也、左にDF今野泰幸が入った。

「監督は、自分が入ったポジションだけがCBで、(吉田)麻也と今ちゃん(今野)のやったポジションはSBという言い方をする。3人のCBではなく、CBが一人という感覚でやらないといけない。SBと言われているポジションの選手がもっと攻撃に絡まないと、攻撃的な3バックとして機能しない」

 栗原がそう証言するように、今野は何度か左サイドをオーバーラップし、攻撃参加の姿勢を見せていた。「3-4-3のときはそうやって崩していこうというのはみんなで話していたし、練習でもやっていたので、チャレンジしているつもりだった」。そう振り返る今野だが、「ただ、前の要求が高すぎて……。『もっと前に来い』と」と苦笑いしながら、不慣れな役割に戸惑いも隠せなかった。

 それでも「ポジショニングのところはチャレンジしたつもりなので、体力的にきつかったけど、慣れていけばいけると思う。攻撃面では結構いい形をつくれたと思う」と手応えもあった。新たな挑戦だからこそ、時間はかかる。逆に言えば、栗原が「後半の4-2-3-1はいつもやっているからスムーズだし、例えばパッと顔を上げたときに味方がどこにいるかも感覚的に分かる。そうなるにはやっていかないと」と話すポイントなどは時間が解決する問題でもあるだろう。

「今日はよくなかったかもしれないけど、継続的にやらないといけないと思う。そこは挑戦だし、オプションは増えた方がいい。どんどん吸収して、使い分けていければ」。そう前向きに語る栗原だが、「オーストラリア戦で(W杯出場を)決めて、そのあとのイラク戦とかで、そういうチャレンジができれば」と話すとおり、現時点の完成度で3-4-3を6月4日のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦(埼玉)で採用することは考えづらい。

 試合を重ねるごとに3-4-3の課題が明確になってきていることは確かだが、その課題がオーストラリア戦につながるものなのか分からない。従来の4-2-3-1に戻した後半も最後までゴールを奪うことはできず、コンディションが未知数なMF本田圭佑を欠いた場合の対処法に明確な答えを出すことはできなかった。「この選手たちはやるときにはやるし、見せるときには本領を発揮してくれるので、まったく心配していない」。就任後初の国際Aマッチ2連敗を喫しても強気な姿勢を崩さないザッケローニ監督。中4日で迎える大一番へ、今は気持ちを切り替えるしかない。

(取材・文 西山紘平)

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