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脅威のスピードをクラブで、そして14年W杯で!宮市「来る(きたる)時にチャンスを掴めるようにやっていく」

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 苦しんだシーズンは14年W杯への糧となる。中京大中京高(愛知)からイングランドの名門・アーセナルと契約(10年12月)し、その後フェイエノールト(オランダ)、ボルトン(イングランド)で欧州にインパクトを残してきたFW宮市亮。日本サッカーの未来を担うスピードスターは着実に進化を遂げてきているが、さらなるブレイクを期待されてウィガン(イングランド)に期限付き移籍した昨シーズンは、右足首の怪我から復帰した試合で再び右足首を負傷するアクシデントなどによってリーグ戦わずか4試合の出場にとどまった。

「いろいろなことをしたかったですし、いろいろなことを望んでいた。ボルトンでプレミアリーグというものを経験させてもらって、プレミアリーグがどういうものか肌で感じさせてもらった。そしてウィガンで臨むシーズンで何か結果を残せるんじゃないかと。結果をどうしても残したかった」という昨シーズン。スペイン人のロベルト・マルティネス監督の率いるウィガンの攻撃的なスタイル、そして自身の起用法も宮市は自分に合っていると感じていたという。ただし、怪我による長期離脱が「結果を求めた」自身をピッチから遠ざけた。

 欧州で2年間学んできたことをより表現したかった。それが叶わなかったという悔しさ、落胆の色は計り知れない。ただ、宮市はその思いを押し殺して口を開いた。「サッカー選手として悔しさやモヤモヤがあるんですけど、シーズンを終えてそういうことを考えてもしょうがないですし、来年いかに、自分がどう頑張るかなので、しっかりとそこに照準を置いて今、頑張っています」。リハビリの続く日々も「手術も人生初めてで、それもロンドンでといろいろな経験ができました。海外でなかなか手術もできないですし、違った経験ができた。そこからいい経過で来ていると思うし、来年へ向けていい準備ができていると思います」と笑顔で語り、捲土重来を誓った。

 外から見ることの多かったシーズン。それは自身の今後へのヒントとなっている。「試合を外から見ることが多くて、ボクは結構ドリブルするタイプだと思うんですけど、自分が相手と対峙すると、もう1コ向こうに人がいる1対2のような形だった。でも、外から試合を見ていると、ディフェンスラインとMFの間で受けて前を向くと、DFとだけ対峙してシュートが撃てたり、ドリブルも行けたりしていた。それを見て、自分に足りないのはこういうところなんだなと思った。ボランチを1コ飛ばした縦パスをDFとMFの間で受けて前を向いて仕掛けていくと、DFとしては怖いと思うんですよね。そういうプレーを香川選手は近くにいて見ていましたけれど、上手いなと思いましたし、ボクに身についてくれば、得点もアシストも伸びてくるんじゃないかと思いました」

 結果。今回のインタビュー中に宮市が繰り返し発していたことばだ。クラブで、日本代表で評価を勝ち取るためにもそれは必要。ただ、宮市はボルトン時代のチェルシー戦で圧巻のスピードからDF2人を振りきってPAへ侵入したプレーなど、ゴールを奪わなくても観客を総立ちにすることができる。宮市自身、勝負の来シーズンは結果を残すことはもちろん、観客、テレビの視聴者の印象に残るようなプレーも意識している。「代表に入っていくためにもそうですし、プロとしてやっていく以上、結果というものは必要。同時にドリブルで観客を沸かせるということもボクは大事にしているところなんです。お客さんを喜ばすということはプロとして当たり前のことだし、そういうことは大事だと思う。でも選手として上に行くときに結果というものはとても大事。ドリブルで抜いていくのって派手じゃないですか。そのいい意味での派手さを大事にしつつ、結果というものを求めて行きたい。お客さんを喜ばせたいですし、自分の良さというものを出してお客さんにも喜んでもらえるし、選手としても上に行くという、この2つはしっかりとやらないといけないと思っている」。7月に行われるアーセナルのジャパン・ツアー参加、そして結果を残すことが当面の目標だ。「正直複雑な思いもあるんですけどね。アーセナルの選手として1シーズン戦っていないですし。そういう思いはあるんですけど、ボクは生き残る立場ですし、出たからにはしっかり結果を残してアーセナルでのポジションを獲得したい」と誓った。

 宮市の最大の武器は「ボクから速さを取ったら何も残らない」と言い切るスピード。それをサポートしているのがNIKEの高速スパイク「マーキュリアルヴェイパー」だ。「ボクはスパイクをキュウキュウで履くよりも余らせた方がいい。ボールタッチの感覚がボクはそっちの方がいいんですけど、そういうときでも全然ブレないし、いいスパイクだと思います。(欧州の粘土質の重いピッチでも)助けてもらっている」という一足によって欧州のDFをぶっちぎってゴールを陥れる。そして14年W杯ブラジル大会出場を決めた日本代表入りへもう一度、一からチャレンジする。「(W杯は)日本中、世界中が盛り上がる大会。それに出られるということは凄い光栄だと思いますし、それに出るためにはまず自分のチームで活躍しなければならないと思う。しっかりいい準備してまた代表に選ばれるように頑張りたい」。まだ20歳の宮市だが、4年後とは考えていない。「少しでもチャンスがあれば、そこにかけるというのが選手の義務。狙っていきたいですね。(ゲキサカに)少しでも取り上げられるように、まずはしっかりと試合に出て、皆さんにいいニュースを届けたいと思いますし、怪我をしてしまったらチャンスを掴みたくても掴めないと思うので、しっかり怪我を治して、シーズン通して怪我をせずに試合に出れるようにやっていきたい。そんなに焦ることはないですし、しっかりとチャンスを待って、準備をして、来る(きたる)時にチャンスを掴めるようにやっていきます」

(取材・文 吉田太郎)
※8日掲載予定記事には日本の中高生選手へ向けたメッセージも!
  

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