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日本vsイタリア 試合前日のザッケローニ監督会見要旨

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 日本代表が18日、試合会場のペルナンブコ・アリーナで公式練習を行い、19日のイタリア戦に向けて最終調整した。練習前には記者会見が行われ、アルベルト・ザッケローニ監督が出席した。

以下、ザッケローニ監督会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「馴染みのある顔がたくさん見られる。明日の試合は、我々が前に進む道のりの一歩だと思うが、すべてのストーリーではない。監督(のキャリア)を始めたころ、いろいろなシナリオを想定したが、これは考えていなかった。まさか自分がイタリアと対戦するチームの監督となり、しかも、それが親善試合ではなく、大切な結果を生む大会での試合になるとは想定していなかった。私が言いたいのは、普通の試合ではないということ。

 私は、私のチームがさらに成長するために力を貸そうとしている。今のところ、うまくやっている。コンフェデレーションズ杯への出場権はアジア杯に優勝することで獲得した。W杯予選でも、いい成績を残している。W杯まで残り1年の期間で、最強のチームばかりとは対戦できないが、世界の最強のチームと日本の力の差を埋めようと思っている。私が監督になる前と比べると、日本の力は向上している。

 明日の試合も、国際的な経験を積むという意味で貴重な機会になる。欧州のチャンピオンになり損ねた2位のチームと対戦する。素晴らしい選手をそろえており、中盤にはスペインと同じぐらい優秀なMFをそろえている。チェコとの親善試合のときには万全な状態ではなかったかもしれないが、コンフェデでは万全な体調で第1戦を戦っている。我々はオーストラリアとのW杯アジア最終予選があり、その前日に帰国した選手もいた。その中でも最善を尽くした。イタリアのプランデッリ監督は私の親友であり、尊敬する監督でもある。彼は代表チームに素晴らしい環境をつくっている。技術力を高め、よいバランスを提供している」

―ピルロとバロテッリがメキシコ戦で点を決めたが、特別な対策をしてブロックすることを考えているか?
「イタリアは素晴らしい選手をそろえており、彼らだけではなく、他にも優れた選手がいる。もちろん、2人を結ぶ縦のラインはイタリアにとって重要なものだと思っている。スペースを埋めないといけない。バロテッリがボールが受けにくいようにすれば、ピルロは他の選手を探そうとするだろう。そういうやり方で試合を進められればと思っている」

―対イタリア戦ということで特別に考えていることは?
「ブラジルとの開幕戦でディフェンスに特徴を付けた。明日は明日で違う試合になる。違う戦術でプレーしないといけない。異なる解決策を考えて選手をピッチに送り出したい」

―イタリアにいたころと、日本に来てからで変わったことはあるか?
「ミラン以外のクラブでは、シーズンのスタートからチームを率いることがなかった。日本代表は、ある意味ではシーズンの最初から担当している。監督になってすぐにアジア杯があり、その前にはアルゼンチン、韓国との親善試合もあった。それからカタールでのアジア杯があった。イタリアとは文化は違うし、状況も違う。チームの雰囲気も違う。クラブの監督と代表の監督とでは違う。

 日本は、南米のサッカーにインスピレーションを受けているようだ。体つきが南米に似ているからではないか。南米のサッカーを追求しているようだった。一方で、素晴らしい選手も出てきている。責任感があり、勤勉であり、一生懸命にプレーする。一緒に生活し、お互いに協力して、ピッチでも連係してプレーする。

 どの監督も『私が監督になってからチームはよくなった』と言うかもしれないが、私はそうではない。日本の選手が素晴らしかった。私は彼らの特長を見い出し、各選手の特長を最大限に引き出すようにしているだけだ。強いチームとも対戦できるようになってきた。ブラジルとの試合は例外だったが、強いチームに対し、モチベーションを持ってプレーしている。私は日本代表の監督になれたことをうれしく思っている」

―開幕戦の結果を見ると、明日は勝たないといけないプレッシャーもあるのでは?
「明日の試合を考えるうえで、私はピッチに送るべき選手を考える。明日の試合で見られるのが、今まで見てきたチームなのか、それともブラジル戦で控えめだった選手なのか。明日の試合、いつもの選手たちであれば、私はアクセルを踏む。試合に入って、時間が経過するにつれて選手がまた控えめになるようなら、イニシアチブを取るようにハッパをかけるかもしれない。時には、強いチームが最善の状況ではないこともある。そういうときはチャンスをつかまないといけない。もちろん、紙の上で見ればイタリアの方が強いだろう」

―明日の試合に負ければグループリーグ敗退が決まるが、バランスを崩してでも勝ちに行くのか?
「難しい試合の前にやることは、まず対戦相手の強みと弱みを分析するということ。しかし、今回の相手は、なかなか弱点が見つからない。弱点は少なく、良い点ばかりがある。だが、ほんのわずかなところ、問題がありそうな些細な点に的を置いて、そこを突いていく。そういう形で試合に臨む。イタリアがこれまでの試合でどのようにプレーしてきたかは見ているし、選手にも話をしている。ピッチ上ではバランスを保つべきだが、私は選手から勇気を見せてもらわないといけない。力を最大限に出す勇気を出してほしい。普段の我々は、控えめで、守備的な形でプレーすることはない。そうなれば相手に崩される。私のチームが普段あるべき姿を見せ、選手がいつものパーソナリティーを出すことを望んでいる」

―日本では観衆からプレッシャーを受けているか? ミランのときはベルルスコーニが会長だったが?
「ミランでもそうだったが、イタリアでは明らかにプレッシャーにさらされていた。しかし、日本では私は日本語を読めないので、新聞記事も読めない。だからマスコミからのプレッシャーは受けていない。日本のメディアは忍耐強く私に付き合ってくれている。私も親切に応じてきているつもりだ。W杯まではあと1年あるので、こうした関係が続くかどうかは分からないが、今は良い状況にあるし、素晴らしい環境で仕事ができている。選手もサポーターもそうだ。スタジアムはいつも満席で、サポーターからはかなりの支持を得ている。情熱を持ったサポーターばかりで、彼らに応えようと選手もよくやっている。我々はアウェーよりもホームの方が良い成績を残している。

 前回、ベルルスコーニと会ったのはミランの20周年記念のときで、ずいぶん前のことだ。その後、別のイベントにも誘われたが、すでに日本にいたので、出席することはできなかった」

―母国のチームと対戦するのはどういう気持ちか?
「私が明日のイタリア戦にどんな気持ちで臨むか、口で言うことはできない。試合前には対戦相手の特長を見るし、私の代表の個性も見る。私は日本代表の個性を変えるつもりはない。彼らのプレーをしてほしいからだ。もちろん、対戦相手の強みに関連した形で出る個性というのもある」

―明日の試合前にはイタリア国歌を斉唱するのか? それとも日本国歌を斉唱するのか? 来年のW杯にはイタリア人の監督が3人出場する可能性もあるが?
「私が記憶している限り、かつては重要なイタリア人監督が外国で指揮を執るということはなかった。セリエが最も大事なリーグで、外国人の監督がイタリアに来て監督をやっていた。優秀な選手もイタリアにいた。しかし、状況は変わり、最善の選手をイタリアに連れてくることはできなくなり、今では監督も選手も世界を移動するようになった。

 国歌についてだが、私は日本代表を指揮することを任されている。イタリアの国歌を歌うべきではないだろう。私は日本に敬意を表すだけだ。明日は敵ではなく、対戦相手とプレーする」

―イタリアとの対戦が決まってからプランデッリ監督と話をする機会はあったか?
「プランデッリと前回、会ったのはコンフェデレーションズ杯の抽選会のとき。そのときにサッカーのことしか話さなかった。しかし、それからは一度も会っていない」

(取材・文 西山紘平)

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