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「サッカーで一番大事なことはハッピーになること」名将・ベンゲル監督がアーセナル3選手とNIKE FC特別指導

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 世界的名将が日本の中高生たちにサッカーにおいて一番大切なこと、上手くなるために必要なことを伝えた。25日、育成年代のフットボールプレーヤーをサポートするナイキジャパンは埼玉県内で、「上手くなりたい」「目標を達成したい」などと願う中高生選手たちが所属チームのトレーニングプラスアルファの経験を得ることができるプログラム「NIKE FC」のFIELD PROGRAMMEを行った。

 NIKE FCのコーチ陣の指導でスタートしたトレーニングは途中からイングランドの名門・アーセナルのアーセン・ベンゲル監督が合流し、選手たちの動きをチェック。また、わずかな時間ではあったが、イングランド代表MFジャック・ウィルシャー、イングランド代表MFアレックス・オクスレード・チェンバレン、そして日本のスピードスター、FW宮市亮のアーセナル3選手もトレーニングに加わり、NIKE FCイレブンは名将の視線と、トッププレーヤーとのパス交換、かけられる声の中、非常に高いモチベーションでメニューに取り組んでいた。

 6対6(5対5)+フリーマンのトレーニングでは鋭い動き出しでフリーマン役を務めたウィルシャーやチェンバレンからパスを引き出し、またフリーマンを囮に使った速攻でゴールヘ運ぶシーンも。一方、シュート練習では宮市のポストプレーに走りこんだ選手たちが次々とシュートを打ち込んでいく。DF北村大輔(藤沢西)が「夢のような時間でした。(アーセナルの選手たちは)一個一個のトラップとか正確だし、(6対6で)ウィルシャー選手は手を上げて『こっち』ということを要求していた。(練習中から)もっと主張していくことが大事なんだなと思いました」と振り返っていたが、NIKE FCのメンバーは短い時間でトッププレーヤーのいい部分を盗み、また好パスをハイタッチで讃え合うなど「貴重な時間」を満喫。宮市も「みんな向上心が高くて、『この前に部活をやってからきた』という選手もいましたし、こんな暑い中で高校生って凄いなと思いました。ボクにもあんな時期があったなということも思い出しました」とその意欲の高さを驚いていた。

 この日、NIKE FCはベンゲル監督の前で6対6のほか、基礎技術のトレーニング、そしてパス&ゴーを実施。「テクニックは非常に大事」というベンゲル監督はパス&ゴーで「パスした後の走りが遅い」「パスではボールを弾ませないこと。こだわっていこう」などアドバイスし、MF南雲丈一郎(東大和高)やMF小林友祐(FCトリプレッタ)、MF末永浩隆(大東文化大一高)らのプレーに「良くなったよ」「ナイスパス」など頷きながら声をかけていた。NIKE FCの選手たちにとってはテレビを通してしか見たことのないような憧れの選手や指揮官たちとのトレーニング。休憩時間までベンゲル監督にアピールを続けて名将に「素晴らしいです」と言わせたMF鈴木暢(富士市立高)は「普段、高校のコーチに『もっと積極的になれ』と言われていて、変えたいと思ってNIKE FCに来た。きょうはインパクトを残せるようにということを意識して、ベンゲル監督にも注目してもらえるように、自分から話しかけていました。アーセナルとか、自分にはデカイ夢があるので、今日来たことで一歩近づければいいと思った」と意気込み新たにしていた。

 中高生へ向けたトレーニングの中でベンゲル監督がまず強調したのは技術面。トレーニング後に行われた質疑応答においてNIKE FCのDF楠本卓海(大成高)が「世界トップレベルで活躍するために必要な要素は?」と質問すると、「まずは技術」と答え、「その持っている技術をしっかりと、賢く使うこと。あとはもちろん、モチベーションがないといいプレーヤーにはなれない。どこのポジションでも、どこからボールが来てもしっかりとコントロールできるような技術は持っておいてほしい。だからこそ、いつでも自分がボールをコントロールして、支配して、扱えるようにすることが大切。ひとりでも、ふたりでも練習できると思うし、外に出ていろいろな練習を考えて、技術を上げることもできると思う」と説明した。数日前にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のトップチームコーチの指導もサポートしたNIKE FCの櫛山匠コーチは「(ベンゲル監督と同じように)マンUのコーチも言っていましたけれど、上手くなるためには練習するしかない。自分のいいところを伸ばして、悪いところを改善するために練習をひたすら繰り返すこと」と上手くなるために練習を重ねることの重要性を口にしていた。

 ただ、ベンゲルが求めたのは技術や負けない気持ち、練習に取り組む姿勢だけではない。質疑応答を終えた直後、ベンゲル監督は「最後に……、サッカーで一番大事なことはハッピーになることです」と選手たちに言葉をかけた。この言葉は各選手の胸に響いたようだ。この日、選手たちはピッチ上でモチベーション高くプレーしていたが、声は非常に少なかった。MF高橋郁海(羽村高)や南雲ら常連の選手は声で盛り上げようとしていたが、世界的名将を前にしている緊張からか普段に比べると重い雰囲気。それを感じ取ったか、ベンゲル監督は「みんな熱意をもってプレーしていたので良かったと思います」と振り返った一方で最後に「ハッピーに」というメッセージを残してピッチを後にした。

 南雲は「きょう学んだことはサッカーを楽しんでやること。(所属する)東大和で活かしてもっと上にいきたい。普段からNIKE FCのコーチ陣も言っているんですけど『サッカーを楽しむ』。サッカーを楽しむことを忘れないで、上手くなっていきたい」と宣言。NIKE FCは今月7日のトレーニングで日本代表DF長友佑都(インテル)と接し、この日はベンゲル監督の言葉から刺激を受けた。貪欲に成長を目指す選手たちはこの日の経験を「楽しみながら」また次につなげること。北村は「ボクらが主張して、サッカーを楽しくやることでNIKEの方がいろいろなものを提供してくれている。ボクらももっと応えて、もっともっとNIKE FCはこんなに凄いんだよということを伝えていきたいです。ボクはプロを目指しているので、プロになって『NIKE FCで育ちました』と言える選手になりたいと思っています」。強豪校のトップ選手がいるわけではない。ただ貪欲な選手たちはこの日、夢へ向けた意識をまたひとつ高めた。

(取材・文 吉田太郎)

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