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[MOM811]広島ユースMF野口翼(3年)_ 念願のセンターで躍動する主将

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.2 日本クラブユース選手権準決勝 広島ユース3-2清水ユース 三ツ沢陸上]

 存在が際立っていた。準決勝の清水ユース戦、この1試合を通じてサンフレッチェ広島ユースのキャプテンであるMF野口翼(3年)が見せたパフォーマンスは、圧巻だった。前半、清水のプレッシングを受けてチームが落ち着かない場面でも、一人たんたんとプレスをかわしてボールを味方につなぐ。

 さらに前線にいるフリーの味方も見逃さず、また相手の最終ラインの裏にスペースができれば、躊躇なくそこへ精度の高いボールを入れた。前半35分にはショートCKから先制点をアシストし、後半41分にはGKと最終ラインの間に落としたロングボールが決勝点につながった。

 チャンスメークをするだけではない。ときには自身がボールの受け手となるために前線へ走り、守備でも相手のパスコースを予測し、カットする。試合から消える時間は、ほとんどなかった。広島ユースの望月一頼監督も、試合後は手放しで称賛した。「ゲームを理解できていると思います。今日、また彼は一つギアを上げて、階段をのぼったんじゃないでしょうか。後ろでやるだけじゃなく、守備でも、攻撃でも、前に出て行ってやっていましたからね」と、目を細めた。

 広島ユースでの1年目、2年目で、野口は主にサイドのポジションを務めていたという。この試合で初めて彼を見た者にとっては、ちょっと信じがたい話だ。だが、その経験が、現在のプレーに生きていると野口は言う。

「昨年、一昨年も、ボランチをやりたかったのですが、他のポジションをやることで、自分がボランチに入るときに『こうした時は、こうした方が良い』とか学ぶことができたので、そういった部分はプラスになったと思います」

 サイドで起用される中でも、常に自分がピッチの中央でプレーすることを考えてきたと、明かす。「自分が3年生になったときは、真ん中に戻ってやることだけを考えていました。昨年だったらキャプテンのマコくん(平田惇=現・東京学芸大)のプレーを見ながら、自分だったらこうするとか思ってやっていました」。

 チームメイトの中には、すでに来季のトップ昇格を決めている選手もいるが、まだ野口の進路は決まっていない。「トップチームに上がるのは目標ですが、そこは自分の活躍次第ですからね。自分は高いところを目指して頑張るだけです。広島のサッカーは好きですし、自分の持ち味にも合うと思っています」。

 この日、ゴールへの道筋を示した司令塔は、3日の決勝を制し、9年ぶりのタイトル獲得に貢献することが、目標を実現する近道であることも理解する。2年間、待ち望んできたボランチで、水を得た魚のように躍動する背番号7は、3日の決勝戦でどんなプレーを見せるのか。


(取材・文 河合拓)▼関連リンク
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