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ウルグアイ戦メンバー発表、ザッケローニ監督会見要旨

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 日本サッカー協会は8日、ウルグアイ戦(14日、宮城ス)に臨む日本代表メンバーを発表した。

以下、ザッケローニ監督の会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「まず仙台で試合が開催されることについて話をしたいが、協会から話を聞いたとき、すぐに快諾した。選手の思いも同じだと思うが、この地域で試合をすることは大切で、代表チームが被災地に行くことで何かを与えられればと思う。まだ本来の生活に戻れていない人もいると聞くし、街も本来の姿を取り戻していないと聞いている。本来の姿に戻るのは簡単なことではないと思うが、少しでも何かの力になれればと個人的には思っている。震災から数か月後に個人的にも足を運んだが、目に見えて震災の大きさを感じた。

 仙台の地で、サッカーの歴史に名を馳せているウルグアイという強いチームとマッチメイクしてくれたことに感謝している。ウルグアイのサッカー文化に対しては個人的にも敬意を払っている。南米特有のサッカースタイルにプラスしてヨーロッパの志向も持っている。ウルグアイのオスカル・タバレス監督にはイタリアで監督のキャリアもあり、そのときに知り合ったが、彼のこともリスペクトしている。チームとしての準備期間は短く、限られているが、短い中でできるだけチームが結束し、輝きのあるチームを準備したい。

 今回招集した選手たちに関して、モチベーションのところで心配する必要はないと思う。代表常連組から新しいメンバーまで名を連ねている。代表チームをこれまで率いてきて、いくつかのステージを設けて、その都度、目標を掲げてきた。W杯予選を突破することが一番最初の目標であり、その目標を達成したグループでコンフェデレーションズ杯まで戦おうと決めていた。結果を求められる戦いがずっと続いてきたが、W杯までの1年間は、本大会に向けてどれだけ準備できるかという新しいステージに入る。今後の親善試合も、結果を求めないというわけではないが、最大の目的はW杯本大会に向けてしっかり準備を進めること。(ブラジルW杯に)エネルギーに満ちた力強い日本代表を持っていくことが一番の目的。相手に的を絞られない、相手に読まれない意外性のあるチームをつくっていきたい。

 今後もその目的のために、招集メンバーをいじっていくかもしれないし、Jで活躍している選手、いいパフォーマンスを見せている選手は代表でも試していきたい。もちろん、ベテランの選手や常連の選手のことも信頼しているし、リスペクトしているが、彼らの力は計算できるので、何かトライするときには新しい選手を手元で見るために、今回のような選手を呼んでいる。この場で言いたいのは、今回の招集メンバーを見て、自分にはもう完全に可能性がないのかと思う選手も出てくるかもしれないが、そんなことはないということ。全員に代表に入る可能性があるということを伝えたい。これからW杯本番まではチームのバランスをいかに高め、引き出しをいかに増やし、バリエーションをいかに増やしていくかという部分を重点的に鍛えていきたい」

―欧州組13人にレターを送り、酒井宏樹、細貝、乾が入っていない。一方、東アジア杯でデビューした6人が入ったが、彼らを実戦で使っていく考えは?
「招集可能性のレターは早めに出さないといけない。その時点では得られなかった情報もある。クラブチームでの状況を踏まえて招集を見送ったメンバーもいる。選手によっては試合の1日前にしか入れないことも考えると、長旅を避ける価値はあるのかなと思って招集を見送った。同時に、新しい選手を試すこともできるようになる。今回は、そういった状況の選手に無駄足を踏ませたくない思いもあり、国内組の選手がどれだけできるかを見たいと思って招集メンバーを決めた」。

 東アジア杯に選ばれたメンバーはよくやってくれたが、全員を呼べるわけではない。今回は招集されなくても、次回以降、招集される可能性はある。ただ、メンバーに入ったからといって(ウルグアイ戦に)出場するわけではない。1日、2日、手元に置いて、代表チームの常連、チームのやり方に慣れているメンバーと合わせてどういうことができるかを見て、可能性があれば試合にも出していきたい。当然、チームの成長を考えたうえで今回のメンバー構成になった。今回、選ばれなかったメンバーもこれであきらめることなく、引き続きがんばってほしいし、選ばれなかったからといって、東アジア杯で悪いパフォーマンスだったわけではない。私自身は代表に来ている全員に満足しているし、東アジア杯に来たメンバーもよくやってくれた。すぐにではないかもしれないが、全員がいずれ代表に選ばれるだけの力を持っていると思う。そういう意味では、日本の未来は明るいということでうれしい出来事ではないかと思う」

―1トップでは常連の前田、ハーフナーが招集されず、東アジア杯で1トップを務めた柿谷、豊田が招集されたが?
「今回呼んだ2人は若い選手で、ゴール数だけでなく、所属するチームへの貢献度で輝きを放っている2人。異なったタイプの特長を持っており、代表チームでも異なったバリエーションを出してくれる2人かなと思っている。当然、そういった中で判断したいし、この2人はできるだけゲームでも使っていきたいと思っている。前田とハーフナーに関してだが、今回呼ばなかったからといって脱落というわけではなく、ハーフナーはケガ明けの状況もある。前田はコンディションが上がっていなかった時期もあったが、数日前に見たときは徐々に上がってきている印象を受けたので、もう少しそっとしておいてあげようかなというのが招集に至らなかった理由。東アジア杯から選ばれた選手はどこかのポジションに固まっているわけでなく、DF、MF、FWからバランスよくメンバーに入っている」

―豊田は東アジア杯でゴールはなかったが、どこを評価して招集したのか?
「ゴールだけが選考基準ではない。ゴールをたくさんしているから代表に入る、していないから入らないのではなく、特長を見極めて選考している。(東アジア杯で)10日間、彼を見てきて、彼の特長も見極めたうえで、得点こそなかったが、チームメイトにスペースをつくる動き、チームメイトに得点の可能性を与える動き、そして、それをしながら自分も得点する可能性を出したということを評価した。そこのポジション(1トップ)で他の選手のコンディションが上がっていないこともあって招集に至った」

―柿谷、豊田のほか、東アジア杯から森重、青山、山口、工藤を引き続き招集したのは?
「ここからW杯本番に向けて新しいステージに入ったと言ったが、彼らに共通して言えるのは国内でよくやっている選手たちということで、計算できるメンバーではなく、新しいメンバーを見たいと思ったときに、彼らの名前が挙がった。共通して言えるのは、東アジア杯の前からいいパフォーマンスを見せていたし、東アジア杯でもいい仕事をしてくれた。東アジア杯後のJリーグもスタッフが視察しているが、いいレポートが上がってきている。例えば青山に関しては、(東アジア杯前にも)一度だけ代表の短期合宿(11年8月に札幌で行った代表候補合宿)に呼んだことがあった。代表チームに来たのはそれだけだったが、3年間、彼のことを見てきたし、本人のケガもあって呼べないタイミングもあった。彼のことは個人的に気に入っている。3年前から彼がいいプレイヤーであることは分かっている」

―東アジア杯では柿谷を1トップで起用したが、彼が本田や香川、岡崎らとプレーすることでどういう期待をしている?
「彼のことは若くて才能のある選手だと評価している。そのうえで、ゆっくりでもいいから成長を見せてほしい、(フルメンバーの代表チームに)馴染んでほしいと思っている。若い選手がすぐに活躍できない状況や、まだ準備ができていない状況で(代表に)入れてしまって、その可能性をつぶすよりも、時に遅すぎるぐらいにしっかり準備ができてから入れることも大切だ。柿谷は最近のJリーグを見て、少しずつだが、成長している印象を受けたので今回の代表にも選んだ。C大阪の方針もすごくいいと思っていて、ゆっくりゆっくり成長させている。いい道を進んでいると思っている。その道を継続して進んでほしいし、ここであまりプレッシャーをかけたくないという思いが個人的にはある。しっかりと、ゆっくりと成長して、完成度を増してほしい。完成形に入ってくれば、1列目でも2列目でも、攻撃のパートはどこでもこなせる能力を持っていると思う。しかし、それは完成形に入った状態という前提での話。今はゆっくりその成長を見守ってあげてほしい」

―「W杯までに引き出しを増やしていきたい」と話したが、まず力を入れていきたいところは?
「3年前に就任したときから、プレーのバリエーションは徐々に積み上げて増やしていきたいという思いがあったが、このチームを成長させていくうえで3つ挙げるとすれば、1つ目は個の成長を促すこと。2つ目は技術面での連係を高めること。3つ目はチームとしてやりたいプレーの精度を高めることがある」

―今回は練習期間が2日間しかないが、東アジア杯組の選手も先発で起用する考えはあるのか?
「新しい選手に関しては段階を踏んで使っていきたい。一番の目的は練習の中で常連組とどう絡んでいくのかを見ること。ただ、そこはまだ決めていない。他の選手がどんなコンディションで合流して来るのか。疲れて合流して来るのか、いいコンディションで来るのか、今の時点では想定できない。選手たちが手元に集まった時点で、自分の中で判断する基準は持っているので、それを踏まえて決めていきたい。しかし、大切なのは常連組と3日間過ごすこと。現在の代表チームは固い結束で結ばれているので、そこに入ってきてほしい。チームの空気を吸ってほしい、味わってほしいと思う。たくさんの試合を経験してきたが、このチームの素晴らしいところは、集まるたびにそれがデビュー戦かのようにフレッシュな姿勢で臨んでくれるところだ」

―失点が続いている守備面におけるウルグアイ戦のテーマは?
「まず、日本代表は自分たちがゴールを狙うチームと言える。世界中の監督がたくさんゴールを決め、できるだけ少ない失点で終えるシステムを探しているが、そういうものはないのではないかと思う。たくさんゴールを狙うチームは当然、リスクが出てくる。それを踏まえたうえでも、たとえ失点しても相手より1点でも多く得点を奪って勝つという姿勢がこのチームの根底にある。それが現日本代表のスタイルと言っていいと思う。だからといって守備の面をおろそかにするという意味ではなく、今回の合宿でも守備では、個のところ、グループのところでミスを減らせるようにトレーニングしていきたい。『相手が素晴らしくて失点した』という以外では失点しない守備ラインをつくっていきたい。ただ、私がよく覚えているのは、監督に就任した直後は得点力不足の質問をよくされたということです(笑)」

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(取材・文 西山紘平)

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