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[MOM241]東京国際大MF上船利徳(3年)_「全国大会での忘れ物を掴むために」

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.8 総理大臣杯1回戦 東京国際大3-2常葉大浜松キャンパス J-GREEN堺]

「やっぱり全国はそんなに簡単に勝たせてくれないなと思った」。
開口一番、勝利の立役者は自身の3年前を思い返し、喜びに浸った。

 東京国際大MF上船利徳(3年)は、神奈川のヴェルディSS調布ジュニアユース出身ながらも、高校では「全国大会に出たかった」と鹿児島の名門・神村学園高への進学を選択。2010年度の高校選手権で晴れて全国の舞台を踏んだが、初戦で前橋育英高に1-4と大敗を喫し、自身も怪我の影響で途中出場という屈辱を味わっていた。

 彼が選んだ次の舞台は当時・埼玉1部だった東京国際大。「まさか大学で全国に行けるとは思わなかった」という状況で、しかも初年度は試合にも絡めず。「こんな所で何をやってるんだろ」と再び苦汁をなめた。2年生となった昨年も出場機会を掴んでいたが、怪我もあり、定位置確保とまでは行かず。新チームになってからも、清水亮平(4年=修徳高)、佐伯拓磨(2年=麻布大淵野辺高)に先発の座を譲り、「ずっと悔しい思いをしていた」という。

 浮上のきっかけを掴んだのは先ほど行われた天皇杯の埼玉予選。準決勝の大宮ユース戦で途中出場ながらも2アシストと大暴れ。スタメンに抜擢された決勝の尚美学園大戦でも攻撃を牽引し、埼玉県代表の獲得に大きく貢献するなど好調のまま今大会を迎えていた。

 そして、この日は「頑張ろうという意識が強すぎて、空回りする。行ってはいけない所で行って、簡単に抜かれる場面があったり。ハマるといいんですけどね。今日はハマった試合」と前田秀樹監督が評したように開始直後から好プレーを披露。先制点を許したものの、「相手の裏を突くという攻撃陣の良さを出せたかなと思う」と自己評価したように、ボランチの位置から正確なキックで縦に速い東京国際大の攻撃を牽引。左サイドのMF佐藤領(3年=修徳高)の突破を生み出すだけでなく、自らも素早く攻撃に転じ、サポートの動きで厚みを加えるなど存在感を発揮していた。

 16分に右CKから先取点をお膳立てすると、後半21分にも同じくCKから同点弾を演出。37分にもDF鹿糠智正(4年=柏日体高)の決勝点の起点となり、東京国際大の全ゴールに絡む活躍を見せた。

「指定席はない。ちょっとでも悪かったら、代えていく。上船も、次はスタメンか分かりませんよ」と指揮官がイタズラな笑みを浮かべたように、270名以上の部員を抱える東京国際大は激しいスタメン争いを競争力に代え、成長を続けてきた。彼の2回戦でのスタメンはまだ流動的であり、この試合でも右太ももを負傷し、後半40分にベンチへ退いている。それでも、「大丈夫です。やりきります。絶対、負けたくないです」とスタメン死守を誓う。 

もう悔しい思いはしたくない――

 そんな思いが彼の原動力。次戦も攻撃のタクトを振るう彼の右足に期待が高まる。

(取材・文 森田将義)
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