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[SBS杯国際ユース大会]ボランチに位置取る“フィニッシャー”川辺がU-18代表救う劇的V弾

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[8.18 SBS杯第3節 U-18日本代表1-0静岡ユース エコパ]

 自分が決めるつもりだった。U-18日本代表は試合終了1分前の後半39分に決勝点。チームを優勝へ導くゴールを決めたのがボランチのMF川辺駿(広島ユース)だった。

 司令塔であり、中盤のバランサー。献身的な動きで相手にプレッシャーをかけ、マイボールになれば、中盤の底の位置で左右にボールを振り分けた。オーバーラップした右SB広瀬陸斗に何度も好パスを配球し、広島ユースでコンビを組むFW越智大和への縦パスも常に狙っていた。相手の3ボランチの前になかなか楔のパスを入れられずに苦しい展開だったが、「時間帯的に自分が前に行ってシュートを打とうと思っていた」と振り返る終盤、自ら前線へ駆け上がって試合を決めた。

 ハーフウェーライン付近でFW宮市剛がボールを受けた瞬間、勝負どころと見た川辺はもう自陣から前線へと走り出していた。トップスピードで右サイドを駆け上がると、FW北川柊斗からのスルーパスがPAへ入る。「走っている途中から来るというのは分かっていたので、どうしようとか考えずに思い切り打とうと考えていた」という川辺はコントロールから思い切り右足を振りぬく。飛び出してきたGKの左横を抜けたボールは豪快にゴールへと突き刺さった。

 今大会は3得点のFW金子翔太やMF関根貴大らアタッカー陣のパフォーマンスも目立つ大会だったが、ボランチの位置でサポートしていた川辺も試合を決める力を持つ。高校1年時の11年山口国体では広島県選抜の主軸として3位に貢献したが、チームの苦しい時間帯では「自分で決着をつけようと思った」と自陣から自らドリブルで仕掛けて相手をかわし、シュートを連発するなど自分自身で試合を決めに行き、言葉通りに決着をつけていた。同年の高円宮杯プレミアリーグWESTでは7ゴールで得点ランキング5位タイ。昨年は同大会で10得点を挙げている有能な“フィニッシャー”は、その得点力をU-18代表でも発揮した。

 このチームでは自分ががむしゃらに上がって仕掛けるつもりはない。「ちょっとレベルが高くなると、それだけだと奪われて失点となってしまうこともある。リスクを犯す場面と、犯さない場面を自分で判断できるようになった」と川辺。0-0が続く展開の中、どこかで「行く」チャンスを狙い続けていた。それが終了間際の局面でやってきて、この試合の主役となった。

 背番号7はこの決勝ゴールを今後への自信とする。だが、より積極的にフィニッシュシーンに絡んでいこうという考えは、やはりない。「いつもこう上手くはいかない。ある程度時間をつくりながら、『ここぞ』というところで自分が行って点を取れれば、また味方が点を取ってくれればいい」。より攻守両面でのクオリティを上げることを誓った川辺。アジア予選の「ここぞ」の時のために、もちろん、フィニュッシュワークにも磨きをかけてくる。

(取材・文 吉田太郎)

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