beacon

強豪校からも続々参加、「NIKE FC」がいよいよ関西でも活動開始!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」が18日、関西地区で初となるトレーニングプログラムを開催した。

 2010年10月に発足した「NIKE FC」はこれまで関東でトレーニングやセレクション、さらには強豪校との対外試合を行ってきたが、今回は初めての関西開催。名門、滝川二高(兵庫)や昨年度の全国高校選手権準優勝の京都橘高(京都)、今夏の全国高校総体ベスト16の近大附(大阪)などから計41人の中高生が参加し、大阪府堺市のJ-GREEN堺で約3時間に及ぶトレーニングを行った(参加選手一覧はこちら)。

 トレーニングを指導するのは関東と同じく、英国3つのプロチームでトップコーチを務めた経歴を持つリー・マンソンヘッドコーチ、メキシコの名門、クルス・アスルなどでプレーした元U-18メキシコ代表のジョージ栗山GKコーチら。練習前に参加者全員を集めたリー・マンソンヘッドコーチは「『NIKE FC』では、みんなに自信を持ってもらいたいと思っている。自信は、サッカー選手にとってなくてはならないもの。私がこれまでに得てきた情報、経験をみんなに伝えていきたい」と語りかけた。

「NIKE FC」がこれまでに関東で行ってきたプログラムでは、日本代表DF長友佑都(インテル)やアーセナルのアーセン・ベンゲル監督といった世界的なプレイヤー、指導者も参加し、直接、選手たちにアドバイスや指導を行ってきた。リー・マンソンヘッドコーチは「以前、『NIKE FC』に来てくれた長友は2つのメッセージを送ってくれた。それはサッカーを楽しむこと。そして、一生懸命やること。ハードワークとスマイルを忘れないでほしい」と、トレーニングを楽しみながら、ピッチ上で自分の持っている力を100%発揮してほしいと訴えた。

 その言葉どおり、約3時間のトレーニングはハードなメニューが続いた。ウォーミングアップを終えた選手たちは5人1組に分かれ、4対1のボール回しに参加。4人でパスを回し、守備をするのは一人。「1分間、100%でプレッシャーをかけ続けろ」「パスを出した選手は止まらずに動いて、次のパスコースをつくれ」。1分経てば、休憩を挟まず、次の選手がDF役になる。選手に休むことを許さず、4人がボールを回す中、守備役の選手は一人で懸命に追い回した。

 いきなりのハードメニューを終えた選手たちを集めたリー・マンソンヘッドコーチは「1分間で一度もボールを取られないというグループはなかったと思う。4対1という一見、絶対にボールを取れないようなメニューでも、一生懸命プレッシャーをかけ続ければ、どこかでミスが出る」と指摘。「クリスティアーノ・ロナウドだろうがサッカー初心者だろうが、ハードワークをしないといけない。ハードワークができれば、上に行くチャンスが生まれる。ここで覚えてほしかったのは、ハードワークの重要性だった」と、あらためて練習の意図を説明した。

 その後も独特な練習メニューが続いた。10m四方のグリッドを4か所並べ、各グリッド内で2対2を行い、そこに3人のフリーマンが加わる。フリーマンはサポートが必要なグリッドに参加し、3対2の数的優位をつくってパスを受けるのだが、一度パスを出したら同じグリッド内には残らず、次にサポートが必要と思われるグリッドに移る。2対2を行っている選手はどこにフリーマンがいるか、フリーマンはどのグリッドでサポートが必要かを瞬時に判断。視野の広さと判断の速さ、さらにはコミュニケーションが高度に求められるトレーニングに選手は苦戦した。

「フリーマンは黙ってグリッドに入るな」
「コミュニケーションを取ってパスを受けろ」
「パスを受けたら次のスペースがどこにあるかを見つけろ」
「目の前のスペースだけを見るな」
「逆サイド、後ろにもフリーマンがいるぞ」

 リー・マンソンヘッドコーチは何度も練習を止めてゲキを飛ばした。選手たちも徐々に順応。少しずつフリーマンの動きは滑らかになり、各グリッドできれいにパスが回るシーンも見られた。

 最後はハーフコートでゲーム形式のトレーニングを行ったが、4-3-3に配置された選手たちにはここでも“ルール”が課された。フィールドを「DFゾーン」「MFゾーン」「FWゾーン」の3つに分け、各ゾーンの選手は別のゾーンには入れず、それぞれのゾーンをドリブルで行き来することもできない。ただし、パスが「DFゾーン」から「MFゾーン」に、あるいは「MFゾーン」から「FWゾーン」に入ると、一人だけ前のゾーンに上がることが可能。パスでボールを前に運び、前に入ったらサポートが加わる。ここでも数的優位をつくり、フリーな選手を見つけてパスをつなぐことを意識づけた。

 約3時間に及ぶ全メニューを終えたリー・マンソンヘッドコーチは「プレッシャーの中でいかに状況を読めるか。ファーストタッチでボールを止めることばかりに意識がいくと、周りが見えていないために次の選択肢がドリブルしかなくなる。常に状況を把握し、フリーマンを見つけて数的優位をつくること。常に動きながらサポートをすること。ハードワークを忘れずに今後も続けてほしい」と呼びかけた。そのうえで、これまでに何度もトレーニングや対外試合を行ってきた関東の選手たちと比較し、「関東の選手たちよりも気持ちの面が強いと感じた」と評価。「その気持ちを大事にして、勝者になろう」と語り、関西で初のトレーニングプログラムを締めくくった。

 近大附のDF宮本秀明(3年)は「ハードワークしました」と笑顔で練習を振り返り、「4バックのSBがサイドいっぱいに広がって幅を使えという指示は新鮮で楽しかった」とコメント。滝川二のDF枝村洸希(1年)も「コーチに言われたことだけをやるのではなく、自分で考えながら取り組んだ。頭を使う練習が多かった」と、疲労感の中にも充実感を漂わせた。

 昨年度の全国高校選手権で5得点を挙げて大会得点王に輝いたFW仙頭啓矢(京都橘→東洋大)の実弟でもある京都橘のMF仙頭啓生(2年)は「楽しかった」と笑顔を見せ、「チームとは練習の内容も違った。パスを出したあとのサポート、パスの質にこだわっていきたい」と力説。同じく京都橘のDF日高憧也(2年)も「高校でもパス回しを大事にしているけど、ハードワークの面など細かい指示を受けた」と、普段とは異なる練習に刺激を受けたようだった。

「NIKE FC」では今後も関東と関西の“両輪”で継続的に活動を続けていく。関西でも11月に2回目のトレーニングプログラムを実施する予定だ。「チームに帰って、自分が感じたことを伝えていきたい」(宮本)、「チームに帰っても、頭を使うことを意識して、この経験を生かしていきたい」(枝村)と、さらなるレベルアップを誓う選手たち。次回の「NIKE FC」のトレーニングにも「是非、参加したい」と声をそろえ、充実した表情でそれぞれの所属チームに戻っていった。

▼NIKE FC参加者一覧
DF濱田大輝(FC堺/中3)
MF/FW辻生起也(近大附高3年)
FW松本直也(近大附高3年)
DF宮本秀明(近大附高3年)
FW谷山健(東大阪大柏原高3年)
MF山田大地(東大阪大柏原高1年)
GK角田将哉(東大阪大柏原高1年)
MF杉山月哉(東大阪大柏原高2年)
MF狭間航(東大阪大柏原高2年)
FW廣井隼人(東大阪大柏原高2年)
MF白藤潮(東大阪大柏原高1年)
MF則包晃哉(京都橘高2年)
MF/DF日高憧也(京都橘高2年)
MF大野拳弥(京都橘高2年)
FW久田和歩(京都橘高2年)
FW/MF仙頭啓生(京都橘高2年)
FW馬籠一輝(立命館宇治高2年)
MF徳地広大(立命館宇治高2年)
MF河原直希(立命館宇治高2年)
DF大木峻平(立命館宇治高2年)
MF河合健人(東大寺学園高1年)
MF山岸凌(東大寺学園高1年)
FW関錫載(東大寺学園中3年)
DF船城龍哉(四天王寺羽曳丘高3年)
MF西尾勇哉(四天王寺羽曳丘高3年)
FW細川勇貴(四天王寺羽曳丘高2年)
MF西川凌(四天王寺羽曳丘高1年)
MF前村貫太(刀根山高2年)
DF川中椋太(刀根山高2年)
DF小松祥太(刀根山高2年)
DF鵜川剛(刀根山高2年)
GK谷村真吾(帝塚山高2年)
FW加藤誠(帝塚山高2年)
DF小幡和輝(帝塚山高2年)
FW横浪直弥(滝川二高1年)
DF枝村洸希(滝川二高1年)
MF田中聖也(滝川二高1年)
DF井上裕也(小野高2年)
FW長田裕輔(小野高2年)
MF玉木笙汰(小野高2年)
GK橋本隼吾(滝川高2年)

(取材・文 西山紘平)

TOP