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ベルギー遠征メンバー発表、ザッケローニ監督会見要旨

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 日本サッカー協会は7日、ベルギー遠征に臨む日本代表メンバー23人を発表し、FW大迫勇也(鹿島)、MF高橋秀人(F東京)が代表復帰を果たした。日本は16日にベルギーのゲンクでFIFAランキング8位のオランダ代表と、19日に同国ブリュッセルで同5位のベルギー代表と対戦する。

以下、ザッケローニ監督の会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「10月の2試合については、なかなか有効利用できなかったという思いが強い。一般的には親善試合と言われるが、個人的にはテストマッチという言葉のほうがふさわしいと思っている。さまざまな対戦相手に対し、自分たちのプレーが通用するのか、どこに課題が出るのかを知るためにテストマッチがある。10月の2試合では、攻撃のパートで少し不満が残ってしまった。守備はまあまあよくできたと個人的には思っている。それほどピンチをつくられることはなかったが、攻撃でインテンシティー、プレーの精度が足りなかったと思っている。

 原(博実技術)委員長とも相談し、国際経験を積むために(10月と11月の)2回の欧州遠征を企画した。今回の2試合に関しては、相手に不足はない。オランダはFIFAランキング8位で、ベルギーは5位。素晴らしい相手だ。W杯欧州予選でもトップ3に入るようなパフォーマンスを残した2チームだと思っている。(欧州予選では)ドイツだけがオランダより勝ち点を稼ぐ結果となったが(実際には同じ勝ち点28)、得失点差を見ると、オランダの+29よりも優れたチームはない。そういう相手にどこまでできるか、個人的に楽しみに思っている。オランダはよくつないでくるチームで、ベルギーはフィジカル能力を最大限に発揮してサッカーをしてくるチームだと思う。この2試合に関しても、勇気を持った団結力のあるチームをぶつけたいと思う。

 W杯まで残された時間も少なくなってきた。この2試合が終わると、(本大会直前まで)3月の1試合しか残っていない。テストマッチをしっかり戦い、どういう課題が出て、その課題にどう取り組んでいくか。こうしたテストマッチでは自分たちのプレーを出すことが大事だし、できる限り主導権を握った戦いをするべきだと思う。その戦いをしたうえで、どこが通用し、どこが通用しないか、どこが課題なのかが初めて分かる。そこで結果が出なかったとしても、自信を失わずに、冷静にテストしていきたい。理想のバランスを追求するためには、自分たちの持っているものをすべて出してトライしないといけない。10月の2試合が終わる前は攻撃よりも守備がよくない状況だったが、10月が終わって、そのバランスが逆になったので、そこを追求したい。求めているバランスというのは、守備をしっかりしながら攻撃に移る、そして攻撃をしっかりしながら守備のリスクマネジメントを取ることを意味している」

―10月の遠征では選手同士で話し合って攻撃のバリエーションを増やそうとしていたようだが、そういうチーム状況をどう思っているか? 新戦力を含めた選手選考という意味では今回で終わりか?
「当然、今の時代には相手から丸裸に研究されているということも想定しないといけない。バリエーションを持って、相手に的を絞らせないようにしないといけない。どこで数的優位をつくり、どこでスピードアップしていくか。そういうことにトライしていかないといけない。個人的にもバリエーションは常に求めているし、手元にいる選手の能力に合ったバリエーション、形というを常に探している。ただ、そこになくてはならないのは、相手のDFラインを広げ、スペースをつくって相手のゴールに迫っていくということ。当然、選手自身が話し合い、プレーを合わせていくのはポジティブなことだし、そうした意見を監督に持って来るのもありだが、最終的に選手を選ぶのは監督であり、相手を研究し、どんな選手を選び、どういう戦いをするか、その方向性を決めるのも監督の仕事だと思う。

 2つ目の質問については、W杯に行くグループはまだ決めていない。大事なのは、年が明けてからのJリーグやそれぞれのリーグ戦での戦いで、心身ともにトップフォームの選手がW杯に行くべきだと思っている。この3年間、たくさんの選手を選んできたが、それをやめることはない。おそらく来年3月の試合でも新戦力をリストに入れることになるだろう。欧州のリーグ戦とJリーグを並行してモニタリングしているし、情報収集は常にしている。これまで代表に入っていない選手が今後入ってくる可能性もあるし、興味を持っている人材は実際にいる。メンバーを決めるときにすごく悩むことがある。あるパートでは代表候補の選手が多いパートもある。思い返すと、就任したころに比べて、チョイスの幅が広がってきたという思いがある。これはポジティブなサインだと思うし、W杯に行きたい人材がたくさんいるということだと思う」

―今回も結果より内容を重視するということだが、選手の中には結果を求めたいという選手もいるが?
「結果は自信を得るために、自信を増すために大事だが、内容がいいときにも自信は増すものだと思うし、自分たちのやり方が通用したときにも自信は高まる。内容が悪くても結果が出ることもあるが、長い目で見ると、内容の良いチームというのが、継続して結果を残していけるチームだと思う。今回のシリーズでも内容を重視していきたいし、クオリティーとインテンシティーを90分間出し続けるチームをつくることができれば、長い目で見たとき、結果的に結果が付いてくるチームになると思う。

 サッカーやスポーツの世界だけでなく、他の分野でも同じだと思うが、一つの仕事が終わったときにはそれについて分析をする。その分析の仕方には2つあり、一つは結果論で、結果をもとに分析する。もう一つは原因論。自分たちが何をしようとしたか、しようとしたことに対して結果が付いてきたか、それともこなかったか。私は後者をしようと思っている。自分たちが何をしようとして、それが通用したかどうかを分析したい。当然、勝っているときはすべてがうまくいっているように見え、結果が出ないときにはすべてが悪いように見える。一人の監督として、そこに目を向けているようではダメで、結果論に左右されず、何が起きているのか、何をしようとして、それができたのか。その原因を探っていくのが監督だと思う。10月の試合を振り返ると、守備はよくできていたと思うし、攻撃ではインテンシティーとスピード感が足りなかったと分析している。ベラルーシ戦で唯一、ピンチになったのは失点のシーンで、25mの距離からシュートを打たれた。それだけだったと思う」

―東アジア杯以降、柿谷にゴールが生まれていないが?
「他のFWにも言えることだが、このチームに馴染む必要があるし、ボランチを含めたすべてのチームメイトとより多くプレーすることで馴染んでいくものだと思う。代表チームの宿命だが、日常的に一緒にトレーニングできるわけではないので、周りと合わせていくには、それ相応の時間が必要になる。柿谷には、ある意味で日本人選手的ではないところがある。日本のサッカー文化は、ポゼッションをして、ボールをつないで、コンビネーションを出して相手ゴールに迫るというもので、これはJリーグでもよく見られる。しかし、彼の場合は一発で裏に抜けるプレーが好きだし、裏に抜けるタイミングも持っている。その中でチームメイトが彼の特長を理解していき、それを生かしていく時間も必要だと思う。もちろん柿谷は裏に抜けるだけでなく、下りてきてコンビネーションを出す技術も持っているが、裏に抜ける動きが一番得意だというのは周囲も理解しないといけない」

―大迫、高橋が復帰したが?
「理由としてはローテーションをしたということ。9月、10月といいパフォーマンスを見せていたので招集した。前のシリーズ(東欧遠征)では他の選手を見たかったので、単純にローテーションしたに過ぎない。2人(大迫、高橋)とも所属チームでいいパフォーマンスを見せているし、前に代表チームに招集したときにもパフォーマンスを見せていたので、再び手元で見てみようと思った。大まかなグループも決まっていない状況なので、今後もローテーションや新しい選手が入ってくる可能性があるので、最終的には5月を待っていただくしかない。だれのことも忘れていないし、スタッフ全員ですべての選手を見に行こうとしている。代表チームの門戸はすべての選手に開いていると思ってほしい」

―選手同士で話している内容と監督のコンセプトに違いがあるのでは? これだけ結果が出ないとクラブチームでは他の監督を探しているかもしれないが、結果はあくまでW杯で出すという考えか?
「方向性が違うとは思っていない。10月の試合に関しては、自分たちの狙ったサッカーができなかった。守備のところはよくできていたし、攻撃ではリズム、インテンシティーを出せなかったことがすべて。選手が話し合って、新しいものを監督に持ってくる、意見を言ってくるというのはいいことだと思うし、もっとやってほしいと思っている。そのうえで監督としては、それに対して解決策を導き出すのが仕事だし、整理するのが監督の仕事。選手はそれぞれが違うチームでやっているので、それぞれの成功体験も違う。それを代表チームに当てはめようとしても無理で、チームメイトが変われば、チームの構成も変わるので、一つの成功体験を代表チームに持ってきてやるのは難しい。監督としてはそういう声を聞きながら整理していくことが仕事だと思っている。

 この時点では結果より内容が大切という気持ちが強い。これまでに結果が求められた大会は4つあった。アジア杯、W杯アジア予選、コンフェデレーションズ杯、東アジア杯。その4つのうち3つを獲得している。唯一、優勝できなかったのがコンフェデレーションズ杯だった。W杯に向けて最高の準備をするというのが最大の目的で、ここ数試合に勝つことが目標ではない」

―オランダ、ベルギーという強敵相手に戦い方を変える考えは?
「我々は常に自分たちのアイデンティティーを持って大切にしないといけない。日本人の持っている特長を最大限に生かすサッカーをしないといけない。相手の特徴に合わせて毎試合微調整は加えるが、基本的な戦い、ベースにあるのは、自分たちの能力を最大限に出すということ。日本の特長である技術力、スピードを持って激しく相手ゴールに迫るサッカーがベースにないといけない」

―10月の2試合は同じ先発メンバー、同じシステムで戦った。今回の2試合については?
「10月の試合では、2つの異なる相手に対し、ベースを崩さずにどこまで自分たちの戦いができるかを考えた。今回はベースを大切にしながらも、新しい選手を試したいという考えがある。今回の2試合では新しい選手を積極的に使っていこうと思っている」

(取材・文 西山紘平)

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