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[選手権予選]自分たちができることを貫き今季3戦全敗の“天敵”に雪辱!!帝京三が7年ぶり全国へ!:山梨

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[11.9 全国高校選手権山梨県予選決勝 帝京三2-1日本航空 山梨中銀]

 第92回全国高校サッカー選手権山梨県予選決勝が9日、山梨中銀スタジアムで行われ、7年ぶりの全国大会出場を狙う帝京三と2連覇をかけた日本航空が激突。帝京三が2-1で逆転勝ちし、7年ぶり9回目の全国大会出場を決めた。

 今シーズン、日本航空との対戦成績は3戦全敗。だが4度目に訪れたチャンスで帝京三が“天敵”に雪辱し、全国への扉を開けた。

 試合の大半の時間帯でボールを支配していたのは日本航空だった。攻撃時は両CBがサイドに張り、時にはGK吉田雅貴(2年)がセンターサークル近くまで上がってポゼッションに参加するスタイル。彼らと中央のMF杉尾武紀、155cmの逸材MF山口和樹主将(ともに3年)が攻撃を組み立てると、ゆったりとした攻撃からスイッチ役の山口が受け手の足元へスピードのある縦パスを入れるなど、突如変化を加えてシュートチャンスをつくり出す。

 14分にはインターセプトから一気に持ち上がったMF荒木翔(3年)が左足シュート。19分には右クロスのこぼれ球を山口がダイレクトでゴールエリアへ入れ、ニアサイドのFW栗山将太(3年)が頭で合わせた。一方、GKを含む11人で回す相手に対してなかなかプレスをハメきらなかった帝京三だが、右の工藤航平と左の中村哲至(ともに3年)の両SBの推進力や大型レフティー、FW豊川直人(3年)の高さを活かして反撃。23分には右サイドで網を破った工藤のラストパスで抜けだしたMF佐野達也(2年)が決定的な右足シュートを放った。

 ただ、先にスコアを動かしたのは日本航空だった。前半26分、右中間後方から荒木がPAへ入れたFKを杉尾が競り勝つと、飛び込んだ左SB山室厳己(2年)が右足で先制ゴールを押し込んだ。リードを奪った日本航空は無理をすることなく、後方を中心とした安定したパスワーク。試合をコントロールしながら2点目を奪う機会を狙っていく。ただ、帝京三は1本のセットプレーでスコアを振り出しへ戻した。38分、右サイド後方からのFKを豊川が頭で合わせると、小さくなったクリアに「ボールがこぼれてくると信じて走りこんだ」と飛び込んできた左MF土屋守(2年)が左足一閃。これがゴール左隅を破って同点ゴールとなった。

 距離感のいい守りと豊川、佐野中心に前線から追い回す帝京三の前になかなか中央を破ることのできなかった日本航空。だが後半は早いテンポのパスワークから山口や荒木が仕掛ける回数が増え、6分にはスルーパスで右サイドを抜けだした荒木の折り返しをコントロールした栗山が右足で叩く。だが、決定的だったこの一撃はゴールマウスを直撃。その後も中央でDFを外す日本航空はシュートシーンをつくり出したが、帝京三の好守の前に決定的な崩しをすることはできなかった。 

 逆に動き出しよくオープンスペースを狙う豊川らがポイントとなり押し返した帝京三は、MF國分郁弥主将やMF須江守(ともに3年)がドリブルで局面を破り、決定機につなげていく。互いにシュートシーンをつくり合うオープンな展開となった終盤。38分、日本航空は鋭いターンでDFを振り切った栗山の右足シュートがゴール左ポストをかすめて外れていく。その直後、帝京三に決勝ゴールが生まれた。39分、帝京三はGK安田亘佑(3年)のキックから右中間で前を向いたFW鳥居岳(2年)が右前方の國分へパスを送ると、國分が右足シュートをゴール左隅へ流し込む。スタンドへ向けて走りだした國分を、興奮を抑えきれずにスタンドから飛び出した控え部員たちの赤い波が飲み込む。3連敗していた因縁の相手をついに逆転。須江は「チームを信じてやった結果が最後勝てたので良かった。航空には3回負けている。3回負けているので吹っ切ってやれと言われていたので、逆転した瞬間は泣きそうでしたね」と喜びを噛み締めた。

 昨年度は全国高校総体で16強進出。ボールを失わないことを前提にショートパスをつなぎ、大津や立正大淞南という全国屈指の強豪に真っ向勝負で戦った。帝京三のスタイルで全国にインパクトを残した。ただ同じスタイルを貫いてきた今年は総体予選、関東大会予選でいずれも準々決勝敗退を喫するなどなかなか結果がでなかった。特に選手権予選直前の9月の練習試合では大量失点の連続。技術ミスが失点につながった。危機感を募らせたチームは伝統のスタイルからの変更を選択する。相良和弘監督は言う。「相手を知ることも必要だけど、相手のことばかり知っていても自分たちのことを知らなかったら、サッカーにならない。自分たちが何ができて、何が得意なのかしっかりと把握して、何を選択するのかということだけは頭の中に入れろという話をしました。それが我慢ということになったんでしょうね。子どもたちの中では。スッと受け入れてくれた」。

 各選手にとってショートパスをつなぐスタイルは帝京三進学の理由にあげるほどの憧れでもあった。最初は納得しない選手もいたという。ただ豊川が「いろいろな紅白戦のビデオとか見て、自分たちができることをまずやったほうがいいと監督に言われて。つなげるチームではないので今年のチームは。それで決めました。最後、みんなで一致しようと決めたので、そこで団結したと思います。(9月以降は)練習も毎日毎日ディフェンスの練習で基礎からやってきました」と振り返るように、選手権で勝つために全員が団結して、守備を磨いた。

 当初はアプローチのタイミングやチャレンジ&カバーなどサッカーにおける原理原則の部分も欠けていた。ただ、基本となる部分から徹底し、また3年生が率先してトレーニングを積んできたことによって守り勝つチームになった。県大会1失点で頂点。國分は「勝つためにやったプレースタイル。今は自分たちに合っている。結果が出ず不甲斐ないというか、今までいい結果を出してきた先輩たちに対して失礼。悔しいという気持ちでいっぱいで、この大会は絶対に獲るという気持ちだった。選手権で全国出るためにここにきた。無駄にしないようにより上を目指して全員で戦いたい」。憧れを封印して自分たちのできることを貫いて掴んだ7年ぶりの全国切符。悔しい1年の中で考えて、乗り越えた帝京三イレブンが全国に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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