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[大学選手権]28年ぶり頂点、大阪体育大を成長させたコンタクトプレー

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[12.25 大学選手権決勝 国士舘大1-3大阪体育大 国立]

 先制点こそ奪われたが、このまま敗れ去る雰囲気は全くなかった。すると前半ラストプレーでMF山本大稀(4年=米子北高)が得点し同点に追いつくと、後半早々2分にはMF池上丈二(1年=青森山田高)のクロスを再び山本が今度は頭で合わせてあっさり逆転に成功。トドメは後半45分、FW澤上竜二(2年=飛龍高)からの横パスを受けた山本が左足でゴールに突き刺しハットトリックを達成。3-1で逆転勝利を飾った大阪体育大が28年ぶりの王座についた。

 08年、11年と夏に開催される全国大会、総理大臣杯を制している大阪体育大だが、所属する関西学生リーグでは思うような成績を残せていなかった。実際、08年は2部リーグを戦った中で総理大臣杯を優勝した。今季の優勝も実に24年ぶりのことだった。

 就任41年目の坂本康博総監督にとっても2度目のインカレ優勝となった。前回優勝時は大阪商業大と引き分けて同校優勝となっていたこともあり、単独では初優勝。「負傷者もなく決勝まで来れたのが勝因」と同監督は「先ほど胴上げもしてもらいましたが、よくこんなチームがここまでこれた」と教え子たちの快挙を喜んだ。

 監督が「こんなチーム」と評したのにも訳がある。有名私大が選手の勧誘に努める中で、体育大ということもあり、積極的に選手が集まってこない現状がある。現在集まっている選手も全国に散らばっている高校の教員となった監督の教え子たちが送り出した選手がほとんどで、近年、有力選手が多く集まるユース出身の選手はほとんどいない。

 “選手補強”で上手くいかない分は、戦略的に選手を伸ばすしかない。一気に全国の頂点まで駆け上がったチームはどんな練習をしているのか。監督は「企業秘密」としたが、選手がその一端を話してくれた。

 サッカーにおいてフィジカルコンタクトは最も重要な要素の一つだ。だが体格差がモロに出てしまうところで、大きな選手にはどうしても吹っ飛ばされてしまう。そこをどうするか。日本代表DF長友佑都らが重視したことで注目された体幹トレーニングを行う選手らも増えているが、大阪体育大は戦略的にコンタクトプレーを研究していた。

「体の弱い部分を研究で出されている方がいて」と明かしてくれたのはFW伊佐耕平(4年=神戸科学技術高)。「日頃の練習から対人プレーの練習が多いです。特にポゼッションの練習とかはしていません。1対1とか、4対4の練習ばかりをしています。最初はあまり信用してなかったんですが、日に日に結果がでるようになりました。練習冒頭の30分くらいをそのトレーニングに割いています。それをマジメに取り組んだことがいい結果に繋がったと思います」。

 MF國吉祐介(2年=四日市中央工高)も続ける。「ここを持たれるとバランスを崩されやすいとかを意識しています。一発目から行くとファウルになってしまうから、どのように取りにいくかというのを練習からやっています。まだ自分には難しいですが。小中高とやったことのない練習ですね」と明かした。

 今大会でも快進撃を続ける中で、大阪体育大の対人プレーの強さは目を引いた。結果的にも準決勝では王者専修大に競り勝ち、決勝では国士舘大を圧倒した。28年ぶりの優勝は「こんなチーム」が成し遂げた戦略勝ちでもあった。

(取材・文 児玉幸洋)

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