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[選手権]大敗から「やってやろう」と変わった守備意識、2試合連続完封の星稜がPK戦制して8強へ

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[1.3 全国高校選手権3回戦 星稜0-0(PK5-4)玉野光南 駒沢]

 第92回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、駒沢陸上競技場(東京)の第2試合では昨年度4強の星稜(石川)と初の8強進出を狙う玉野光南(岡山)が対戦。0-0で突入したPK戦を5-4で制した星稜が8強進出を決めた。星稜は5日の準々決勝で修徳(東京B)と戦う。

 80分間の戦いではPA付近に人数をかけて守る玉野光南のゴールをこじ開けることができなかった。ただPK戦で星稜は1人目のCB藤田峻作(3年)から4人目のFW仲谷将樹(3年)まですべて左隅へ強く速いボールを蹴り込んでいく。先攻の玉野光南は好守でチームを支えた3人目・CB野上浩平主将(3年)の右足シュートがポスト左へ外れてしまう。対して星稜は5人目の右SB森下洋平(3年)も右上隅へきっちりと沈めて勝負あり。PK練習ではGKにコースを伝えた上で2本決めるまで終了することができないという星稜が、その練習の成果を発揮して2年連続の8強進出を決めた。森下がシュートを決めると同時に走りだしたイレブンはピッチ上で輪をつくって「国立王手」を喜んだ。

 試合は序盤から星稜が攻めて玉野光南が守る構図。星稜はサイドでの連動した崩しからクロスへ持ち込む。9分には右ロングスローからFW森山泰希(2年)が左足シュートを放ち、17分にもカウンターからMF寺村介主将(3年)が左サイドを持ち上がり、MF前川優太(2年)のクロスからMF原田亘(2年)がヘディングシュート。だが序盤のチャンスを逃すと、その後は中央をしっかりと固める玉野光南の前にラストパスを通すことができない。両SBが非常に高い位置取りをしてプレッシャーをかける星稜にボールを握られていたものの、失点を回避することに集中した玉野光南は野上とCB久山隆一(3年)を中心に跳ね返すと、切り替えの速い攻守から、素早くスペースを狙う1トップのFW中井レアーズ(2年)へボールを預けようとする。前半15分に左SB塩田晃大(1年)の左CKから久山がヘディングシュートを放ち、後半19分にも右アーリークロスのこぼれ球をFW難波大輝(3年)が右足ダイレクトで叩いたように1チャンスをものにしようとした。

 この試合、終始ボールを握っていたのは星稜。後半も相手をほぼハーフコートに押し込んで攻め続けた。圧倒的にボールを支配したが、河崎護監督が「もうちょっとウチの動きに崩れるのかなと思っていたけど、そんなにサイドの突破も簡単に許してもらえなかった」と振り返ったように、スペースを消しながら1対1でもしっかりとした対応をしてくる玉野光南の前になかなか決定機をつくることができない。それでも11分、13分と寺村がDFを引きつけて左サイドのスペースを突く上田へスルーパス。同じような形からサイドを攻略するなどクロスまで持ち込んでいく。そして20分には仲谷のスルーパスを左中間で引き出した寺村が決定的な左足シュート。そして21分には左CKをニアサイドの森下が頭で流すように放ったヘディングシュートが左ポストを叩いた。
 
 中井を残してほぼ10人で赤い壁をつくった玉野光南の集中した守りからゴールを奪うことができなかった。それでも相手に1点も与えなかったことが星稜を8強へ導いた。河崎監督は「(勝因は)失点しなかったこと。PKになったけれど、ウチは前回の試合も(失点は)零点、今回も零点。得点をさせなかった。選手たちの集中力が高いよね」。藤田とCB寺田弓人(3年)の両CBが縦に蹴りこんでくる相手の攻撃を跳ね返したほか、俊足FWに長い距離を走らさせないようにスピードを上手く殺して決定機を作らせなかった。

 守備の柱を担う寺田はチームの守備意識が先月のプレミアリーグ参入戦(14日、16日)から変わったという。負傷の影響で寺田や寺村が不在だったプレミアリーグ参入戦では2試合で8失点。特に勝てば来季のプレミアリーグ参入が決まる2回戦では前半3分に先制しながらもその後、京都橘(京都)に5点を奪われて1-5で逆転負け。ただこの屈辱的な敗戦がチームを変えた。寺田は「京都橘にボコられて、そこからみんな守備に気合が入った。『やってやろう』というのが伝わりました」。そして今大会、「変わった」ところを見せる2試合連続完封でチームは国立へ前進した。

 過去2度進出した準決勝ではいずれも敗戦。今年の目標は準決勝、決勝も勝利して日本一を勝ち取ることだ。昨年も国立を経験している寺田が「自分は元々国立が憧れとかではなかったんですけど、昨年行けて、やってみて、雰囲気ありましたし、去年は負けましたし、今年は国立へ行って勝ちたい」と意気込むように、星稜は改修前「最後の国立」を歓喜の場所にする。

(取材・文 吉田太郎)
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