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[選手権]修徳のマフラー巻いた富山一・大塚監督、亡き友人とともに決勝へ

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[1.11 全国高校選手権準決勝 富山一2-2(PK5-3)四日市中央工 国立]

 富山一・大塚一朗監督の首元には、準々決勝で敗退した修徳(東京A)のタオルマフラーが巻かれていた。修徳・岩本慎二郎監督の弟で故・岩本三郎さんは、大塚監督の古河電工時代の同期生。大塚監督は日章学園との準々決勝前に北習志野(千葉)にある岩本監督の実家へ訪れ、三郎さんに線香をあげたという。大塚監督は「(岩本監督には)修徳と決勝に行けたらいいねと言っていたんですけど。修徳はPKで負けて、ウチが4-0で勝った。その時に岩本監督は『三郎は大塚さんのところへ行ってしまいました』と。それできょうボクは修徳のマフラーをして、三郎と一緒に勝てればいいと思った」と理由を明かす。そして会場を訪れた修徳・岩本監督も見つめる中で、PK戦で勝利。試合後には感謝の弁を口にしていた。

 岩本三郎さんは05年に交通事故で亡くなった。当時アルビレックス新潟シンガポールの監督を務めていた大塚監督は「なかなか線香をあげに行けないなと思っているうちに、(今大会の)監督会議かなにかで岩本監督に『選手権出たチームで三郎に線香あげない人は勝てないんだよね』とか言われまして(微笑)。仲良かったし、行こうと思いました。(三郎さんは)帝京の元キャプテンで、熊本の大津のコーチをやっていたりとか、凄く高校サッカーが好きで、(今も)その辺にいるんじゃないですかね」。もちろん、選手たちが自らの手で掴みとった決勝切符。ただ、劇的な勝利に指揮官は友人のサポートの力も感じていた。

 仲間が見せてくれた夢の実現まであと1勝だ。大塚監督は三郎さんに線香をあげた日の夜に夢を見たという。「ウチの選手たちが優勝旗とカップをロイアルボックスで掲げて、ボクが芝生の上から嬉しそうに眺めている。(その夢を)三郎が見せてくれたんじゃないかと思います」。その瞬間まであと1勝。国立の空から見守っている友人の下で、選手たちとともに初優勝を飾る。

(取材・文 吉田太郎)

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