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176日ぶりのゴールに安堵も、W杯を見据えるMF香川「自分のすべてをぶつける」

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[3.5 キリンチャレンジ杯 日本4-2ニュージーランド 国立]

 あのMF本田圭佑(ミラン)が、PKキッカーを譲った。前半7分、PA内でドリブルを仕掛けたMF香川真司(マンチェスター・U)が、相手DFと接触して倒れると、アラン・ミリナー主審はPKスポットを指し、日本にPKを与えた。W杯出場を決めたオーストラリア戦など、最近はPKのキッカーを本田が務めることが多かったが、この日は背番号10がキッカーに名乗り出た。

 その場面を、本田が振り返る。「真司がファウルを受けた瞬間、オレの方を見て『打たして』と訴えていたから。オレは、察したよ。オレも(点を)取りたかったけど、あのシーンに関しては、真司の方がオレより蹴りたい気持ちは勝っていたかもしれないですね」。

 香川本人は、この場面について「まぁ、自分で取ったヤツですし」と述べるにとどまったが、試合に入る際の心境について「ピッチで見せなきゃ、結果を残さなきゃいけないということだったので。途中から出ようが、最初から出ようが、ピッチの上でやるだけだった」と、自身にプレッシャーを掛けて試合に臨んでいたことを明かしている。

 昨夏、マンチェスター・ユナイテッドの一員として古巣のC大阪と親善試合を行った際、香川はチームメイトに促されてPKを蹴った。しかし、このときはPKを失敗。その後、流れの中から1点を決めると試合後には「あれ(PK)で決めても、うれしくなかった」と話していた。しかし、昨年9月10日のガーナ戦(3-1)から175日間にわたり、公式戦でゴールから遠ざかっていた香川は、この日、PKを決めると大きなガッツポーズを見せた。

「PKであれ、点を取れて良かったです。うれしかったです」と振り返り、「ゴールは、ゴールなんで。素直に喜ぼうと思いました」と、ガッツポーズについて話す表情は、安堵していた。

 このPKだけでなく、MF岡崎慎司の先制点をアシストし、岡崎の2点目となったチーム4点目の場面でも、攻撃の起点となった。日本が挙げた全4得点中3得点に絡んだことで、周囲の試合経験不足を危惧する声は減るかもしれない。だが、香川自身は「後半は少し、体力的に落ちていたのは課題」と、影響があったことを認めている。

 また、4-2というスコアでの勝利についても、「W杯を想定したら」という言葉を繰り返し、危機感を示す。「相手がW杯に出る国と想定したら、(ニュージーランド戦のように)簡単に(パスが)通る場面は少ないと思う。そのレベルの相手とやらないとわからない部分があるけど、俺の感覚的には難しいと感じる部分があった」と言い、こういう相手と試合をしたことで、取り戻せた感覚もあったのではないかという問いにも「どうですかね。もっと強い相手とやりたいですけどね」と、率直な思いを語っている。

 開幕まで100日を切ったW杯の前に、香川は所属するマンチェスター・Uでのポジション争いに再び挑む。最後の国立競技場での代表戦で、「もっと応援していただけるように、もっとピッチで結果を出していかないといけないと、あらためて今日感じた」と言う。そして、「このままマンチェスターに帰りますが、良い形で帰れると思いますし。W杯まであと3か月。(マンUの)チーム状況も、これからすべての試合に勝っていかないと厳しいと思っているので。それでも本当にあと3か月、W杯を含めて視野に入れて戦っていきたいし、自分のすべてをぶつけてシーズン終了まで頑張りたいと思います」と、強い決意を言葉にした。

(取材・文 河合拓)

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